三菱 アウトランダー PHEV
MITSUBISHI OUTLANDER PHEV

触れた途端に買い替えたくなる!?

う〜ん、この仕上がり──欠点を探すのが難しい。カヤバのノーマルショックもSエディションビルシュタインのそれも個性的かつ高性能。

モーターならではのスムーズさは感激もの。操舵始めのフィーリングがとっても豊かだし、加速させれば異次元ともいえる接地感を味わえる。

ボディ構造に溶接剤を追加し、ショックアブソーバーをサイズアップ、ステアリングギア比も速めた。これらが走りの質感に活きている。


インテリアにもかなり手が入った。シートやスイッチだけでなくPHEVパワーメーターも刷新。EVやエンジンの出力が表示されるようになった。

基本的には前後のモーターで駆動。リアモーターの出力は10kW向上。エンジン排気量は400ccアップ。充電容量も増えてEV航続距離は65kmに。

前後右側のブルーがモーター。中央のシルバーに見えるのがバッテリー。リアMCUが後輪を、フロントMCUがPHEVと4WDを統合制御する。


※画像クリックで拡大表示します。

 2013年、三菱アウトランダーの2世代目モデルで登場したアウトランダーPHEV。前後それぞれに配置されたツインモーターをベースとしたパワーユニットを搭載し、モータードライブがもたらす愉しさや環境性能、さらにはSUVたる機動性など、まさに唯一無二のモデルとして多くのファンを惹きつけてきた。その後、フェイスリフト、ビルシュタインダンパーを採用したSエディションなど、改良と新たな提案とを行ってきたが、今年8月、PHEVシステムを一新、S-AWCを大幅に進化、さらには質感とユーティリティ性能までアップさせた、2019年モデルが登場した。
 
モーターはもちろん、エンジンも改良
 要となるPHEVシステムについては、モータードライブの走りをさらに際立たせ、EV走行ならではの爽快感を、ハイブリッド走行領域まで広げることを狙って、ほぼ一新とも言えるレベルでの改良が行われた。メインパワーユニットとなるモーターは、リアモーターの出力をプラス10kWの70kWへと向上させ、主に充電要員、時に駆動要員として使われるガソリンエンジンは、排気量を2.0Lから2.4Lへとアップさせた。また、バッテリー出力を10%アップさせて、エンジンが始動しないで済むようにし、充電容量を15%アップさせることでEV航続距離を60kmから65kmへと伸ばし、さらにはEV走行時の最高速度を125km/hから135km/hへとアップさせるなど、改良ポイントはここで書き切れないほど。 
 そのほか、走りの質感を高めるために、ボディ構造用接着剤の追加、ダンパーサイズアップ、ステアリングギア比のクイック化を行い、デザインの質感をアップさせるためにエクステリアデザインにも手を加え、さらには居心地の良さを高めるためにシートやインパネといった部分にまで、改良が施されている。
 その乗り味は、三菱の狙いどおり、いや、それ以上を感じた。アクセルペダルに少し力を伝えただけでタイヤの接地感が豊かになったことが伝わり、即座にモータードライブならではのスムーズさは、これまでのアウトランダーPHEVよりも格段に、きめ細やかになったという印象を受けた。
 これ、クルマを加速させる以前の、僅かな、まさに瞬間での話だ。最初の交差点を曲がろうとステアリングを操舵すると、切りはじめのフィーリングが実に豊かで、そこにすら気持ちよさを発見した。加速させてみれば、先に感じた、接地感は変わることなく、タイヤが路面をトレースしている様に心地よさを感じた。
 これほどまでに路面インフォメーションが豊かになったのは、やはりシャシーの改良、つまり、ダンパーのサイズ径アップとモーター制御のブラッシュアップによるところが大きい。そして、エンジンが始動しようともその存在を邪魔に思うことなく、それどころか静かになったとはっきりと感じ取れるほどの静粛性を得ていたことにも驚きを覚えた。そう、安心感がもたらす快適性をさらに引き上げた、そんな印象だ。
 高速走行では、直進安定性がすこぶる高く、また、サスペンションの動きにさらなるしなやかさが現れ、乗り心地はこれぞ快適といわんばかり。個人的に特に印象深かったのは、リバウンド時の減衰特性で、すーっと減衰するフィーリングはとにかく気持ちいいと感じた。

スノーモードとスポーツモードを追加
 このアウトランダーPHEV、S-AWCは、これまでのノーマル、ロックの2モードに加えて、レスポンスをさらに高めてくれるスポーツ、スノードライブでの安心感を高めてくれるスノーを追加し、スノードライブにおける安心感や、スポーツ走行における愉しさも大きくブラッシュアップしている。実際、雪道での試乗ではステアリングフィールに明確さが加わり、クルマの挙動をわかりやすく伝えてくるため、安心かつ愉しいという不可思議を感じるほどだった。
 そして、サーキット走行でもただ速いだけではなく、トップスピードへ到達するまでの演出(ガソリンエンジンを高回転へと誘う音やパワーフィール)が気持ちを盛り上げてくれるし、荷重移動を意識しながらのコーナリングでは、速さとは比例しない、愉しさたる心地よさが生まれてくる。
 と、ここまでベタ褒めだが、このインプレッションのすべてはカヤバのダンパーを採用したレギュラーモデルでの話。ビルシュタインダンパーを組み合わせたSエディションでは、快適性は少々落ちるが、操縦性が明確になった分、操る愉しさが大きくプラスされている。
 いずれにしても、最新型アウトランダーPHEVは、買いであることは間違いない。そして、まだまだ自分のアウトランダーPHEVに乗るんだと思っている旧オーナーは、三菱のディーラーへは足を運ばないほうがいいかもしれない。それは、見た途端、触れた途端、そして、乗った途端に買い換えを即座に決意してしまう恐れがあるからだ。
報告:吉田直志
写真:佐久間健

最終更新:2018/10/12