BMW 3シリーズ(2)

BMWジャパンは単なるインポーターにあらず

益々磨きのかかった先進性とスポーツライクな操縦性。ひときわ魅力的な1台だ。

どこもかしこもSUVを追うなかでセダンへのこだわりを捨てない。伝統かプライドか。

機能革命。世代が変わるたびにスイッチが減ってゆく。“すっきり”の良さはあるけど。


新機能のひとつ「リバースアシスト」。操舵は車に任せて来た道を50mまで自動で戻る。

今回追加された2リッター直4ディーゼル(320d xDrive)。扱いやすい190psだ。

試乗車のタイヤは225/40R19。ブレーキはM Sport用のスペシャル。制動は俊足の鍵。


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 2018年10月のパリサロンで発表された新型BMW3シリーズは1975年に登場して以来、40年以上アッパーミドルクラスのスポーツサルーンとして多くの人々から支持されてきた。言うまでもなく日本でも人気が高くBMWを代表する1台と言えるだろう。
 今回のモデルチェンジのハイライトは、より洗練された内外装デザイン、最先端の安全機能や運転支援システムの搭載、環境性能を重視した軽量化。もちろんBMWが得意とする軽快なハンドリング性能をはじめとした走行性能の向上だ。
 日本仕様は、まず2リッターの4気筒ガソリンターボの320iと高出力版330iの2モデルでスタート。大きなポイントは日本のマーケット事情を反映した320iの設定だ。もともと本国の初期生産には設定のないエンジンで完全な日本専用。BMWジャパンが単なるインポーターではなく、本国と深い信頼関係があることがわかる。
 さらに本国でのラインナップはどんどん拡大している。ディーゼルは現時点で320d加えて、318dや330dなどがあり、プラグインハイブリッドの330e、高性能モデルとして直列6気筒ガソリンターボのM340i xDriveも登場している。日本仕様も新たに320dと330e、M340i xDriveが追加導入されている。このなかから、今回の試乗会で用意されたのは、330i M Sportと320d xDrive M Sportだった。

太い低速トルクのおかげでディーゼルも快適

 ボディーサイズは全長×全幅×全高=4715×1825×1430?と、従来モデルより全長が70?、全幅が25?拡大。ホイールベースも2850?と、40?長くなっている。
 3シリーズということでサイズアップは気になるところだが、走り出してもまったく違和感はなく、むしろグレード感が増していることが大きな魅力となる。330iで258ps/400Nm、320dで190ps/400Nmのパワー&トルクもまったく不満はない。もちろん330iのほうがパワフルではあるが、320dもディーゼル特有の太い低速トルクによって気持ちよく走ることができる。
 何よりの魅力は、3シリーズにふさわしい軽快かつスポーティなハンドリングであろう。とくに19インチホイール、連続可変ダンパー「アダプティブMサスペンション」や電子制御LSD「Mスポーツディファレンシャル」などを装備する330iの走行性能はスポーツライクで魅力的だ。一方、新世代のクリーンディーゼルと4輪駆動システムを組み合わせた320dも3シリーズらしい走行性能を提供してくれる。おそらくこれまでの3シリーズと同様、ディーゼルが主力になるだろうが、期待を裏切ることはない。

来た道を50mバック。進化した音声会話。先進性もたっぷり

 最先端の運転支援システムやハンズ・オフ機能付き渋滞支援システムに関しては様々な操作を試してみたが、他社に対してアドバンテージは大きく不安を感じることはなく安心してクルマに任すことができる。特に注目したいのは、直前に前進したルートを最大50mまで記憶し、同じ軌跡をバックで正確に戻ることのできる「リバースアシスト」機能であろう。例えば行き止まりなど、どうしても後退を余儀なくされるような場合でも気を使う必要はない。
 このところ、注目を集めるインテリジェント・パーソナル・アシストについても先進的だ。AI技術を使って音声会話だけで、車両操作や情報アクセスなどを可能にするこのシステムの他社との違いは、ドライバーがシステムを自由にネーミングすることが可能な点だ。たとえば「OK、BMW」だけでなく、「OK、3シリーズ」など任意の設定が可能となる。
 こうした多くの先進性と3シリーズらしい気持ちの良いスポーツライクなドライビングフィールを合わせ持つ新型3シリーズは、アッパーミドルクラス・サルーンのなかでひと際魅力的な1台と言えよう。

報告:中川和昌
写真:佐久間健 怒谷彰久

最終更新:2019/10/16