ワゴンRスティングレ−X

燃費だけでなくクルマとしてもググッと進歩



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 小型車だけでなく軽自動車でも燃費の向上が盛んだ。何故か? 当然売れ行きに直結するからだ。たとえ僅かな差でも、メーカーにとっては死活問題、多くのユーザーも興味津津だろう。でも、ぼくはこの手の情報はあまり信じてはいない。燃費がコンマ何キロ改善されたところで、実際にはそれほど影響はない。むしろ運転の仕方の方が燃費に直接影響を与えることが多い。
 しかし、このワゴンR・FZと同スティングレーXの2WDモデルは32.4㎞/Lと、従来比で8%の燃費向上を果たした。これで全高1550㎜以上の軽自動車の中ではトップに輝いたわけだけど、おそらくこの座も永久に続くものではないだろう。とは言いつつ、ここまで燃費をアップさせることができた理由をカル〜ク説明しよう。
 ポイントは「S-エネチャージ」だ。これまでスズキは「エネチャージ」という技術を採用してきた(新ワゴンRシリーズにもこのバージョンはある)。これは、減速時のエネルギー(回生エネルギー)を鉛&リチウムイオンの二つのバッテリーに蓄え電装品へ供給し、ガソリンの消費量を抑える技術だ。
しかし、S-エネチャージはこのシステムをさらに進化させた。モーター機能付き発電機=ISG(Integrated Starter Generator)を開発したのだ。加速時(15〜85㎞/h)にはモーターが最大6秒間アシストして、エンジンの負担を軽くする。出力自体は増えるわけではないが、モーターがアシストする分、燃費が向上する(ガソリンの消費量が減る)。もうひとつのミソが、ISGがエンジン再始動時にスターターとしても働くこと。これが大きい。エネチャージの発電機にはモーター機能はなかった。このISGはエネチャージの発電機があった場所に収納され、発電効率も約30%増えている。

細かい改良の積み重ねで燃費を大幅にアップした
さて、このISGは実際の運転にどのような効果をもたらすだろう。これが想像以上に多いのだ。まずアイドリングストップ・システムが再始動する時の音が極めて小さくなった。これは、ISGがスターター機能を備えているからできたこと。新たにISGとクランクを別のベルトでつないだのだ。そのため、再始動にセルモーターとギアを使わなくても済む。メーカーは再スタート時の室内騒音を40%低くできたと胸を張るが、この点は嘘偽りない。
アイドリングストップ(今回は13km/hで作動)の弱点として、止まったはいいがちょっと足をゆるめたりするとこちらの意志とは関係なくエンジンが始動してしまうことが多かった。今回はこのわずらわしさからも大きく解放された。具体的に言うと、減速時は25km/hで、また停止時には5km/hで再始動していたが、それぞれ10km/h以上、1km/h以上に低くなった。これだけ騒音が少ないと、作動速度を下げ、なおかつ回数を頻繁にしてもまったく苦にならない。それだけ細かくエンジンのON、OFFをコントロールできるから、これも燃費改善につながる。ぼくが試したわけではではないが、メーカーの説明では幕張で行われた試乗会のある参加者のレポートによれば、実測燃費は24km/Lだったという。こんな具合に、ISGを中心とした細かい改良を積み重ねて好燃費を手に入れた。スズキらしい地道な手法だ。
最後にちょっとアドバイスを。カタログをよく読めば書いてあるし、親切なセールスマンなら教えてくれるだろうけど、スティングレーにはスマートフォン連携ナビゲーションというオプションがある。これはナビだけでなく、バックモニターや後退時左右確認サポート機能、自動俯瞰機能などがセット。価格は8万8560円!! ディーラーオプションだとナビはけっこう高い。それと比較すると、機能はともかく、安い。ただし、これはメーカーオプションだから、後で着けるのは無理(ワゴンRには設定されていない)。興味ある方は最初にね。

写真:植木 豊

最終更新:2014/09/13