プジョー308 & 508 BlueHDi(ディーゼル)

ディーゼルノイズ少々、乗り心地良し、ハンドル軽しのAllure。Allureはアリュールと読む。「歩く」というフランス語らしい。

ボディはハッチバックとスポーツワゴンの2タイプ。速さではもちろん2リッターのGT。バランスでは1.6リッターのAllure。

120馬力と180馬力、2種類のディーゼルエンジン。2リッターはDOHCだが、1.6リッターはSOHC。年末には150馬力版も。


308のインテリア。好みにもよるけど、ステアリングは小さめ。スポーツモードはセンターコンソールの手前右にある。

508GTセダン。プジョーの最上級モデルであるだけに、装備も充実している。ナビゲーションも標準で装着されている。

508 GTのSW。508 GTディーゼルはセダン、ワゴンともに2リッターを搭載する。安全対策も最先端と言っていいだろう。


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Allureは1.6リッター、GTは2.0リッター
 PSAグループは7月12日にディーゼルエンジン搭載車9モデルを正式にお披露目した。
と同時に、2017年1月までに発表する予定の新型車のローンチングスケジュール(発表予定)も公開した。たとえばプジョー3008 GT(2リッター)を2017年1月にデビューさせるというように──。これは内外のメーカーを問わず珍しいことだ。
 現時点でのPSAのディーゼル・ターボ・エンジンは1.6リッター(120馬力&300Nm)と2.0リッター(180馬力&400Nm)の2タイプ。308に1.6と2.0、508に2.0と、プジョーは両方のエンジンを搭載する。DSにもシトロエンにもディーゼル積まれるが、エンジンとしてこの2種類だ。ただ、年末には2リッター150馬力のディーゼルエンジンが、シトロエンC4ピカソとグランドC4ピカソに搭載されるという。独自のは排ガス対策をベースに、PSAのディーゼル作戦、本気なのである。
 308のボディはハッチバック(Allure)とステーションワゴン(SW)、508はセダンとワゴン。2リッターモデルは308、508ともにGTと呼ばれる。ディーゼル車なのに「GT」というのはちょっと違和感があるかもしれない。でもとくに不思議なことではない。昔、605の現地試乗会で最高級グレードを頼んだら用意されたのはディーゼル車だった。これがヨーロッパの常識かと感じ入った。日本やアメリカでは考えられないことだ。

オススメはGTよりもベーシックなAllure。バランス良し

 試乗してもっとも好印象だったのは1.6リッターの308だった。とくにパワフルなわけではない。しかしディーゼル特有の低速トルクのおかげで通常加速に不満はない。音も静かだし振動も少ない。最近のディーゼルにはこの点がとても重要だ。燃費も21.0㎞/ℓ(JC08)といい数値。グレード名のAllureは歩きとか歩調という意味らしい。ついでに触れておくと、ガソリンの308 Allureの3気筒1.2リッターターボエンジン(130馬力)の仕上がりも素晴らしい。イギリスのクルマ専門誌でエンジン・オブ・ザ・イヤーに輝いただけのことはある。
 ディーゼルに話を戻そう。308 GTには180馬力のディーゼルが搭載される。あきらかにパワーもトルクも大きい。Allureに比べれば間違いなく速い。それはいいのだけれど、Allureと比較するとバイブレーションもディーゼル音も大きいような気がした。フル加速すると、スピードの高まりとともにディーゼル音が下から響いてくる。そういった意味ではエンジンの存在感は強いが……。
 これには、1.6がSOHC、2.0がDOHCということも影響しているかもしれない。もちろん一昔前のディーゼルとは比べ物にならないくらい進化している。でも、他のメーカーの進歩も著しい。ディーゼル戦争は厳しい。
 トランスミッションはアイシンAWとの共同開発の6速AT(EAT6)だ。ハイギアード化によって燃費と静粛性を稼ぎ、ロックアップ領域を拡大してトルクコンバーターのスリップロスを低減させたという。実際、この最新ATとのマッティングは文句なくいい。
 また、両モデルともに「ドライバースポーツパック」という装備がついている。センターコンソール上のスイッチを押せばスポーツモードになり、アクセルとシフトのレスポンスやパワステの反応が変わり、エンジン音の迫力も増す。操舵力自体はAllureの方が軽くて自然だ。必要以上に重くするよりこれくらいの方がいい。この自然さが308 Allureの魅力だ。
 一方508GTは308と比べるとシャシーの古さを微妙に感じさせる。シャシーのせいか、音もディーゼル音を消し切れていない気がした。ディーゼルは少し期待外れだった。
 プジョーの最近の業績は悪くない。2016年は世界で170万台を売り4.6%のアップ。日本での販売台数は5904台、3.4%のアップ。今年の1〜7月の台数は昨年同期と比べてプラス23.5%。PSAグループとしてはシトロエンがやや苦戦しているが、C4の導入で伸びる可能性はある。ルノーも含めて、フランス車はもっと受け入れられるべきだと思う。
報告:神谷龍彦
写真:佐久間健

最終更新:2016/08/01