2006年次と2011年次のRJCカーオブザイヤーの座に輝いたスズキのスイフトが12月27日にフルモデルチェンジを受けた。ただし、発売は2017年の4日からになる。
当然だが、エクステリアは大きく変わった。先代はどちらかというとヘッドライトやテールライトの存在感が目立っていたが、新型ではランプ類がおとなしくなりその半面、洗練さを増した。最大の変化はグリルだ。サイズもデザインも変わり大きなペンタゴン型になった。ちょっとイタリアンコンパクトっぽい。
乗車定員は5名と変わらない。が、サイドからドアノブ消えた。もちろん本当になくなったわけではなく、それはCピラーガーニッシュに隠されている。この手法も最初はアルファロメオだったような……。外観上のクーペっぽさをアピールする最近の流れに沿ったものだが、このサイズのモデルでそれを訴える必要があるかどうか、個人的には疑問が残る。
で、そのサイズ。これはほとんど変わっていない。ミリ単位の変化を考慮しなければ、変わらないといえる。4.8mの最小回転半径も同じ。変わったのはむしろその中身だ。プラットフォームが一新されたのである。その名をハーテクト(HEARTECT)という。ただ、このBセグメント用プラットフォームの採用はこれが初めてではない。先祖は2014年にデビューした現行アルトにまで遡る。当時は正式名がまだなかった。
その後は、今年発売されたバレーノ(インド産だがこれが意外にいい仕上がり)でも採用された。前後長こそことなるが、スイフトのプラットフォームはバレーノと基本的には同じだ。
新プラットフォームのメリットは何か? 軽量化である。クルマ全体では先代比で120kgも軽くなっている。とっても大雑把に言えば、従来は角型だった構造を三角形主体に変えて剛性を高めつつ軽量化を図ったということだろう。もちろん軽量化はプラットフォームだけではない。足回りも、シートも──すべての部品の見直しを行なってこの数値を達成した。
サスペンションはヨーロッパで鍛えたという。イギリス、ドイツ、スペインなどで。このこと自体はさほど珍しくはない。しかし、ぼくがスイフトの走りに目を見張らされたのは、スズキのテストコースで2代目に試乗したときだ。そのリアの踏ん張り感とステアリングの素直さはぼくの想像をはるかに超えていた。その理由として挙げられたのが「ヨーロッパで鍛えました」だった。このころスズキはハンガリーでもスイフトを生産していた。だから、とくにヨーロッパが気になった。
エンジンは2タイプ。ひとつはこれまでの1.2ℓ4気筒自然吸気エンジンの低速トルクを高めたもの(67kW)。これには、エンジン駆動のみのモデルとモーター機能付き発電機(ING=Integrated Starter Generator)も備えたマイルド・ハイブリッドと呼ばれモデルがある。燃費は最高で27.4km/ℓである。
もうひとつは1.0ℓ3気筒直噴ターボ(75kW)。バレーノの1.0よりも最高出力はやや落ちるが、スイフトのなかではもっともスポーティなモデルで燃費は20.0km/ℓ。1.0はワングレードしかなくて、トランスミッションは専用の6速AT。他のグレードは5速MTかCVTが選べる。
価格は1.0のRStが170万4240円、1.2は134万3520円から184万5720円だ。スイフトは世界で530万台も販売したスズキのワールドカーである。来春からは輸出も始めるという。今年の大きな目標のひとつだった小型車販売国内10万台を成し遂げたスズキ、内外の厳しい競争をどう乗り越えてゆくか、今後が楽しみだ。
報告:神谷龍彦
撮影:佐久間健
RS系(奥)はグリルに赤い横ラインが入る。サイド・アンダー・スポイラーやルーフエンド・スポイラーもRSの証明。前後スポイラーも専用である。。中央は鈴木俊宏社長。
リアドアを開けるにはピラー上部のハンドルを引く。メーカーオプションのセーフティパッケージは、前車に追従するアダプティブクルーズコントロールなどの安全装備が充実している。
全幅は1695mmだから5ナンバーを維持。ラゲッジルームは奥に75mm深くなったため先代よりも55ℓ増えた。荷室開口部は80mm下がったから荷物の出し入れがより便利に。
メーターパネルも一新。メインメーターだけでなくエアダクトや情報表示部も円形になった。スピードとタコの間のディスプレイには平均燃費、パワー/トルクなどを表示。多種多芸だ。
1.2ℓには通常のエンジン(67kW=91ps)とマイルド・ハイブリッド付き(67kW+2.3kW)がある。デュアル・インジェクションを採用しており、変速機は5速MTかCVTが選べる。
RStに搭載される1.0ℓ3気筒直噴ターボ(75kW=102ps)。バレーノの1.0ℓより出力は少し劣るが、代わりに低速トルクを厚くした。変速機はマニュアルモード付き6速AT。