「赤信号を見たらすぐ減速」で燃費は改善するか?

丸茂 喜高

 エコドライブ普及推進協議会が推奨している「エコドライブ10のすすめ」では,前方が赤信号で停止することがわかったら,早めにアクセルオフを行い、惰性走行をして燃費を改善させる方法が挙げられている。また、発進時にアクセルを一気に踏み込まず、ゆっくりと加速することも効果的である。いずれの方策も燃費改善の一助にはなると考えられるが、燃料消費が著しいのは、停止状態から発進・加速する場面であり、その状況を回避することができれば、燃費はさらに改善することが期待される。

 信号交差点を例に取ると、一番理想的なのは、赤信号から青信号に切り替わるのと同時に(同時が危険な場合には、青信号に切り替わってから若干の余裕をもって)車両が交差点に到達することであるが、それを実現するためには、二つの時間が鍵を握る。すなわち、青信号になるまでの時間(赤信号の残り時間)と、交差点に到達するまでの時間である。減速が必要な状況は、前者よりも後者が短い場合であり、後者を長くするためには減速をいち早く行う必要がある。減速が遅くなると、その分だけ速度を維持したまま交差点に接近してしまうので、要求される減速量も大きくなる。

 例えば、青信号になるまで20秒で、交差点に到達するまで10秒であったとしよう。まったく減速しないと仮定すると、交差点に到達した時点で青信号までは、まだ10秒あることになる。同じ前提条件で、今度は一気に速度が(減速度無限大で)半減したとしよう。すると、交差点に到達するまでの時間は倍になり、20秒かかることになる。よって、この状況では、交差点に到達したと同時に青信号になることになる。速度が半減ではなく、3分の1まで低下したとすると、交差点までに要する時間は30秒になり、青信号になっても交差点には到達しておらず、加速しない限り交差点まではさらに10秒の時間を要することになる。

 前述の状況を10秒程さかのぼってみよう。青信号になるまで30秒で、交差点まで20秒だったとすると、このときの時間の差は同様に10秒であるが、速度は半分まで低下させる必要はなく、3分の2まででよい。速度が3分の2になると、交差点までに要する時間は20秒から1.5(2分の3)倍した30秒になり、交差点に到達するのと同時に青信号になる。このように、青信号までの時間と交差点までの時間の差が同じであっても、より早く減速を開始することで、速度の低下を抑えることが可能になる。速度低下が軽減できれば、速度回復のために必要な加速量も減らせるため、燃費がより改善することになる。

 過ぎたるは猶及ばざるが如し。減速が早すぎる、または減速しすぎることにより、自車が交差点に到達するはるか手前で信号が青になった場合、それは不要な減速と言える。赤信号で完全に停止するよりはましだが、そこまで減速する必要がなかっただけでなく、後続車両にも影響を及ぼし、青信号中に通過できる台数も減ってしまう。不要な速度低下により、手前の交差点を通過する台数にも影響を及ぼすことが考えられるため、自車だけではなく交通流全体での燃費を考慮する必要がある。

 信号が切り替わるタイミングの取得は、ドライバや車両単体ではどうすることもできず、高度化光ビーコンなどを用いた路車間通信技術の利用が必須である。このような技術を用いることで、燃費の改善ばかりでなく、黄信号遭遇時の停止・通過の判断の迷いも抑制することが可能となる。なお、交差点に信号待ち車両が存在したり、自車の前を先行車が走行したりする場合には、速度をさらに低下させる必要があり、そのためにもより一層早い減速が求められる。今度、赤信号へアプローチする際、アクセルを踏み続けずに、気持ち早めに減速してみてはいかがだろうか(後方からの車両に煽られないことを願うばかりである)。

<参考文献>
1.エコドライブ普及推進協議会:エコドライブ10のすすめ
http://www.ecodrive.jp/eco_10.html

2.道路交通情報通信システムセンター:信号情報活用運転支援システム(TSPS)
http://www.vics.or.jp/know/service/tsps.html

3.丸茂喜高、中野尭、中西智浩、道辻洋平:路面への情報呈示による信号交差点でのドライバ判断支援システム、日本機械学会論文集、Vol. 82、No. 843 (2016)
4.T. Nakanishi K. Yamazaki Y. Marumo and H. Suzuki: Driver Assistance System to Prevent Unnecessary Deceleration at Signalized Intersection Using signal Information,Proceedings of the 4th International Symposium on Future Active Safety Technology
Towards zero traffic accidents (FAST-zero '17) (2017).
5.丸茂喜高、中西智浩、山光輝、鈴木宏典:信号交差点における停止車両を考慮した不要減速回避支援システム、日本大学生産工学部研究報告A、Vol. 51、No. 1、pp.19-23 (2018)
報告:丸茂喜高


最終更新日:2018/08/19