テスラモーターズ モデルX
テスラのラグジュアリーSUV。895万円は安い?

 最先端の自動運転機能だけでなく、電気自動車でありながらスーパーカー並みの高性能を誇り、ちょっと高めのプライスタッグでも話題となったテスラ・シリーズにSUVモデルが加わった。その名を「モデル X」という。
 もっとも、今年初めには「モデル3」という廉価版セダンも正式に発表されている。ただ、こちらの生産は2017年末から(米国でもデリバリーは2018年になるだろう)。アメリカでの価格3万5000ドルと公表されているが日本での価格は未定。とは言え、日本でも15万円払って今でも予約だけすることはできる。
 モデルXのプラットフォームは基本的にはモデルSと同じだが、サイズは一回り大きい。全長は5mを、全幅は2mを超える。ま、SUVというのは概して大柄になりがちなものだけど。乗車定員は7人、もしくは6人だ。
 デザイン上の大きな特徴はリアのファルコンウイングドア。鳥が翼を広げるように開くが、ガルウイングと言った方が分かりやすいかもしれない。このメリットは見かけだけじゃない。ボディと障害物の隙間が30cmもあれば開閉できる。狭い所でも簡単に子供をリアシートに乗せられる。 
 動力は言うまでもなくモーター。前後に二つのモーターを備えるAWD(四輪駆動)である。フロアに組み込まれたバッテリーの仕様は、60kWh、75kWh、90kWh、100kWhの4種類だが、最上級のP100Dでは、0−100km/h加速3.1秒の俊足ぶりと542kmの航続距離を誇る。ちなみに60kWhバッテリーを搭載する最廉価の60Dはそれぞれ6.2秒、355kmだ。価格は895万円(消費税込み)から。テスラとしては、安い。
 電気自動車であることの良さは、積載量にも表れる。前にも後にもエンジンはないから、前後リッド下には比較的広いスペースがある。ついでに触れると、モデル3にはラジエーターグリルがない。ちょっと異様な感じもするが、それも当然。冷却すべきエンジンがないのだから。モデルSが今年のマイチェンで顔を変えたのも、モデル3やモデルXとの整合性を考えてのことだろう。
 インパネはモデルSと似ている。中央に超ビッグなディスプレイ(モデルSは17インチ)があるのも同じだ。たいていの操作はこのパネルにタッチすることでできる。質感も悪くない。展示車は左ハンドルだったが、日本に導入されるのは右ハンドルになるそうである。 
 空調も飛びぬけていて、バクテリアやススの除去能力は従来の何百倍も高いそうだ。「生物兵器モードにすればバイオハザード状態でも安全だ」。ニコラ・ヴィレジエ社長は胸を張る。
 自動運転システム(Auto Pilot)を強烈にアピールしてきたテスラだが、この日は少しニュアンスが違った。基本的にはタイプSのそれと同じだ。ただ、これまでは周囲の障害物検知の主体はカメラだったが、それをレーダー主体に変えた。これにより、カバーできる範囲が広くなった。また、自動運転の快適性も増したという。従来はレーンチェンジが少々急激すぎるきらいがあった。
 これはバージョンを.7.2から8.0に変えることによって実現できたもの。後からでもシステムのバージョンアップができるのはテスラなればこそだ。「まだ完璧ではない。セミ自動運転です」とテスラは言う。
 現時点でのバッテリーはパナソニック製だが、テスラは独自の電池工場を造っているという噂もある。それが成功すれば、それ以前にクルマが大ヒットすれば、自動車業界の勢力図が大きく変わる可能性がある。なんと言ってもテスラの創立はわずか十数年前のことなのだから。

報告:神谷龍彦
撮影:佐久間健

「輸入車SUVの5%。台数で年に数百台売りたい」とニコラ社長。4年間もしくは8万キロの車両保障、バッテリーとドライブユニットは8年間距離無制限の保障がつく。

この写真ではあまり感じられないかもしれないが、実際にはかなりボリュームのあるボディだ。アクティブスポイラーを備えたモデルのCdは0.24。SUV車中最小である。

リアのファルコンウイングドア。大きく開くだけでなく、開閉に要するスペースも少なくてすむのも長所。3列目シートへの荷物の出し入れや人の乗降にも便利である。

中央に大型ディスプレイを配したインテリアは新時代の香りか。ステアリングホイールは最近多い非円形タイプ。セミ自動運転とは言ってもあくまで自己責任で──。

クルマというよりゲーム機のような雰囲気になってきた。タッチディスプレイを介してやる操作はとても多い。パッと乗ると戸惑う。短時間ではマスターできないことも。

エンジンがない分クラッシャブルゾーンを多くとっているので、前後の空きスペースは比較的多い。人数にもよるが足りなければ3列目シートを倒すとか方法はいろいろ。


最終更新日:2016/09/15