ルノー E-TECH 3モデル

E-TECH ハイブリッドによる走りは、きわめてスムーズ。変速ショックは少なく、シームレスに加速する。

2023年4月の一部改良で、「R.S.ライン E-TECH ハイブリッド」に代わって登場した「E-TECH エンジニアード」。

ウオームチタニウムをアクセントに配した、「「R.S.ライン E-TECH ハイブリッド」のインテリア。


1.6L 自然吸気エンジンと2モーターにマルチモードATを組み合わせた、E-TECH フルハイブリッド。

ルーテシア E-TECHに専用内外装を充実させた上級グレードとして設定された、「E-TECH エンジニアード」。

現在のルノー車では一番人気を誇るキャプチャーにも、E-TECH フルハイブリッドが設定された。


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 ルノーは、バッテリー電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、フルハイブリッド車(HV)を総称して「E-TECH(イーテック)」と呼んで世界的に展開している(マイルドハイブリッドは含まない)。現在、日本市場に導入されているルノーのE-TECH モデルはフルハイブリッド車のみだが、2022年5月にクーペSUVのアルカナを皮切りに、コンパクト ハッチバックのルーテシア、そしてコンパクトSUVのキャプチャーと、立て続けに投入してきた。今回、試乗会でこの3モデルを同時に乗ることができたので、その印象を紹介してみたい。

システムは複雑だが走りはスムーズ

 ここで、E-TECH フルハイブリッドのシステムについて簡単に紹介しておこう。エンジンは1.6Lの自然吸気 直4DOHC。これに、駆動用モーターとHSG(ハイボルテージ・スターター&ジェネレーター)の2基のモーターを組み合わせ、電子制御 ドッグクラッチ・マルチモードATと駆動用のリチウムイオンバッテリーを組み合わせたシステムだ。

 マルチモードATの段数は、エンジン側に4速、モーター側に2速あり、2速×4速の8速にそれぞれの2速と4速を独立して使う6速で計14速となるのだが、同じギヤ比のものが2つあるので12通りとなるという。段数があまりに細かすぎるせいか、このトランスミッションにはマニュアルモードは備わっていない。

 実際に試乗してみると、制御が緻密で最適なギヤをセレクトしているようだし、ヘタにマニュアルシフトを繰り返すとトラブルの素になるのではとも思われるので、マニュアル操作ができないということに関しては不満は感じなかった。

 まずは、クーペSUVのアルカナから乗り出す。2022年の日本デビュー時にも試乗しているが、今回は「E-TECH エンジニアード」と呼ばれる新グレード。とはいえ、以前の「R.S.ライン E-TECH ハイブリッド」とは内外装の意匠が変わっただけで、パワートレーンなどに変更はない。

 その走りっぷりは、相変わらずスムーズだ。発進時はモーターのみで駆動し、市街地走行では状況に応じてエンジンがかかってアシストする。高速道路ではエンジンが主となって駆動しているが、追い越し加速など少しアクセルペダルを踏み込む機会があれば今度はモーターがアシストする。また、減速時にはエネルギー回生が行われている。

 …といった一連のパワーフローは、じつはメーター内のインジケーターの表示を見ているから認識できるのだが、ただ乗っているだけではほとんど分からない。それほど加速はスムーズだし、シフトショックも皆無に近い。エンジンのON/OFFも注意深く耳をすましていないと気づきにくい。この自然さなら、前述のようにマニュアルシフトは不要だなというのも頷けることだろう。しかも、以前に試乗したアルカナよりは制御が洗練されたようで、乗り心地も良くなっていた。これは、オプション装着されていたボディダンパーにより振動が効果的に抑えられていたことも奏功していたようだ。

 他に類を見ない独特のスタイリングと、E-TECH ハイブリッドがもたらす低燃費と高性能。平日はビジネスの足に、休日はレジャーの足にも使える、ポスト セダンとしては格好の1台になりそうだ。

コンパクト ハッチバックならではの軽快感

 続いて、ルーテシアに。こちらも新グレードの「E-TECH エンジニアード」で、パワートレーンなどはノーマルの「E-TECH ハイブリッド」と変わらないが、よりスポーティな雰囲気の内外装やBOSE サウンドシステムなどを専用装備した上級グレードとなる。

 E-TECHによる走りの印象は、アルカナと基本的に変わらない。加速はスムーズでシフトショックも感じられない。ただし、車格の違いもあるのだろうがエンジン音はアルカナよりは感じられたが、気になるレベルではない。エンジンのパワースペックこそアルカナやキャプチャーのものより少し低められているが、モーターのパワースペックは同じだし、なんといっても車両重量が軽いぶん軽快感は段違いだ。コンパクトなボディは、ホットハッチらしくワインディングロードでの走りを楽しむこともできる。

 ハイブリッドのコンパクトカーといえば日本車の独壇場のようになっているが、そういう意味でもルーテシアは貴重な存在だ。日本車のハイブリッド コンパクトカーも悪くないけれど、デザインやブランドなど、ちょっとこだわりを持ってクルマを選びたい人にも向いている。なんといっても「輸入車ナンバーワンの低燃費」というのも、このクルマを選ぶ理由のひとつになりそうだ。

E-TECHの導入で人気が高まるルノー

 そして、短時間だがコンパクトSUVのキャプチャーにも試乗した。こちらもE-TECH ハイブリッドの走りの印象は、他の2台と大きく変わらない。もちろん、車格的に近いアルカナのほうに乗り味は近いのだが、アルカナより車両重量が40kgほど軽いとはいえ、今回の試乗レベルでは違いはほとんど感じられなかった。

 日本市場ではコンパクトなSUVとしてルノー車で一番人気を誇るキャプチャーだが、このE-TECHの追加でさらに人気は高まっているようだ。

 Bセグ・ハッチバックのルーテシア、Bセグ SUVのキャプチャー、そしてCセグ・クーペSUVのアルカナと、3台のフルハイブリッド車を日本に投入したルノー。その効果は絶大で、2023年の受注実績ではルノー車全体の2割がE-TECH モデルとなり、しかも今回試乗した3車種では半分くらいのユーザーがE-TECH モデルを選んでいるという。

 購入後に気に入っているポイントとしては、「ハイブリッド」、「燃費」、そして「外観デザイン」などがあげられている。日本では充電環境などを考えると、電動車への第1歩はハイブリッド車がベターな選択ではと思われる。それでも、ハイブリッドは日本車だけのものじゃない、とこだわりを持ってクルマを選びたいのなら、ルノーのE-TECHという選択はありだろう。

報告/写真:篠原政明

最終更新:2023/07/25