ルノー ルーテシア R.S.

間違いなくもっと売れていいモデルだ

神谷 龍彦



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●最初の違和感は、すぐに快感に変わった
試乗車は、日本でも新たに設定された「シャシーカップ」(現地にはあったモデル)というサーキット走行も視野に入れたグレードだ。タイヤ&ホイールは「シャシースポール」よりもワンサイズアップの18インチ。前後のバネレートはシャシースポールに比べて20%以上も高く、車高も3mm低いという。1.6Lターボの最高出力は200PS。このパワーこそ自然吸気2Lの先代よりわずかに下がったが、加速データは先代を凌ぐ。たとえば0-100km/h加速(6.7秒)は先代よりも0.2秒アップしている。
当然、乗り心地もそれなりにハードだと思っていた。実際、先代ルーテシアR.S.(ルノー・スポール)は今時珍しいほどスパルタンだった。最高出力202PSを7100rpmで、最大トルク21.9kgmを5400rpmで発生し、トランスミッションは6速MTのみ。足回りはガチガチだった。古典的な潔さである。だから、駐車場との段差を越えて路上に出る時、ン?と違和感を覚えた。想像以上に当たりがソフトだったからだ。
最初のン?を引きずったまま路上でアクセルを吹かす。走りだしてすぐに分かったのは、このR.S.が完全に新世代のクルマになったこと。ストレスフリーで6000rpm以上までよく回り適度に刺激的な音を発するエンジン、スイスイと鼻先が入ってゆく回頭性、確かなハンドリング……これまでの美点に磨きがかかった。もっとも、これだけなら驚かない。正常進化だから。驚かされたのは、乗り心地の良さだ。先代のガチガチとはまったくの別物。単に凸凹の乗り越えだけでなく、箱根の試乗コースではあらゆる路面を慎重にいなした。駆動輪だけでなく4輪で路面を丁寧に舐めて行く。
乗り心地の良さとロードホールディングは密接な関係にある。何よりもこのクルマで印象的だったのは足回りの底打ちが全然感じられないことだ。その原因はサスペンションにあるにしても、重要な要素はダンパーらしい。R.S.のフロントダンパー・ハウジング内には、フルバンプ時に働くセカンダリーダンパーが組み込まれている。セカンダリーダンパーはゴムのような反力を発生しないから、優れた収束性とキビキビしたハンドリングをもたらす。ちなみに、このダンパーはトルコのサプライヤーの製造だという。ルノーではこの足を「ラリーやF1活動でのフィードバックです」と説明する。そう語るメーカーは多いが、R.S.のように実際にそれを感じさせるクルマは少ない。

ウデに応じて走りが楽しめる3種類のモード

R.S.は、手元のスイッチでノーマル、スポーツ、レースの3種類のドライブ・モード(R.S.ドライブ)が選べる。スイッチによって変えられるのは、エンジンレスポンス、シフトチェンジ速度、パワステの重さ、ESP(横滑り防止装置)等々。シフトチェンジ速度はノーマルから順番にいうと0.20秒、0.17秒、0.15秒。このあたりのセッティングはかなりシビアで、モードによってアイドリングの回転数も変わる。横滑りを防ぐESPもその対象だ。スポーツモードではハーフスピン直前まで介入しないが、レースモードでは全く介入しない。ウデのあるドライバーには楽しそうだが、要注意モードでもある。
3ドアだけだったボディは使い勝手に勝る5ドアに変わり、トランスミッションは6速EDC(エフェシェント・デュアル・クラッチ)=ツインクラッチ2ペダルMT。つまりATモードも備えたマニュアルだが、AT免許でも乗れる。トルクが大幅に増えたことよりももっと注目したいのはその発生特性だ。最大トルクの発生回転数最近のクルマの例にもれず1750rpmと低い。それがズーッと続く。だから低回転でも安定しているし、コーナーからの脱出も速い。つまり乗りやすい。
ところで、ルーテシアのシャシーは基本的には日産ノートと共通だ。エンジンはジュークNISMOと同じらしい。それなのにどうしてこんなに差が出るのか。その原因は技術的な問題ではなくコストの掛け方だろう。ボディ剛性の違い一つをとってもそうだ。日本ではもうひとつアピール力の弱いルノーだが、このR.S.のようなクルマはもっともっと注目されていい。

<神谷 龍彦> 最終更新:2013/12/28