スズキ 新型スイフト

スイフトらしい軽快な走りっぷりを見せる。ワインディングロードやハイウエイクルージングも楽しい。

全長以外のサイズは従来型と同じ。前後ウインドーの傾斜角など、シルエットも従来型を踏襲している。

ボディカラーは訴求色のひとつであるクールイエローメタリック。リアコンビネーションランプはLED。


新開発の3気筒1.2Lエンジンにマイルドハイブリッドを組み合わせる。グレードにより5速MTも設定している。

インパネとドアトリムをつなげた立体感のあるインテリア。インターフェースの視認性や操作性も良い。

フロントシートはサイドサポート性が良く、身体をしっかりホールド。リアシートの居住性は従来型と変わらない。


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 スズキのコンパクト ハッチバック「スイフト」が4代目にフルモデルチェンジされた。スズキを代表するグローバル コンパクトカーの進化ぶりを検証しておきたい。

奇をてらわない、正常進化版的なスタイリング
 昨年のジャパンモビリティショー(以下、JMS)にコンセプトカーとして参考出品され、12月に発売されたスズキ スイフト。思えば、スズキは2024年次のRJCカーオブザイヤーにはノミネート車がなかった(つまり、ブランニューやフルモデルチェンジのモデルがなかった)。だが、2025年次はこのスイフトの前にJMSで同様にコンセプトとして出品した新型スペーシアを発売しており、さらに後続のモデルもあるようだ。
 さて、4代目にフルモデルチェンジされたスイフトは、基本的には従来型の正常進化版といえるだろう。デザインコンセプトは「今までのスイフトにとらわれない、個性・走りを想起させるスタイリングを追求」と謳っているが、そのシルエットは従来型を踏襲している。
 たとえば、フロントウインドーやリアウインドーの傾斜角、そしてルーフの長さなどは、従来型とほとんど変わっていない。これは、新型スイフトの開発責任者である小堀昌雄氏が、デザイナーに対して要請した点だという。したがって、ひと目見てスイフトと分かるシルエットは変わっていない。
とはいえ、ラウンド形状のボンネットや立体感のあるフロントマスク、張り出したフェンダーなどが新しさを感じさせる。しかも、空力特性は従来型より約7%向上させている。
 サイズは全長こそ従来型より15mm長くなっているものの、全幅や全高、そしてホイールベースも従来型と同じ。この手のコンパクト ハッチバックを求める層は必要以上のサイズアップを好まない人も多い。駐車場の事情や運転のしやすさなどを考えると、サイズをキープした点には好感が持てる。

質感の向上したインテリア。装備も充実
 だがインテリアは大きく進化した、インパネと左右のドアトリムをつなげて、立体感のある造形としている。インパネ中央部のエアコンやオーディオなどの操作パネルは8度、運転席側のスイッチ部は3度、ドライバー側にオフセットして視認性や操作性を向上している。中央にマルチインフォメーションディスプレイを備えた2眼メーター、下をカットしたDシェイプのステアリングホイールなども、ドライバーの使いやすさを追求している。
 室内の広さは従来型と変わらないが、ラゲッジスペースは開口地上高を下げたり開口部高を高くしたりして使い勝手を向上している。スペースそのものも深さがある。ただし、分割可倒式のリアシートバックを倒すしてもラゲッジフロアと段差ができてフラットにはならないのが少々気になるところ。
 USBソケットやワイヤレス充電器、ディスプレイオーディオなど、一部はオプションだが快適装備はこのクラスとしては必要十分なレベルにある。安全装備も、衝突被害軽減ブレーキをはじめとした予防安全技術「スズキ セーフティサポート」を全グレードで標準装備。上級グレードにはドライバーモニタリングシステムも備えるなど、ライバルたちに遜色ない充実ぶりだ。

軽快な走りっぷりは、スイフトならでは
 試乗車はトップグレードのハイブリッドMZ(FF/CVT)。エンジンは排気量こそ従来型と同じ1.2Lだが3気筒となり、これも新開発のCVTにISG(モーター機能付き発電機)を組み合わせたマイルドハイブリッドだ。
 乗り出して、まず感じたのは軽快さ。1トンを切る車両重量だから、発進時からの出足もいい。3気筒エンジンはバランサーシャフトなど備えていないが比較的スムーズで、しかも低速域からトルクフル。高回転域まで滑らかに回り、エンジンレスポンスは良い。マイルドハイブリッドのアシストも自然で、違和感はない。
 しかも、乗り味はけっこうしっかりしている。ハンドリングも素直だ。ちょっとしたワインディングロードで、CVTをマニュアルモードにしてパドルシフトを駆使して走ると、スポーツハッチ的な走りも楽しめる。そんな状況でもアンダーステアは弱く、思ったようなラインをトレースできる。
 高速走行でエンジン回転数は、Dレンジで80km/hが1500rpm、100km/hが2000rpmくらい。ACC(アダプティブ・クルーズコントロール)も試してみたが、車線の中央をキープして安定した走行を見せる。前走車に追いついたときの減速や、前が空いたときの加速もスムーズで必要以上にエンジン回転数を上げることなく、またCVTにありがちなラバーバンド的フィーリングは少ない。
 高速走行での乗り味は締まっており、路面の継ぎ目を乗り越えるときも上手にこなす。ノイズも控えめだから、長距離のハイウエイクルージングも苦にならないだろう。
 ライバルが群雄割拠するコンパクト ハッチバックの市場だが、ウイークポイントとしてはストロングハイブリッドではないゆえに、燃費で少々劣るところか。だが重いバッテリーを積んでいないぶん軽快だし、車両価格も多少は安いといったメリットもある。何よりも、スイフトらしい走りの楽しさは他に代えがたいと思う人も多いのではないだろうか。
 そして、スイフトといえばスイフトスポーツの存在も忘れてはならない。普通のスイフトがこれだけの出来の良さなのだから、スイフトスポーツはさらに進化して走りもより楽しめるに違いない。こちらも期待大であることは間違いないだろう。(報告/写真:篠原 政明)

■ スズキ スイフト ハイブリッドMZ 主要諸元
●全長×全幅×全高:3860×1695×1500mm
●ホイールベース:2450mm
●車両重量:950kg
●エンジン:直3 DOHC+モーター
●総排気量:1197cc
●最高出力:60kW(82ps)/5700rpm
●最大トルク:108Nm(11.0kgm)/4500rpm
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:横置きFF
●燃料・タンク容量:レギュラー・37L
●WLTCモード燃費:24.5km/L
●タイヤサイズ:185/55R16
●車両価格(税込):216万7000円

最終更新:2024/02/14