1991年に登場したセレナは、長い間ファミリー・ミニバンをリードしてきた。その5代目の発表会では、妻・堀北真希のオメデタがごく最近知られた山本耕史と、沖縄に家族で移住したパパイヤ鈴木が壇上に登り、星野朝子専務執行役員とトークを繰り広げた。
新型セレナは、事前キャンペーンの影響もあって自動運転に注目が集まりがちだ。でもそれだけはない。ミニバンとしてもしっかり進歩している。まず室内長が伸びた。チマチマではなくド〜ンと180mmも!だ。当然居住性は大きく向上する。その上に2列目シートに工夫を凝らし、同時にCピラーを後ろに50mmずらすことによって、3列目の乗降性を飛躍的に向上させた。インパネもすっきりと高級感を持たせた。
セレナのユーザーは女性が増えていると言う。だから、2列目シートの移動にかかる力を減らした。上部だけと全体が開くデュアルバックドア(こういうのって意外と便利)の素材も軽いものを選んだ。リアドアもボディの下で足を動かすだけで開閉できるハンズフリーオートスライドドアにした。とまあ、心優しいミニバンなのである。
動力は2リッター直4(150ps)と2.6psのモーターのハイブリッド。トランスミッションはエクストロニックCVT、燃費は15.0〜17.2㎞/ℓだから悪くはない。
「自動運転にばかり注目しないでください」と星野役員は強調した。
しかし、予約受注の7割が自動運転=ProPIROT(プロパイロット)=同一車線自動運転技術だと聞けば触れないわけにはゆかない。そして何よりもこれは2020年までに自動運転車を市販すると公言した日産にとっては避けて通れないステップなのだ。
日産は2018年に車線変更を含めた高速道路で、2020年には市街地の交差点を自動で曲がる自動運転を目指す。自動運転へのアプローチはメーカーによって異なる。トヨタやホンダは2020年に車線変更も含めた高速道路での、一方、フォードやBMW、フォルクスワーゲンは2021に一般道路も含めた完全自動運転車の市販化をはかる。これには法律的な変更も必要だが、そのあたりは見込み発車なのだろう。
今回の日産の自動運転技術は高速道路、もしくは自動車専用道路用だ。その範囲で長時間の巡航走行と渋滞走行に対応する。カメラで前のクルマを認識し、30km/hから100m㎞/hを上限に前車との距離を一定に保ち、車線の中央を走らせる。前車が止まった場合はドライバーがブレーキを踏まなくても停車状態を維持する。ステアリングもアクセル、ブレーキにも一切手を触れる必要はない。操作は簡単。ステアリング上のスイッチを押すだけだ。普及を目指しているからコストも抑えている。
ただ、実際のシーンでは不満も出るかもしれない。しかし、自動運転の第一歩としては歓迎だ。帰省する際などには大いなるサポートになる。日産も「サポート」というのを重視、あくまでも責任は運転者にあると繰り返す。しつこいほど。現時点ではそれも当然だろう。千里の道も一歩からである。
セレナの価格は231万6600円からだが、プロパイロット装着モデルは291万6000円から。同時にオーテックからライダーなどのカスタムモデルも発売された。
報告:神谷龍彦
撮影:怒谷彰久
とかく自動運転に注目が集まりがちだが、ベストセラー・ミニバンとしての進化も著しい。
右から、星野朝子日産専務、パパイヤ鈴木、山本耕史(左端は司会者)。
サイズはほとんど変えないでより迫力のあるフロントデザインに。Aピラーは細くした。
バックドアの開閉は上部だけと全体のふたつ。狭い所での開閉や荷物のチェックに便利。
ダッシュボードは左右に広く穏やかなラインを採用。ディスプレイは7インチで見やすい。
動力は2リッター直4エンジンとモーターのハイブリッド。パワーに不足はない。