ダイハツ タント/タントカスタム
DAIHATSU Tanto/Tanto CUSTOM

すべての世代に向けた新時代のライフパートナー

 スーパーハイト軽自動車のパイオニアであり(2003年発表)、ミラクルオープンドア(2代目=2007年)、そして両側スライドドア(3代目=2013年)などで、13年間連続軽自動車販売ナンバーワンの座を守り続けてきたダイハツのタントが4代目になった。
 特徴は、新パワートレインの採用とプラットフォームの一新、ミラクルウオークスルーによる使い勝手の改善、先進安全性の進化、軽自動車にふさわしい価格、さらに劇的に進化した福祉車両などがある。フロントグリルはタントが横のラインを強調、カスタムが最近のトヨタ車に似た少々アクの強いものになっている。

新プラットフォーム、新エンジン、新CVT
 基本のキとなるプラットフォームはDNGA(Daihatsu New Global Architecture)と呼ばれる新開発のもの。今後ダイハツ車に採用されてゆく予定で、このタントが第一弾となる。サスペンションアレンジを最優先するとともに、衝突安全性、NV(騒音&振動)性能、ボディ剛性の強化と軽量化(マイナス約40kg)を実現している。
エンジンは従来同様に自然吸気(38kW)とターボ付き(47kW)の2本立て。マルチスパークやスワール噴霧の採用によって、加速感は向上。ターボ車のトルクは8%以上アップしている。このエンジン以上に注目したいのが新開発のCVT「D-CVT」だ。従来のベルトに加えて伝導効率の高いギアを組み込んだ。この結果、発進時の低回転から高い駆動力を発揮し、高速では静さを増したと説明される。
 ダッシュボードは流行の横基調デザイン。運転席を最大540mm、助手席を380mmスライドさせられるようになり、運転席と後席間の移動やピラーインドアから運転席への乗り降りがしやすくなった。また、助手席が半ドア時に自動で全閉にすることも可能になった。従来に比べて16mmも床を下げたことや、メーターの位置やステアリングのレイアウトを見直して視線の移動量を減らし、Aピラーを細くして視界を広げるなど、実質的な改良点も軽自動車らしく多い。
 レーンキープ機能に加え、ダイハツの予防安全「スマートアシスト」も進化した。クルマが車線をはみ出しそうになるとステアリング操作をアシストする「車線逸脱抑制制御機能」、軽自動車初の「アダプティブ・ドライビング・ビーム」、これまでのエンジン出力制御に加え前後のブレーキ制御もする「ブレーキ制御付き誤発進抑制機能」も新しい。
 最近試乗した軽自動車の中で走りの静かさとスムーズさが印象的だったのは、三菱eK&日産デイズだが、そのあたりとの比較は試乗を待つしかない。
 8%消費税込み価格は122万0400円(スマートアシスト非装着車2WD)〜187万3800円(カスタムRS 4WD)。駆動方式は各グレードともに2WDと4WDがある。

福祉車両もメインスリートを走りだした
 今回のタントにはさらなる特徴がある。フレンドシップシップシリーズと呼ばれる福祉車両の充実だ。どのメーカーも福祉車両自体は用意しているが、基本的には身障者向けという位置づけだった。もちろんそれはそれ意義あることだ。
 でもそれだけで十分なのか? そんなことはない。健常者かそうでないかという単純な二分法では済まされない。実はその中間の層が存在するのだ。しかもその数は今後間違いなく増え続ける。
 まずフレイル高齢者である。フレイルというのは加齢によって運動機能が衰えてきた人のこと。さらにフレイル高齢者も含めた、支援1-2、要介護1に属する人々もそうだ。自分で運転できる人も当然いる。それなのにこれまではこうした人々にぴったりのクルマはなかった。最近話題の高齢者による事故も、単純に免許証を返還すればいいという問題ではない。
 ダイハツはそこに具体的一石を投じた。自立支援や介護予防の観点を加えたのだ。それが、「ラクスマグリップ」であり、「助手席ターンシート」であり、「ミラクルオートステップ」である。多くがオプションなのは少し残念だが、このシリーズ用の立派なカタログを見てもダイハツの本気度が分かる。
 ラクスマグリップとは、着衣の袖口の入り込みを防止するなど子供から高齢者までの使いやすさを追求した運転席・助手席のグリップのこと。助手席ターンシートとは、介助が必要な時の乗り降りや一人での乗り降りをサポートするために助手席の回転角度を30度にした。これなら足腰に不安のある人でもグリップをつかみながら乗り降りができる。しかもシートは車外に出ない。狭い所でも安全だ。ミラクルオートステップはオープンドア一杯のロングステップで、重心の移動を減らして乗降時に楽な姿勢で対応できる。
 出色なのはパワークレーン(全モデルにオプション)だ。これは車イスをワンモーションでラゲッジスペースに収納できる電動式車イス収納システムである。通常クレーン本体は天井部に収納されているから荷室面積は標準車と変わらない。
 これらのラクスマシリーズの開発は三重大学などとの産学共同研究の結果である。このほか、従来からある「ウェルカムシートリフト」や「スローパー」(車イス移動車)も確かに進化している。価格は153万円から207万円(消費税非課税)。)
 これまであまり対象にされなかった、やや体に不自由を感じるレベルのユーザーも含めたダイハツの新対応──その経営センスと決断は大いに褒められていい。

報告:神谷龍彦
写真:佐久間健

手前がタント、後ろがタントカスタム。もうお分かりですよね。顔は違うがエンジンは共通。

リアスタイルはタント、タントカスタムとも差異は少ない。デザイン的にはやや竜頭蛇尾か。

インパネカラーはタントがグレー、カスタムがブラック。ディズプレイ(9インチ)が大きい。

CVTも新しくなった。これと新エンジンによって加速感、トルク感は大幅に向上したという。

グリップの位置と形状、長いサイドステップ(ドアに連動して自動開閉。荷重100kg)、シートの回転(30度)に注目してほしい。これならシートは車幅内に収まるから狭い所でも安全だ。

通常は天井に収まっているクレーンを引き出して使う(クレーン昇降能力30kg)。操作はワンタッチ。スイッチで出来る。バンパー保護カバーとセット。オプションなのが残念だ。


最終更新日:2019/07/15