トヨタ ヤリス(1)

ヤリスが眠っていた虫を‥‥

WRC戦士のオーラを強く感じさせる。そのせいか赤をメインにしたボディカラーもよく似合う。

GRはハイブリッド。モーターの加速は想像以上に力強い。最新のヤリスクロスも気にかかる。

最近のトヨタにはデザインに凝っているモデルが多い。ヤリスのリアデザインもかなり複雑だ。



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 新世紀に突入した2000(平成12)年から連れ添ってきたTOYOTAプログレ NC300 iRを、2018年の暮れに断腸の想いで手放してしまった。その日から2年近く、SUVのRAV4以外のTOYOTA車に全く触れることがなかった。
 それが2021年次RJCカーオブザイヤーの選考対象車であるヤリスを試乗できる機会に恵まれ、久しぶりにTOYOTA車の「いま」と対話することができた。

エンジンとモーターの違いが感知できない

 ピックアップしたのは「ヤリス」「GRヤリス」「ヤリスクロス」の3タイプあるのうち、最量販モデルの「ヤリス」のハイブリッドGである。なんでもヤリスは2020年の4月、5月、7月、9月とランキング1位で、4-9月の上半期で販売台数(普通乗用車)でも1位だという。
 黄ばみ始めた神宮外苑銀杏並木の下でヤリスGRに乗る。コンパクトカーらしく小ぶりながら引き締まったボディから、WRCを戦い抜いた戦士のオーラを強く感じさせる。そのせいか赤を主調にした配色が似合っている。ルーフ、ドアミラー、フロントグリルを黒く染めた押しつがましい色合いまでが、妙に新鮮な魅力を感じたのはなぜだろう。
 さて、試乗開始。手探りでエンジンの始動を試みる。ブレーキペダルを踏み、スターターのプシュボタンを押してやり、ハイブリッドのシステムを起動した。次にゆっくりとシフトレバーをNにセットしてから、手動式のサイドブレーキを解除した。ありがたいことにTOYOTA車は、どのタイプもスイッチなどの位置や使い勝手に差異がないように配慮されていて、初めての出会いでも、TOYOTAユーザーなら違和感なく対応できるようだ。
 ひとまず銀杏並木を絵画館へ向かって直進し、噴水にぶつかったところで左回りの外苑周回路にはいる。走り出して5分。首を傾げてしまった。このスタートして加速に入るまでの上品な挙動はなんだ。どこまでが電気モーターによる走りなのか、どこで1.5ℓ3気筒のガソリンエンジンにバトンタッチされたのか、全く感知できない。まるではじめから6気筒3ℓエンジンを走らせてでもいるような快適で高品質な時間‥‥‥。                            

トヨタの本気まざまざ。クロスやGRにも試乗したい

 1周1400メートルほどの周回路を2周半してから、国立競技場の脇でヤリスを停めた。近く世界中が熱狂するはずの新しい舞台をバックにして、この新しい魅力の塊を記念撮影しておきたかった。
 ここから市街地走行に滑り込み、そこから一気に大京町を抜ける坂道を駆け上がり、四谷4丁目を右折して一気に外濠の半蔵門を目指した。と、右側を伴走するヤリスG。同じカラーリング。ホイールだけはメーカーオプションがおごられている。
 四谷3丁目、麹町を通過。ランデブーランが続く。ドライバー氏もこちらを意識している。こうしたケースはその車がヒットしている証拠で、気分もいい。
やがて半蔵門にぶつかる。当方、そこを左折して次なる撮影ポイント、千鳥ヶ淵公園に向かうため、左折のウインカーを出し、左端車線に移る。その動きを確認したのだろう、ランデブーランの相棒はハザートランプを点滅させた後、ダッシュをしながら右折ラインへと進入していった。
 定刻5分前、次の会員試乗者にヤリスをバトンタッチしながら、心に決めたことがある。ヤリスには6速のMT車があって、これが絶品のお薦めマシンだという。加えてスポーツマインドを追求したGRヤリス、SUVタイプのヤリスクロスを順次、味見して行きたいな、と。TOYOTAの本気が窺えた。
八十路半ばにして、またムズムズと蠢くものがある。

報告:正岡貞雄
写真:正岡貞雄

最終更新:2020/12/19