時代に取残されそうな人の独言

音田 稔

 試乗前に「エンジンが掛っています」と係の人から声を掛けられた。アイドリング音が静かで誤って始動キーを回さないように注意したらしい。

 「エンジン音を聞かせたかった」と大暴走した新聞記事もある。このように各社とも騒音対策に力を入れた結果、静かな車が多い。

 しかし、エンジン音を聞いて車の状態を知り、限界を感じてアクセルを緩めた感覚による運転の時代は終わったのか。技術の向上が人間の感覚を鈍くし、何でも警報音に頼らなければならない。自分の感覚で走りを感じ、快適なエンジン音を聞いて運転したいと思うのは時代に逆行しているのであろうか。

 次はタイヤ。操安性の向上を重視してその限界特性は一般ドライバーの運転技量には程遠いレベルの高性能を持っている。

 以前は簡単にタイヤが鳴き、滑り出して旋回の限界を感じとることができた。最近のタイヤは少々のカーブやハンドル操作では無反応で何も注意信号を出さない。

 限界性能を高くするのは良い。しかしタイヤの鳴きも一つの警告音として少し位は残しておくのはいかがであろうか。

 省エネルギーの時代、折角軽量化したボディを作りながら、ドライバーに少しばかり楽をさせるために重いモーターをいくつも載せ車両を重くしている。

 便利、快適はエネルギーを無駄使いすると判っている。少しはドライバーにもエネルギーを使わせるような考え方は出来ないものか。


最終更新日:2010/04/16