メルセデス・ベンツ Eクラス

‘軽快’では言い表せない深さのある操縦感。好印象のエントリーグレード。

米田 茂



※画像クリックで拡大表示します。

 これまでの蓄積と進むべき先を考え尽くし、それを可能な限り具現化した工業製品。09年5月から国内リリースされた、新型メルセデス・ベンツEクラスセダンのステアリングを握りながら、そんなことを考えていた。

 まず、乗り味には先代Eクラスからさらに厚みが増した。ボディはしっかりと外界を遮断するような剛性感があり、これをしなやか且つ正確に動くサスペンションが支えているような感覚だ。確かに現行Sクラスと比較すればシャシの動きに爽快感があるが、しかし軽快というような言葉では形容できない深さがある。このクラスのセダンを好むユーザーは、高速道路を使って中・長距離を移動することが多いが、まさにそんな使い方を想定した走り味だと思う。

 走行中の静粛性も明らかに高まった。同クラスの国産セダンに比べ、メルセデスは静粛性が今一歩というイメージがあったが、新型Eクラスはこれを完全に払拭した。エンジンは3000/3500/5500ccの3タイプを搭載するが、排気量を問わず7速ATが組み合わされた伸びやかで継ぎ目がないかのような加速感、エンジンの回転フィーリングの滑らかさなどにも進化が感じられる。精緻で洗練されたステアリングの操作感などは、現行Sクラスをも凌駕するような印象。筆者がドライブしたクルマのなかでは、ラック&ピニオン式として最高の操作感だった。

 各部を構成するハードは厳格でしっかり管理されているが、クルマ全体が奏でるハーモニーはドライバーに心地よく頼もしく、そして安心感がある。長距離を走っても疲れにくく安全に気持ちよく、そしてドライバーのあらゆる意志に的確に応えてくれること。これが高級セダンに求められる資質だとすれば、新型Eクラスの走りの質感は、まさに的を射た内容といえるだろう。

 なお、筆者の好みでは16インチタイヤを履いたエントリーグレード「E300」の穏やかな乗り味が好印象だった。ラインナップのなかでは最小の排気量となるが、加速は滑らかで、しかもひとたびアクセルを踏み込めばこのクラスのセダンに恥じない加速をみせる。新型Eクラスの購入を考えているなら「エントリーグレードなんて…」といわず、販売店に試乗車があるならステアリングを握ってみることをおすすめしたい。

 セダンに続き7月からリリースされた新型Eクラスクーペのレポートもお届けしよう。セダンよりも115mm短いホイールベースや50kgほど軽い車重、そしてクーペ用のサスペンション設定などにより、そのフットワークはさらに爽快であり、ハンドリングにもシャープさが加わる。乗り心地はセダンに比べやや硬質だが、ここまでドライブフィーリングに個性をもたせたのは正直なところ意外であり新鮮だった。美しいラインを描くサイドウインドをはじめエクステリアは流麗で大胆。こんなクーペを手に入れることができたら、毎日の生活がきっとお洒落に潤うだろう。

 価格はセダンが730万円〜1080万円、クーペは「E350」が860万円、「E550」が1095万円。

<米田 茂> 最終更新:2010/04/24