プショー 408

ライオンの牙風のデイタイムライトなど最新プジョーの顔が特徴的。写真はGTハイブリッド。

リアエンドをはじめシャープな造形が特徴的。ベルトラインはリアでキックアップ。

ICEのGTグレード。GTではグリルがボディ同色。タイヤは205/55R19。


ハイブリッドはプラグイン。エンジン+モーターで前輪を駆動する。

308と共通の運転席まわり。ステアリング上からメーターを見る。

荷室容積は536L。後席を倒せば1611L。ワゴンのように使える。


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 プジョーから久々に、400番台の新型車となる408が登場した。以前の400番台モデルはセダンボディだったが、408はファストバック・ボディを採用。プジョーにとって新規車種といってよい趣だ。

プジョーらしいスタイリング

 ファストバックでクロスオーバー風仕立てという成り立ちは、同門シトロエンのC5Xと同じ。個人的には、見るまでは、C5Xのバッジエンジニアリングかと思い込んでいて、シトロエンの専売特許であるファストバックスタイルを安易にプジョーに流用したのだとすれば、残念だと思っていた。ところが、実車を見るとC5Xとはまったく違うスタイリングで、最近のプジョーらしい世界観でしっかりデザインされていた。

 弟分の308とは雰囲気が異なり、プレスラインの入り方がシャープで少しユニークだが、そこは2008などと共通性を感させる。近年のプジョー車は、スポーティ志向が強調されている感があるが、408は前後フェンダーがブリスターフェンダーとまではいわないにしても、張り出しのある造形で、足腰の強さを感じさせる。特に目をひくのはリアエンドで、お尻の部分が鋭く切り落とされたシャープなデザインは、昔のスポーツカーを連想させる。これは、コンセプトカーの「インセプション」からイメージされたデザインだという。

 408は、308と同じプラットフォーム(EMP2のver.3)をベースにしている。308の上級モデルという成り立ちであり、外観は異なるが、コクピットのデザインは実は共通であり、308の開発時から408への採用も視野に入れて、308にしては少し上級のつくりになっていたのだという。プジョーおなじみの、小径ステアリングのi-コクピットは、以前に比べて違和感が少ないものになっているように思う。

 全長は4700mm、ホイールベースは2790mm。全高は1500mmあるが、地上高が170mmと少し高めで、フェンダーの樹脂プロテクターとあいまって、クロスオーバーSUV的な趣になっている。

重厚なハイブリッド、軽快なICEモデル

 走った印象としては、「408GTハイブリッド」は、重厚で上質さが感じられた。12.4kWhのバッテリーを搭載し、エンジンも4気筒1.6Lを積むので、車重は1740kgあるが、エンジンは132kW/250Nm、モーターは81kW/320Nmで、特にトルクが低回転から十二分あるので、静かなまま余裕で力強い加速ができる。足回りは多少締まりを感じさせるが落ち着いており、後席でも高速の目地段差などで突き上げがなくスムーズ。なおかつロードノイズも低く抑えられている。ちなみにEV走行距離は66Kmだが、今回の試乗では電池が空に近く、ほぼハイブリッド走行のみだった。

 ICEの「408GT」のほうは、だいぶ印象が異なる。3気筒1.2Lエンジンは96kW/230Nmなので、控え目ともいえるが、車重がハイブリッドより約300kg軽い1430kgなので、不足は感じなかった。さすがにモーターアシストがないので、加速するにはアクセルを踏み込んでエンジンを回す必要があるが、このエンジンは非常に軽快感があり、回すのが楽しい。この車格に対して3気筒ではチープに感じるかと思いきや、プジョー車の場合スポーツ志向があるせいか、むしろ軽快感が先に立つ。シフトをMモードで回して走ればなおさら軽快になり、今や貴重な昔気質の、エンジンで走る楽しさが味わえるクルマと感じた。やや大柄だから、308ほどの軽快感はないが、足回りの確かさなどは同様のものが感じられ、同種の走りが味わえそうだ。SUV風ではあるが、純SUVより車高が低いので、走りは安定して上質感がある。

 ただ、「408GT」はとくに後席ではロードノイズが「ハイブリッド」よりも大きく、路面からの突き上げも少し目立つ。車格としては一段下になる印象である。もっともそれも価格差を考えれば妥当ともいえる。しかるべきところを走っていないが、ステアリングのフィールは、ハイブリッドよりも軽いせいか、こちらのほうが素直ではないかと感じた。街中や、高速の長距離クルーズならハイブリッド、活発に郊外や山道を走るならICEがおすすめと思う。

時代の要求に応えるモデル

 室内スペースはこれだけの車体の大きさがあるうえ、実用車としてまっとうにパッケージングされているので、後席ヘッドルームも足元も十分広く、荷室も広い。そこはフランスブランドならではの長所といえそうだ。

 メーカーの説明では、408はセダンとステーションワゴンとSUVの融合だという。セダンカテゴリーの衰退はどこの国でも同じで、従来のプジョーではセダンとステーションワゴンを両方設定するのが伝統だったが、この2020年代の408では、そのふたつをひとつに「融合」し、なおかつ今の主流のSUVテイストを与えた結果、このような車型になったわけだろう。C5Xも同じ車型であるが、SUVにしないで、セダン系の伝統を引き継ぎながら今風に時代の要求に応えるとすれば、この形になるのがひとつの必然なのだろう。408は、ニッチのようでいて、実は王道のクルマとしてつくられているように感じた。

報告:武田 隆
写真:武田 隆 篠原 政明

最終更新:2023/08/24