アウディRS 5クーペ TT RS A8
Audi RS 5 Coupe/TT RS /A8

速くて静か。一歩ずつ理想へ、ニュー・アウディ

0-100km/h加速はRS 5クーペ(写真)が3.9秒、TT RSがS3.7秒。並のクーペではない。

エンジンはRS5クーペが2.9ℓ縦置きV6(450ps)、TT RSが2.5ℓ横置き直5(400ps)。

初代に比べれば大きくなったが素晴らしく俊足で快適。ボディ同様大人になったとみるべ きか。


まさにスポーツカーらしいシート。アルミ構造(ASF)はそもそもTTのために開発された。

メーターはナビも表示できる12.3インチAudiバーチャルコクピット。これも慣れると楽しい。

A8は最先端の韋駄天高級車。速くて静か。4輪操舵を選べば最小回転半径は50cm短縮可能。


※画像クリックで拡大表示します。

 珍しくアウディの3モデルにまとめて乗れる機会があった、RS 5クーペ、TT RS、そして軽井沢で試乗してから間もないA8だ。試乗当日はいかにも「クワトロ(4WD)を試してみなさい!」というような雨模様。もっともあまり滑りを感じさせないのがクワトロの美点のひとつなのだが……。
まずRS 5とTT RS。ともにボディは真紅でクーペ。遠目には似たように見える。RS5のサイズは全長4715?×全幅1860?(スタンダードより15?広い)。決して小さいくはない。
 これに対してTT RSは4190×1830?。全長はRS5クーペの方が5cm以上も長いが全幅は同じようなもの。最近は幅の広いモデルが多くなったから1800?を超す幅にもかなり慣れた。ホイールベースはRS5が2765?、TT RSが2505?である。もちろんRS5クーペの方が長い。
 プラットフォームはRS 5がMLB、TT RSがMQBだ。どちらもVWと共通のモジュラー・タイプで、アウディはA4以上にMLBを採用している。逆に比較的コンパクトなA3やTTRSにMQB を選んでいる。VWはゴルフやパサートにもMQBを使う。基本的にMLBは縦置きエンジン用、MQBは横置き用である。

V6も直5も。パワーもトルクも際限なく上昇
 エンジンはRS 5が2.9ℓ縦置きV6ターボで331KW(450ps)&600Nm、TT RSが2.5ℓ横置き直5ターボで294kW(400ps)&480Nmのパフォーマンス。先代RS5は自然吸気の4.2ℓV8(450ps)、最大トルクは430Nmだったが、新RS5はトルクの絶対値も大幅に増えると同時にその発生回転数が1900〜5000rpmと大きく広がった。これはTT RSにも言える。つまり力強くて扱いやす。
 ドライブしだしてまず気づいたのは加速がスムーズでしかも車内が静かなことだ。もう一つ感じたのは公道でのフルスロットルには勇気がいるということ(雨でなくてもだ)。言葉を変えれば底知れぬパワーとトルクがある。
 その一方、最大トルクレンジが両車ともすこぶる広いから、あるレベルまでは運転自体はやさしい。ファミリーカーと変わらないくらいだ。しかしひとたびフルスロットルにすれば悪魔のように大胆に変身する。それが約7000rpmまでストレートに続く。
 いたって平和な公道走行だけでなくスポツライクな、いやスポーツそのもののワインディング走行も軽くこなす。どこからでもエンジンはアクセルワークについてくる。日常のすぐ隣に非日常がある。実はとんでもないモンスターなのにその影を隠すのがとても上手い。
 ちなみに0-100km/h加速はRS 5が3.9秒、TT RSが3.7秒だ。最高出力の大きなRS 5の方が遅いのは約300kg重いせいだろう。いずれにしても一般車としては驚くべき数値だ。間違いなくスポーツカーの域に入る。アウディS5(4.6秒)やポルシェのカイエンなどよりもずっと速いのだから。

取り上げるのはビッグチェンジだけでいいのか
 もちろん速いだけならほかにクルマはいくつもある。しかし、この2台は乗り心地もいい。タイヤはRS 5が275/30ZR20、TT RSが245/35R19(275/30ZR20はオプション)。これまでRSというと確かに速いけどその分粗々しい印象があったが、今度のRSは違う。このタイヤサイズでこの乗り心地!これは凄い。
 ステアリング・フィールも実にしっかりしている。いわゆるオン・ザ・レールというやつだ。それでもコーナーでのニュートラル感はTT RSの方が勝る。そうそう、俊敏性と軽快さを増したことによってRS TTボディの大きさを普通のTTよりも感じさせない。
 価格はクーペが1257万円、TT RSが989万円、TT RSロードスターが1005万円だ。ちょっと高くなり過ぎたきらいあるけどこの性能は魅力的だ。
 A8では、軽井沢では確かめられなかったV8搭載車の加速性能と自動運転をチェックした。460psのV8車はさすがに速い。あっという間に時速約100マイル(だと思う)に達する。しかも素晴らしく静かである。この速度域でも隣との会話に不都合は生じない。全体的にいい意味での曖昧さを残しているのも高級車らしくていい。
 自動運転ではレーンキープのためのステアリング修正が強すぎる。これからは自動運転サポートがあるかないかではなくていかに扱いやすく、いかに自然な動きをするかが重要になる。その意味では、最先端であってもまだ進化途中だというのが正直な感想だ。広報の方はちょっと不満そうだったがぼくはそういう印象を持った。
 「輸入車は見えないところを細かく変えますからね」。よく人に言ってきた。しかし自分がそれに対応してきたかというといたって怪しい。MLBやMQBというプラットフォームの問題もそうだ。TTは2015年に試乗したから分かっているつもりだったが今回の試乗でその進化ぶりに驚かされた。ビッグチェンジでないと試乗しない──このあたり、けっこうマスコミの弱点かもしれない。
報告:神谷龍彦
撮影:佐久間健

最終更新:2019/02/16