2010年次活動報告

平成22年度 第5回勉強会

1.テーマ:

リチウムイオンバッテリー勉強会

2.日 時:

平成23年2月15日(火)  第1部=13:00〜14:45 
             第2部=14:00〜15:00

当日は会場の変更等があり、第1部を13:00に開始した。

定刻の14:00に参集された出席者に第2部の時間を設けた。

3.場 所:

パンパシフィック横浜ベイホテル東急 会議室

4.出席者:

日産自動車株式会社 EVエネルギー開発部
エキスパートリーダー  宮本 丈司 氏

 

5.参加者:

36名[第1部=34名、第2部=2名]

6.内 容:

今回の勉強会は、かねてより日産自動車・広報部にリチウムイオンバッテリーについての勉強会を依頼していたところ、快諾を得て実現の運びとなった。当日は新型「モコ」の発表会がグローバル本社のギャラリーで開催されたが、発表会終了後、勉強会の会場を近隣のホテルに移し、昼食を挟んで行われた。

内容は

(1)リチウムイオンバッテリーの原理

(2)日産自動車におけるリチウムイオンバッテリーの開発の歴史

(3)日産EV「LEAF」に搭載したバッテリーについて

(4)充電とインフラについて――の項目に沿ってパワーポイントと資料を用いて説明があった。以下、その概要を断片的に列記する。なお、当日資料として配布された図表等は、事務局に保存されている。

 

7.概要:

リチウムイオンバッテリーの原理
(1)世の中にある電池の種類と適用例
一次電池(充電できないタイプ=乾電池)
・アルカリ-マンガン電池=生活機器用 等
・リチウム金属電池=時計、計算機用 等


二次電池(繰り返し充放電して使うタイプ)
・鉛酸電池=自動車用電源
・ニカド電池=生活家電(家庭用コードレス電話 等)
・ニッケル水素電池=生活家電(電動シェーバー 等)、電動車両(HEV等)
・リチウムイオン電池=民生機器(携帯電話/ノートPC等)、電動車両(HEV、EV等)


現在は大きい電力の放充電が可能となるリチウムイオン電池が注目されている。


(2)主要なバッテリー(電池)性能
電池の単位の最小のもの(セル)は、容量(エネルギー:Wh)を「どれだけ蓄えられるか」と、出力(パワー:W)を「どれだけ強い力を出せるか」によって、性能が語られる。


より小さい体積・重量で成立させたものが「優れたセル」といえる。


セルの性能は、容量密度(Wh/L、Wh/kg)と出力密度(W/L、W/kg)で語られる。


(3)自動車用リチウムイオン電池の用途と性能
HEV用は出力密度(どれだけ力強いか=加速)の大きいもの、EV用はエネルギー密度(航続距離)の大きいものが求められる。


例えば、HEV用は出力密度でEV用の3倍ぐらい大きい。一方、EV用はエネルギー密度でHEV用の6〜7倍ぐらい大きい。

 

日産自動車におけるリチウムイオンバッテリーの開発の歴史
日産では1992年からリチウムイオン電池にフォーカスしたEVを開発してきた。


バッテリーとしては当初、コバルト系であったが、1997〜8年頃からマンガン系となった(安価な材料が使える)。形状も当初は円筒形であったものが、2000年過ぎからラミネート形(平板形)になった。


リチウムイオン電池を初めて搭載したEV&HEVは、1994〜5年頃にプレーリーEV、Altra EV、ハイパーミニ、2000年代に入ってティーノHEV、燃料電池車の03FCV、05FCVなどがある。2010年にはリーフ(EV)、フーガ(HEV)を開発している。

 

日産EV「LEAF」に搭載したバッテリーについて
(1)日産の最新のEVはリーフ、HEVはフーガである。いずれもバッテリーはラミネートタイプの構造だが、その性能などの仕様は異なる。
EV用
・セルの容量:33Ah、モジュールの構成セル数:4セルで2並列-2直列構成、パック構成:48モジュール(直列)、総エネルギー:24kWh、最大出力:90kW以上、出力/エネルギーレシオ:≒4。


HEV用 ・セルの容量:4Ah、モジュールの構成:8セルで8直列構成、パック構成:12モジュール(直列)、総エネルギー:1.4kWh、最大出力:50kW以上、出力/エネルギーレシオ:≒36


負極(−極)の組成がEV用はグラファイト、HEV用はハードカーボンと異なっているが、可能な限り材料および部品の共通化を図ることで、量のシナジー効果によるコストダウンを最大限に考えている。


(2)リーフ用リチウムイオンバッテリーのサイズイメージは…
リーフ用バッテリーパックは24kWh。これは携帯電話用バッテリーパックの8000個分。又は、一般家庭の平均消費電力量の2.5日分に相当する。


(3)トータル性能に優れた日産のリチウムイオンバッテリー
マンガン系正極材料とラミネート構造の技術をベースに、性能・耐久性・信頼性・コストなど自動車に求められる用件を高次元でバランスさせている。正極材にマンガン酸リチウム〈LiMO2O4〉を用いているが、マンガンは資源が豊富なことから比較的安価であるとしている。


ラミネート構造にしたことで、高い冷却性能が得られるとともに、薄くて軽い構造はレイアウトの自由度を飛躍的に向上した。従来の円筒形は作りやすいが熱がこもりやすく、耐久性が劣るという。5年間で性能が80%に落ちたらバッテリーとしての寿命が尽きたと考える。


稼働すると発熱するので、その対応が難しい。また、車のアンダーフロアに搭載するため防水対策や、高電圧なので絶縁対策とインバーターなどのノイズ(騒音)の発生なども小さくしている。


(4)EVパワートレイン(モーター/インバーター)も小型高出力化している
リーフのEV用モーターは、最大トルク280Nm、最大出力80kW、最高回転数11000rpmの性能がある。


高いレスポンスを実現する低回転からの大トルクで発進直後の加速力は、3L ガソリンエンジンの2倍を超えている。それだけ加速が良いことになる。


インバーターによる日産オリジナルの制振制御でスムーズに立ち上がる加速(起動力)を実現している。


充電とインフラについて

(1)充電方法は日本の場合、普通充電(3kw、AC200V)と急速充電(50kw、DC400V)を考えている。普通充電は約8時間で100%、急速充電は約30分で80%充電ができる。

フロント・ボンネットの先端に充電ケーブルを挿入する形になっている。駐車場等で幅を取るとスペース的に不利になると考えたからである。

 

(2)ITサポートにより、乗車前に離れた場所から事前冷暖房、充電完了通知などを受け取ることもできる。


(3)乗車中にワンタッチで(ITサポート)航続可能距離を確認できる。また、最新充電スポットをナビのマップ上で確認できる。


(4)乗車後はタイマー充電で深夜電力を有効活用することもできる。また、パソコンや携帯電話でトリップの状況も確認できる。


(5)日本の充電インフラ整備計画
日本政府による計画では、200万台の普通充電スタンド、5000台の急速充電スタンドを整備する予定。


日産販売店での配備計画は、全てのディーラーに普通充電を約2200店舗、急速充電は200店舗に配備する。

(文責:福永 頌/まとめ:植木 豊)
平成22年度 第4回勉強会

1.テーマ:曙ブレーキ工業「ブレーキ博物館」見学及びブレーキについての勉強会

2.日 時:平成22年9月24日(金) 13:00〜17:30

3.会 場:曙ブレーキ工業株式会社 Ai-City(本社)
      埼玉県羽生市東5丁4番71号 TEL:048‐560‐1500(大代表)

4.出席者:曙ブレーキ工業株式会社

      代表取締役社長      信元久隆
      専務執行役員       西垣順充(渉外・広報管掌)
      専務執行役員       工藤 高(開発・調達・品証部門管掌)
      執行役員         西山和男(開発部門長)
      開発部門         西川 裕(シニアエキスパート)
      企画部          泉原敏孝(部長)
      実験・解析部       徳村 宏(部長) 
      摩擦材開発プロジェクト  関 克司(プロジェクトリーダー)
      人事・総務部門
      総務部          福島雄二(部長)
      司会進行         新井良夫(広報室長)

5.参加者:26名[出席連絡25名、当日欠席1名、当日出席2名]

6.内 容:スケジュール
      13:00  受付(ACWロビー:ACWはアケボノ・クリスタル・ウイング=本社
           社屋の名称)     
      13:30〜 ACWホールにて信元社長の挨拶の後、新井広報室長による会社説明、
      14:40  泉原企画部長からブレーキについての説明などを受けた。
      14:50〜 RJC側参加者を3班に分け、

           1.ブレーキ博物館

           2.実験棟

           3.ベンチマーク室、NV解析室などを順次見学した。
      16:30  各グループには開発部門の泉原氏、徳村氏、西川氏をはじめとしたメン
           バーが引率して説明していただいた。
      16:45〜 ACWホールに戻り、質疑応答を行った。
      17:15  終了
7.概 要:
曙ブレーキ工業は創業(1929年)以来、自動車用ブレーキ及びその関連部品を製造している。最近では、鉄道車両(新幹線やリニアモーターカー)のブレーキ装置や産業機械用のブレーキ部品の製造も行っている。


「止まって当たり前のブレーキだが、車の中で安全について最も重要な部分を担当している…」「ブレーキではなく、安全と安心を提供している」と信元社長は語る。


近年はグローバルに研究開発業務を拡大しているが、ブレーキの新しい分野としてレース用マウンテンバイクのブレーキにも注目している。簡単な構造に見えるが、前後ブレーキのバランスなどで全体のコントロールが得られ、勝敗が決まるという。また、より過酷な条件でのブレーキ技術開発をめざして、2007年からF1マシン(ボーダフォン・マクラーレン・メルセデスチーム)へのブレーキ供給を行っている。この年、F1レースのチャンピオンに輝いた。「速く走るためには優秀なブレーキが必要」であることを実証した一例とも言えよう。
市販車ベースの話題としては、最近ポルシェ「パラメーラ」に曙ブレーキ製のブレーキパッドが用いられるようになった。キャリパーは伊ブレンボ製だが、ブレーキを効かす摩擦材の部分は曙ブレーキ製となったわけである。


ブレーキは走行中のエネルギーを熱に変えて放出する装置である。ブレーキディスク/ドラムとブレーキパッド/シューとの間で摩擦して熱を発生する。例えば乗用車用では、ブレーキペダルを踏む力が15kgのとき、ブレーキ装置のピストンにかかる力は約263kg。これがブレーキディスクに伝わり制動力になると約440kg。ドライバーの踏力の約30倍の力になる。
このブレーキで、仮に時速100km/hで急ブレーキをかけ1G(9.8m/s2)の減速度を出したとすると、3秒間で2Lの水が沸騰するほどの熱量を放出する。
実験棟で見学したブレーキ試験では、時速100km/hからの急ブレーキの繰り返しをすると、数回でブレーキディスクまわりから煙が出てくる。7〜8回目ぐらいにはディスクが真っ赤に焼けてくる。表面温度は750〜800℃ぐらいになるという。

 

ブレーキ装置は、主として「止まる」ための装置と考えられているが、車輪の回転速度を制御することで、TCS(トラクションコントロール)、ABS(アンチロックブレーキシステム)、ESP(横滑り防止システム=車両姿勢安定システム=スタビリティコントロール)などにも活用され、走行安全性の向上に役立っている。


現在用いられているディスクブレーキ/ドラムブレーキは、システムとして摩擦ブレーキの主役である。今後も多分主役の位置を占めるであろう。高速から中速までのブレーキ(制動)コントロールは、電動方式なども考えられるだろうが、最終的に(例えば時速30km/h以下の領域)車を止めるのは摩擦ブレーキの特性が優れていると考えられるという。


ACWの隣にある「ブレーキ博物館」(Aiミュージアム)は2004年4月に同社創立75周年を記念して開設されたもの。冒頭の挨拶の中で信元社長から「そもそものキッカケは三本和彦さん(RJC名誉会員)からブレーキ専門メーカーとして長い歴史があるのだから博物館を作ったらどうだとの話を聞いて出来たという経緯がある」との裏話が披露された。ブレーキに関連するものが400点以上陳列されている。


製品展示ゾーンには、日本で最初のディスクブレーキがあった。1964年に曙ブレーキが日野コンテッサ用に開発したもの。以後、日本ではディスクブレーキが多用される時代に入ったと言われている。


新幹線のブレーキライニングとキャリパーも展示されている。ちなみに近年の新幹線の約50%は曙ブレーキ製だという。焼結合金製ブレーキライニングは1964年の新幹線開業当時から装着されているもの。キャリパーは1992年に300系のぞみに採用されて以来、最新の700系に至るまでJR各社の新幹線に装着されている。


珍しいものではリニアモーターカーのキャリパーが展示されていた。磁気浮上式リニアモーターカーに用いられ、愛知万博(2005年)で実用運行したキャリパーはフローティング式で、パッドでレールを挟んで制動する。


摩擦材コーナーには、1929年の創業時から現在までのアスベストからノンアスベストへの変遷と原材料から製品までの製造方法が紹介されている。パソコンを用いた配合シュミレータでは、数種類ある摩擦材の材料配分を任意に変えて、ブレーキの利きがいい悪い、ノイズの発生が大きい小さいなどの性能評価を、ゲーム感覚でトライすることもできる。


Aiミュージアムは入場無料。開館日は毎週水曜日、14:00〜16:00となっている。

団体申込み先:048-560-1500 総務課 福島・島田氏(平日9:00〜16:00)。
                                         

(文責:福永 頌/まとめ:植木 豊)
平成22年度 第3回勉強会

1.テーマ:EVタクシーバッテリー交換方式についての勉強会(見学会)

2.日 時:平成22年9月6日(月) 13:00〜14:45

3.会 場:ベタープレイスEVタクシーバッテリー交換ステーション
      東京都港区虎ノ門1−19−4 TEL:03‐500‐4870

4.参加者:27名[出席連絡30名、当日欠席3名]

5.内 容:1.プレゼンテーション(バッテリー交換方式の展望など)
      2.デモンストレーション見学(バッテリー交換、同保管庫など)
      3.EVタクシー試乗及びバッテリー交換時の体験
      4.質疑応答(14:15〜14:45)

 

初めにベタープレイス・ジャパン株式会社 事業開発本部マネージャーの山田進一氏よりプレゼンテーションがあり、その後、RJC側参加者27名を3班に分けて

(1)EVタクシー試乗/体験

(2)バッテリー保管庫等の見学

(3)バッテリー交換の状況(保管庫から満充電したバッテリーを運び出し、EVタクシーのバッテリーを脱して交換し、脱したバッテリーを保管庫に格納して充電するという一連の作業がオートメーションで行われる)を順番に見学。最後に約30分間、質疑応答を行った。

 

6.概 要:電気自動車普及への新たなる試み

電気自動車による交通インフラの構築を目指すベタープレイス・ジャパン(株)は、今年4月からバッテリー交換式電気自動車(EV)を営業用タクシーとして利用する世界初の実証実験をタクシー会社大手の日本交通(株)と共に開始。今回の実験は経済産業省 資源エネルギー庁の平成21年度「電気自動車普及環境整備実証事業」の1つで、3億円の資金拠出を受け、EVタクシー運用のために建設した「バッテリー交換ステーション(BSS)」でバッテリーの充電・保管・交換を実施するという実証試験事業である。事業統括をベタープレイス・ジャパンが行い、タクシー運行は日本交通(現在3台)、車両及びBSSの開発・製作は(株)東京アールアンドデー、六本木ヒルズ1Fに設けたタクシー乗り場の用地提供は森ビル(株)が係わっている


現在のEVタクシー車両は日産デュアリスをバッテリー交換式EVに改造したものだが、将来は日産のリーフやルノーのフルーエンス・ZEを導入する予定。


現行の(虎ノ門)BSSは1レーンだが、将来的には2レーンで約200平方メートルの規模を考えている。交換バッテリーは1レーン当たり最大15個/時間のサービス頻度に対応できるように20個程度を備蓄することになる。


BSSにおけるバッテリー交換は全て自動化されており、停車から発進に至る所要時間は1分30秒以内で残量の少なくなったバッテリーをフル充電されたものと交換できる。


バッテリーの車両への装着は軍用機の翼下にミサイルや補助燃料タンクを吊るす航空技術を応用し、車体側に強度の高い鍵爪型のラッチを採用。確実な保持機能を実現している。ラッチによる着脱機構は、バッテリー交換式EVの普及が進めば車両価格の1〜2%の製造コストで提供可能になる見込み。


バッテリー交換方式とすることで、充電の時間待ちがなくなり、車両を使う効率が高まる。バッテリー自体も高価なので、バッテリーはリースで借り、BSSで交換した時に電力分の費用とリース代の一部を支払うようにする方がユーザーには使いやすいはずという。


日本ではとりあえずEVタクシーを対象と考えている。これはタクシー用のLPGスタンドのリユースができる可能性があることも考えている。LPGスタンドをBSSに変えてビジネスして成り立つ可能性もあるとしている。


東京のタクシーは約6万台ある。その割合は都内の全乗用車のわずか2%だが、CO2排出量では約20%を占めているといわれている。排ガスゼロのEVタクシーに切り替えることで都市の大気汚染を大幅に削減することができ、環境のために良いといえる。


BSSを普及するには「バッテリー交換式EV」というコンセプトを理解してもらう必要がある。現在のバッテリー内蔵式EVでは、バッテリーの購入、充電、劣化対応、二次利用又は廃棄という一連の管理がすべてユーザーに委ねられている。バッテリー交換式EVの導入により、車両本体とバッテリーを切り離して考えられるようになるため、このプロセスを利用システムの運用者が代行し、ユーザーの負担を飛躍的に低減することが可能になる。


諸外国ではイスラエルとデンマークが有望なBSSの市場とみられている。またカナダ、オーストラリア、米国のカリフォルニア州、ハワイ州といった、EVの普及に積極的な地域もある。


BSSを用いるEVは10年後には主流になるポテンシャルを持っているとベタープレイス社は考えている。「バッテリー交換式電気自動車が切り拓くEVの新時代」だという。


ベタープレイス社は、BSSの他に100Vと200Vを用いてEVに充電するチャージスポットの普及や、バッテリーを管理することによるITを活用してEVとステーションをスマートグリッド化するなどの事業も考えている。

(福永 頌)
平成22年度 第1回勉強会

1.テーマ:LED(発光ダイオード)について

2.日 時:平成22年6月24日(木) 14:00〜16:00

3.会 場:アイビーホール青学会館 2F シャロン

4.講 師:東海林 巌 氏

      スタンレー電気株式会社 光半導体事業部 係長
  講 師:仁藤 也寸志 氏
      スタンレー電気株式会社 四輪第一事業部 
      OEM開発室 チームマネージャー
      なお、当日はスタンレー電気株式会社から2名の講師のほか、随行員として

      高野一郎氏(宇都宮営業二課 課責長)、

      田中秀実氏(OEM開発室 チームマネージャー)、
      野村直史氏(光野村直史氏(半導体事業部 課責長)の計5名が出席、

      質疑応答の折に対応していただいた。
5.RJC出席者:29名

      講演要旨

 

以下の項目について、パワーポイントを用いた講演があった。

(1)LEDデバイスについて(講師:東海林 巌氏)

   1.LEDとは

   2.LEDの構造

   3.白色LEDについて

   4.LEDの特徴

   5.他の光源との比較

   6.駆動方法

   7.自動車用光源の例

 

(2)自動車用LEDについて(講師:仁藤 也寸志氏)

   1.自動車用照明の歴史  

   2.自動車用LEDの現状   

   3.自動車の外装ランプ機能   

   4.LEDランプのメリット   

   5.ヘッドランプ   

   6.リアランプ   

   7.LEDの今後について

 

講演内容を断片的に整理すると、以下のような知識が得られた。

  • LEDはLight Emitting Diodeの略。電圧印加により、電子と正孔が結合し、発光する現象を利用したPn接合ダイオードのこと。
  • 2〜3Vの低電圧、小電流で発光する。実際には1.59V〜3.26Vなどが使われる。
  • LEDはガリウム、アルミニウム、ヒ素で赤色、ガリウム、ヒ素、リンで橙色&黄色、窒化ガリウムで青色など、素材の化合物半導体により発光の色が異なる。
  • 青色LED、緑色LED、赤色LEDなどを組み合わせると多彩な色が作れる。蛍光体も利用すると一層多彩になる。
  • 白色LEDは4通り(青色LED+黄色蛍光、青色LED+緑色蛍光+青色蛍光、紫外LED+青色蛍光+緑色蛍光+黄色蛍光の組み合わせなど)の方法で作れる。
  • LED自体は熱に対してあまり強くない。多くの場合、ダイオードの基板などがクーラーの役目(放熱)をしている。温度が高くなると明るさが低下する。特に赤色に顕著。白色LEDは温度が上昇すると青っぽくなる傾向がある。
  • LEDは原則的に紫外線がない。虫(昆虫)は紫外線の周りに集まりやすい。このため、LEDの信号等の周りには虫が集まってこない。
  • LEDの寿命は2万時間以上。光量が70%以下になる時を寿命としているが、白熱電球に比べると10倍以上の寿命がある。フィラメントを用いていないので点灯しないというトラブルは極めて少ない。25℃の環境で2万時間(1日8時間×約7年分)でも劣化(光量の減退)は10%未満という例もある。ただし、80℃の環境だと70%ほどに劣化する。
  • 駆動方式には直流駆動、交流駆動がある。定電流で発光させるので、そのための制御が必要になる。家庭用LED電球の場合はその駆動制御部が電球のソケット近くに入っていると考えていい。
  • 自動車用LEDは、一般用途のLEDとは異なり、要求品質が高いので仕様構造が特殊となる。
  • 自動車用照明の歴史は、1879年=エジソン電球、1906年=タングステン電球、1935年=クセノン・クリプトン電球、1969年=ハロゲン電球、1996年=HID電球、2002年=初の白色LED(タクシーなどが採用している)昼間点灯ランプ。
  • 自動車用LEDランプとして日本で初めて用いられたのは1986年にフェアレディZに採用されたハイマウントストップランプ。76個のLED素子を用いた。
  • 最近は赤外LEDもある。CCDカメラで収集できるので(人の目にはわからないが)、サイドビューモニターやVICS通信にも使える。
  • LEDは輝度(カンデラ)は大きいが、光量(照度=ルックス)が足りないといわれている。三菱アイミーブのヘッドランプのロービームには1灯当たり3個のLEDで構成されている。手前を幅広く、中間距離を明るく、遠くをスポット状に照射する。
  • LEDヘッドランプは、HIDより白線、歩行者がよく見えるほか、標識も見やすくなる。
  • LEDは信号灯として、誘目性(気づかせる能力)が高いのが特徴の一つ。発光も早い。白熱電球より100分の1秒ぐらい早い。
  • 自動車用のヘッドランプに使うと、現行で1台当たり376W必要なものが、LED化すると74Wで足りる。5分の1の消費電力になる。家庭用の電球だと8分の1の消費電力とうたっている。
  • LEDヘッドランプの価格は、現状ではHIDよりも高いため、その普及は高級車やEVにとどまっている。今後は光源を大きくする、パワーを上げるという進化が必要とされる。
  • 将来的には消費電力が少ない、発光が早い、寿命が長いなどの理由で自動車用に多く用いられるようになるだろう。
以上
(文責:福永 頌)

RJC勉強会[LEDについて」の感想
 最近はLED(Light Emitting Diode/発光ダイオード)が、クルマのランプから信号機、さらに屋内の照明などに幅広く用いられている。スタンレー電気株式会社の開発者を講師に招き、勉強会が開催された。
 LEDは電圧を加えた時に発光する半導体素子で、アルミニウム、ガリウムといった素材を用いることにより、赤、青、オレンジ色などに発光させる。白は最も簡単なようで意外に難しい。何らかの組み合わせが必要だ。最も効率が良いのは、青色LEDの光を蛍光体に通す方法。蛍光体がフィルターのような役目を果たし、白に変色させる。
 それにしても凄い世界です。見本で閲覧したLEDチップは、米粒くらいのサイズ。これがピカーッ!と強烈に光る。消費電力も少なく、クルマのロービームはハロゲンでは110W程度なのがLEDなら20Wで済むという。「大量に造れば価格も下がる」そうで、照明の革命でしょう。「発熱量が少ないからヘッドランプに付着した雪が溶けない」などと考えていた私は、時代に取り残されたジジィなワケです。

(渡辺 陽一郎)

 

 自発光することによって、デザインの自由度が高いということに注目したい。音響や通信の世界では、かつて真空管が主流であったが、トランジスタが開発されることによって、現在のインターネットが支配する世界へと大きな飛躍をもたらした。
 LEDはトランジスタと同じような存在なのだと思う。光の世界が通信のような急激な発展をとげるかはわからないが、少なくとも生活空間や街の風景を一変させることは確かだと思う。部屋の照明は多彩になるだろうし、街のネオンサインはもっと繊細でセンスの良いものになっていくだろう。子どもの頃思っていた未来の風景が現出されるかもしれない。ダウンサイジングを可能にすることによって世界を一変させるという意味で、トランジスタと同じ役割を担うことは間違いなさそうだ。
 今後は、日本の開発者がハード面での進化を達成すると同時に、様々な業界や個性的な個人と連携して、多様な応用が可能なソフト面での開発に期待したい。

(川崎 健二)

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