今年は90シリーズの波状攻撃の陰に隠れた感があるが、実はXC60、グローバル販売台数ではボルボのエースなのだ。2008年の発売以来、世界では累計100万台も売れ、現在ボルボの販売台数の約30%を占める(日本では40シリーズが約4割。安いからね)。さらに言えばヨーロッパのプレミアムミッドサイズSUVでもトップセールスを誇る。
その“ベストセラー”SUVの2代目が発表されたのは今年のジュネーブショーのことだ。それがもう日本に来た。一昔前と比べると輸入車の時間差攻撃が素早くなった。
プラットフォームはV90クロスカントリーと同じだが、全長は250mm短い。全高は115mm高いが、ワゴンベースでSUV化をはかったV90とは違うのは当然だろう。とまあここまで見てきて全幅。これは1900mm。V90クロスカントリーよりも5mm少ないが実質的には同じだ。「それはないだろ!」と最初は思った。この辺りの見解は若干変わるが、それは後で──。
エンジン。別にV90クロスカントリーと比べなくてもいいんだけど、一応やってみよう。日本で販売されるV90クロスカントリーでは2種類。T5のガソリンターボ(187kW=254馬力)とT6のガソリンターボ+スーパーチャージャー(235kW=320馬力)である。ともに排気量は2.0ℓだ。
XC60には上記の二つのほかにディーゼルターボ(140kW=190馬力)とPHEV(233kW=318馬力+65kW=87ps)があり、ディーゼルはD4、PHEVはT8ツインエンジンと呼ばれる。少なくともエンジンに関する限り、XC60の方が日本では遥かに守備範囲が広い。価格はスゴ〜ク大雑把に比べると、最廉価モデルのD4モメンタム(599万円)を始めとしてXC60の方が約100万円安い。
速くて安全性も高い。トップレベルのクロスカントリー
XC60は1900mmの幅の中で目いっぱいワイド感を追求している。その例が北欧神話のトールハンマーの柄の部分がグリルまで延びたことだ。つまりさらに横に長いデザインになった。このトールハンマー、XC90だったかに新採用されたときは幾分違和感を覚えたが、今となってはボルボのデザインの特徴として素直に受け入れられる。
室内の質感もさらに増した。InscriptionとR-Designにオプション設定されるテイラード・ダッシュボードのドリフトウッド(流木)コンセプトも新しい。好みの問題はあるが、常にNEXT ONEを追い求める姿勢は好感が持てる。これもスカンジナビアン・デザインの具体的チャレンジだろう。
ところで、当初広すぎると思った全幅はここで大いに活きる。当然リアシートの左右がたっぷりになった。ラゲッジスペースも広い。日本を意識すれば幅は大きすぎない方がいいけど、そのメリットが感じられるなら選択肢の一つではあると思う。加速もなかなかだ。0-100km/hはディーゼルが7.2秒、T6が5.9秒。走行モードはエコ、コンフォート、ダイナミック。その選択によってアクセルレスポンスや操舵力が変わる。
そう言えば、完全に停止する自動ブレーキを日本に導入したのもボルボが最初だった。その後もボルボは安全・運転支援技術の開発に余念がない。これは企業規模を考慮すれば驚嘆に値する。今回は三つのステリングサポートを導入した。中にはすでに採用されているものあるが、ボルボがアピールするのは以下の3つだ。
1 衝突回避支援機能:ブレーキのみでは衝突を避けられない状況で操舵力を補う。50−100km/hで作動。
2 対向車線衝突回避支援機能:対向車があるときに自車のはみ出しを検知すると走行車線に戻す。60−140km/hで作動。
3 後車衝突回避支援機能付きBLIS:死角のクルマや隣車線のクルマが急接近しているようなときに車線から逸脱したりすると、自車を車線内に戻す。60−140km/hで作動。
ところでXC60、バルセロナで乗った友人によるとなかなかいい仕上がりらしい。静かで、凸凹に強く、乗り心地もイイ、V90を超えるところもあるとか──早く、来い、来い、XC60の試乗チャンス。
報告:神谷龍彦
写真:怒谷彰久 / ボルボ・カー・ジャパン
ヘッドライトのトールハンマーの柄の部分がズ〜ンと横に延びた。サイドの彫り込みも効果的。
プラットフォームはV90などと同じだが、全長やホイールベースは短い。1900�の幅には疑問が残る。
ワイド感を強調したテールライトの新デザイン。ボルボ・ファミリーというのは疑うべくもない。
センターディスプレイを利用する多芸多才な「SENSUS」。オジサンはスイッチが懐かしい。
リアシートの居住性は圧倒的に改善された。ワイドボディなればこその得意技か。品質感高し。
エンジンはディーゼル、2種類のガソリン、それにPHEV(プラグインハイブリッド)だ。