「歩行者保護エアバッグも全車標準装備です」と誇らしげに説明員が言う。(たしかに国産車としては初めてのことだ)
「ただ、ボルボも装備していますよねえ」
「ええ。でも違うんです。ボルボさんはエンジンフードの後端を上げてエアバッグを膨らませます。ボンネットを開けるのに左右に二つ、エアバッグ用に一つ、計三つの火薬が必要です。でもインプレッサはボンネットは開けません。ボンネットとフロントガラスの間からエアバッグが飛び出す。だから火薬は一つで済みます」
このエアバッグサプライヤーの名前を尋ねると──
「そういうことにはお応えしないことになっていますので」
とニベもない。
なるほど、よく見るとエンジンフード後端とフロントスクリーンの間がやや広い。コレ、いいアイデアだと思う。なぜRJCのテクノロジー・オブ・ザ・イヤーに自選しないのか!? ちょっと不思議だ。ついでにもうひとつ質問。
「スバルさんに限ったことではないけど、人身事故車はフロントガラスが凹んでいることが多い。ガラスにあたる部分は大丈夫なのですか?」
「大抵は大丈夫です。ガラス自体に吸収力があるから」
10月13日、5代目インプレッサの発表会が行われた。そのセールスポイントの一つが、この歩行者保護エアバッグと、お得意のアイサイトver.3(衝突被害軽減ブレーキ)の全車標準装備化である。アイサイトの採用はこれが初めてではないが、歩行者保護エアバッグの方はこれからの大きな潮流となるだろう。
これらの安全装備を全車標準装備することによってスターティングプライスは少し上がった。とはいえ、これまでのユーザーの大半がアイサイト付きを希望したというから問題はなさそうだ。
新インプレッサのさらなる特徴はSUBARU GLOBAL PLATFORMの採用だ。これはただインプレッサに限らない。今後のスバル車の核となるプラットフォームなのだ。次に登場するモデルもこれをベースに開発される。SUBARUは「安全性能と走行性能を飛躍的にアップした次世代プラットフォームです」と胸を張る。
エンジンには1.6リッター(115馬力)と2リッター(154馬力)があるが、とくに2リッターは完全新開発の直噴水平対向4気筒。1.6、2.0ともにNA(自然吸気)というのもSUBARUらしい。ついでに言えばトランスミッションはMTモード付きリニアトロニック。JC08モード燃費は17.0km/ℓ(2リッター)。駆動方式は全グレード2WDと4WDが用意される。
デザイン・フィロソフィーも明確にした。過去のように単に“スバルらしく”というのはあまりクリアではない。それをDYNAMIC × SOLIDに。これも分かったようでよく分からないというキライはなきにしもあらずだが、少なくともこれまでさほど洗練ぶりを感じさせなかった内装は“デザインすっきり、質感たっぷり”になった。入門モデルにしてこのレベルだから、今後出てくるモデルにも期待ができる。
あまり注目されないが、全幅、それも取り回しの基本となるミラー to ミラーの距離を先代と同じに止めたのも一種の知恵だ。それだけではない、ラゲッジルームや後席の足元も拡大した。とまあ、なにやこれやで、新インプレッサ、なかなか優れたクルマらしい。
日本での月販台数は2500台。予約を受付けてから1カ月あまりで6000台近くの受注があったという。スバル車は日米でよく売れている。で、アメリカでの生産体制は現在の20万台から年末までに40万台に増やす。これはべつにインプレッサ限ったことではないが、現在日本から輸出されているクルマを現地生産に変えれば日本への納車台数は増える。「結果的に待ち期間は短縮されるということです」とスバルは嬉しそうに語った。
価格は178万円から。G4もSPORTも同じプライスである。発売は2.0が10月25日から、1.6は年末の予定。しばし待て!
報告:神谷龍彦
写真:怒谷彰久
G4は4ドアセダン。とくに目立ったデザインではないが嫌味もない。タイヤはBSのトランザなど(205/55R16〜225/40R18)。
大半が5ドアハッチバックのSPORTを選ぶという。小回りを考えてミラー to ミラーの幅を広げなかったのは賢明な選択だ。
ラゲッジルームだけでなくリアシートの足元も拡げられた。カッコウだけでなく実用性にも配慮。スバル入門車らしさをきっちり守る。
革新的な歩行者保護エアバッグとお得意のアイサイトをすべてのグレードに標準装備としたのは歓迎できる。値段が多少上がってもいい。
内装はずいぶん良くなった。デザインもすっきりしたし質感もなかなか。実際の仕上がりはこの写真の印象よりも高い。
エンジンは2種類。ともに水平対向4気筒NAで、1.6リッターと2リッター。大資金を要する所はトヨタと協力しつつ、個性は守る。