スズキ ジムニー/ジムニーシエラ(2)
SUZUKI JIMNY/JIMNY SIERRA

新フレームのしっかり感、ゴムマウントの優しい乗り心地

オフロードでの制覇性も大きく向上した。新ラダーフレームのおかげでしっかり感も高い。

何かとSUVモデルが増える中でスズキらしいクロスカントリーのグレードアップ。歓迎したい。

ゴムマウントの採用で乗り心地も向上、ステアリングダンパーによって高速操安性を高めた。


開口部を大きくし、リアシートの背と荷室を樹脂化。汚れが少なく荷物の出し入れが便利になった。

これがフロントのアプローチアングルで41°。リアのデパーチャーアングルは51°。本格的だ。

シエラの1.5Lエンジン。とくにパワフルというわけではないが騒音、振動面でも不満は少ない。


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 軽自動車の本格クロスカントリーモデルとして高い人気を誇るジムニーが、何と20年ぶりにフルモデルチェンジされた。1970年の登場以来、現在では全世界194の国・地域で販売されている。もちろん海外向けはワイドボディに排気量をアップしたジムニーシエラが中心だが、グローバルに展開されているモデルだ。
 ジムニーのエクステリアは先代よりずいぶん存在感が増した印象だ。直線を多用したスクエアなフォルムは塊感があり、クロスカントリーモデルらしい力強さが感じられる。特にリヤサイドウインドーあたりのデザインは、メルセデス・ベンツのGクラスに似た雰囲気に仕上がっている。
 走り出すとすぐにボディ、いやフレームがしっかりしている感じが伝わってくる。新開発ラダーフレームは、新たにセンター部分にX(エックス)メンバーを装備しているのが特徴。さらにフレームの前後にクロスメンバーを加えたことで、先代モデルと比べねじり剛性を約1.5倍に向上させている。フレームがさらにしっかりしたことで、軽量ながらもしっかり感があるライドフィールを実現した。
 このしっかり感はボディとフレームをつなぐ、ボディマウントゴムもいい働きをしている。マウントは力が掛かる方向によって剛性を変える設計のため、優しい乗り心地を実現しながらフレーム車とは思えない一体感も実現している。先代は一般路でも常に路面からの影響で揺れが続き、ステアリングも常に修正をしなければならなかったが、新型は直進安定性が一気に向上してリラックスして走れるようになった。

高速での操安性をグッと増したステアリングダンパー

 これは高速域も同様で、先代はしっかりステアリングを握っていないといけなかったが、新型はステアリングダンパーを装着したことが効果をもたらしているようで、一般道と同様に軽くステアリングを握っているだけで直進性が保たれるようになった。前後3リンクリジッドアクスルサスペンションは先代と変わらないが、路面のアンジュレーションによって方向が乱されるようなことが少なくなり、先代とは比べ物にならないくらい優れた操縦安定性を実現している。
 このハンドリングと乗り心地を実現したことでジムニーファンだけではなく、タウンユースとして使う人にもおススメできるようになった。もちろんハイトワゴンのように優しい乗り心地ではないが、街乗りでも許容できる範囲になった。それと室内騒音が大幅に低くなったのもうれしいポイント。パワートレーン系のノイズが少し感じられるが、これはクロカン性能のためと割り切ることができる。

トランスファーの切り替えをレバー式に戻したのは大正解

 FRレイアウトと機械式副変速機付きパートタイム4WDがジムニーの伝統。新型はトランスファーの切り替えを従来のボタン式から、クラシカルなレバー式に戻している。これは大正解。2Hから4H、4Lへのレバーでの切り替えタイミングは、路面状況をもう一度冷静に判断するための゛いい間゛を作ることができる。なんでもオートにすることがいいわけではないし、レバーを操作するという作業もマニアックで楽しい。
 操作系はレバーに変更して、ちょっとレトロ感覚にしたが、走破性向上のために先進のメカニズムを採用。それが全車に装備したブレーキLSDトラクションコントロールで、最近のSUVの多くに採用されている。4HではブレーキLSDトラクションコントロールは、通常のトラクションコントロールと同様にスリップしたタイヤにブレーキを掛けて駆動力を確保する。
 4L時に空転するタイヤにブレーキを掛けるのは同じだが、脱出力を確保するためにエンジンの出力制限はしない。ハードな走りだとブレーキがフェードする可能性があるため、プログラムでフェードを予測してシステム解除する。ブレーキLSDトラクションコントロールを採用したことで走破性が向上したことは容易に分かる。
 意外に出来がよかったのがシエラだ。1.5Lの新開発K15B型エンジンを搭載し、ワイドフェンダーを装着。フェンダーはもう少し小ぶりのほうが似合う気がするが、ジムニー以上にスタイリッシュに見える。街なかでの走りも軽快で、ジムニーよりもタウンユースに適している印象。ただし、トランスファーからのノイズが大きいのが残念な点だ。市街地では60km/hくらいまでノイズが耳に届き、それ以上だとロードノイズに掻き消されてしまうから問題ない。
 安全面でも大きな進化があった。単眼カメラと赤外線レーザーレーダーを組み合わせた衝突被害軽減ブレーキのデュアルセンサーブレーキサポートや誤発進抑制機能、車線逸脱警報機能、ふらつき警報機能、ハイビームアシスト、先行車発進お知らせ機能を搭載。また、フロントシートSRSサイドエアバッグとSRSカーテンエアバッグは全車に標準装備。スズキはなぜかカーテンエアバッグを嫌っているようで装備しないモデルが多いが、クロスカントリーモデルでも標準化したのはとてもいいことだ。
報告:丸山誠
写真:佐久間健 スズキ

最終更新:2018/08/15