ルノートゥインゴGT
Renault TWINGO GT

軽快な走りでスポーツ走行が楽しめるRR車

コンパクトなボディに3気筒0.9Lターボエンジンを搭載したGTは、街中や郊外をスポーティに走れる。

今では少数派のRR形式。搭載されたエンジンはノーマルより16kW(19PS)出力がアップしている。

足回りではダンパーやアンチロールバーは当然強化されている。ESCの制御も介入をあえて遅らせている。


ホイールハウス内にあったエアインテークは左フェンダーに変更。フレッシュエアで出力をアップする。

エキゾースト系もチューニングされている。リヤにはクロームデュアルエキゾーストパイプが見える。

タコメーターがないのが残念。カーナビの位置は低すぎ。サイドブレーキは軽く引きやすい。


※画像クリックで拡大表示します。

 トゥインゴGTのいわゆる試乗インプレッションはインターネット上ではすでの多くの方々が報告しているので、私は少し見方を変えた紹介解説をしてみる。
 まず、このエンジンは3気筒897ccにターボチャージャーを付けたエンジンで、最初はルーテシアに搭載し、その後トゥインゴに搭載された。今回のトゥインゴGTに搭載するに当たってチューニングが施され、64kW(90PS)だった出力は80kW(109PS)にアップされている。
 そのチューニングをルノーの発表から見ていくと、まず左フェンダーに設けられたサイドエアインテークが挙げられる。トゥインゴの他のモデルはホイールアーチ上部にエアインテークがあるが、GTでは左フェンダーの高い位置に変更した。これにより、空気の温度が12%低下し、吸気流量が23%向上したという。ホントにそんなに向上するのか、少し?マークが付くが……。というのはエンジンの出力というのはシリンダーに取り込む空気(酸素)の量に比例するので、これだけで110PSが出てしまう計算になるからだ。
 まあ、細かい話はさておき他の変更を記すと、エキゾーストシステムにクロームデュアルエキゾーストパイプを装着し、排気流の見直しと排気圧の改善を図っている。また、エンジンのコンピューター制御のマッピングも変更してトルク、出力のアップに対応している。また、出力アップに伴って燃料の供給量を増やすため、燃料ポンプを専用設計とし、冷却性能を向上させるためウォーターポンプも同様に専用設計としている。
 最高出力を発揮する回転数は5750rpmで、従来より500rpm高くなっている。それだけ回るエンジンになっているのだが、最大トルクの発生回転数は2000rpmで、これは従来より500rpm低くなっている。低速トルクがあることを示しており、扱いやすくしているといえる。
 ところでこのエンジン、実は直噴(筒内直接噴射)ではない。いわゆる「ダウンサイジングエンジン」というのは「直噴+ターボ」が原則。たとえばスズキは同じ3気筒で1.0Lの直噴ターボエンジンを出しているが、それより100cc小さいこのH4B型エンジンはポート噴射である。
 軽自動車用エンジンではコストの問題もあってターボ付きも直噴ではないが、このエンジンもそちらに近いともいえる。どこに違いが出るかというと圧縮比だ。ポート噴射ではノッキングの発生が起きやすいので、圧縮比はあまり高められない。H4B型はハイオク仕様だが9.5、スズキの1.0Lはレギュラー仕様だが10.0の圧縮比になっている。H4Bエンジンも直噴にしたらもっと出力が出せるといえるわけだ。
運動特性に違和感なく楽しくドライビングできる
 3代目のトゥインゴはリヤエンジンリヤドライブ、いわゆるRRの形式。最近は少数派のドライブ形式だが、かつてルノー4CVを日野自動車がノックダウン生産していたので、ルノーのRR車は日本でもかなり走っていた。私もかなり乗ったが、軽快によく走るクルマだったのを覚えている。
今回試乗したのはトゥインゴGT。トランスミッションは5MTとEDCがある。EDC(エフィシェント・デュアル・クラッチ)というのは要するにMTをデュアルクラッチを使って自動化したもので、一般的にはDCTと呼ばれているものだ。私が乗ったのは5MTのほうである。
 といっても、試乗は都内を40分ほど走っただけのちょい乗りであり、詳しい内容まで報告できないが、まず駆動方式の問題。一般にRRはリヤヘビーでオーバーステアが出やすいとかいわれるが、このトゥインゴについては重量配分も極端なこともなく(47/53)、違和感はほとんどない。5MT車の車重は1010kgと重くないので、動力性能もそこそこ。足回りも強化されており、スポーティさは味わえる。
 ただ、ヒールアンドトーがやりづらい。ブレーキが柔らかくよく効き過ぎるからだ。競技のときのようにフルブレーキングでヒールアンドトーを使うのならよいだろうが、一般道の小さいコーナーを回るために軽くヒールアンドトーを使おうとしても、ブレーキコントロールが微妙すぎてかかとでのアクセル操作が事実上できない。このクルマに限らず、最近はヨーロッパ車も全体的にブレーキが軟らかくなりすぎていると、私は感じている。
 パーキング用のサイドブレーキは初期が軽くタッチもよい。ドラム式なのでよく効きそうだ。
 全体を通して、乗って楽しいクルマであるのは確か。価格の229万円もリーズナブルといえよう。本格的な競技への挑戦ではなく、ミニサーキットでのサーキット走行会やジムカーナ練習会などに持って行ったら、楽しめるクルマだと思った。
報告:飯塚昭三
写真:飯塚昭三、ルノー・ジャポン

最終更新:2018/02/14