第45回東京モーターショー2017 - パーツ編 -
未来が現実になった!新時代の"夢"

報告&写真:高山則政

 

ひと頃のような派手さは減った──クルマも人も。しかし前回は未来だったものが現実として展示されている──EVも自動運転も燃料電池車も。わりと堅実路線の国産車に比べて輸入車には走りをアピールするモデルも多い。今回は部品館もご紹介。ある意味でここは興味深い。表に名前が出ることは少ないけど、サプライヤーとして自動車メーカーを支えているのだから。どこに行くかわからない時代の曲がり角。世界の、日本の、自分の未来をしっかり探そう。東京ビッグサイトで。

 

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パーツ編

コンチネンタル●Continental AG

可変ホイール&トレッドシステム「コンチアダプト」

コンチネンタルタイヤの「コンチアダプト」は、1つのタイヤで全ての路面に対応できるよう、復数のトレッドパターンとエアコンプレッサー、可変幅ホイールを組み合わせたコンセプトで、接地面の形状が自在に変わる。ウェット路面ではハイドロプレーニング現象を防ぐために接地面を狭く、雪上ではホイール幅を広くし空気圧を下げてタイヤのショルダー部の雪用のトレッドが接地して駆動力を確保。自動運転車の安全性をより高めることが目的。

 

NTN●NTN Corporation

モーター・ジェネレーター機能付きハブベアリング「eHUB」

欧州を中心に開発が進む48ボルトのマイルドハイブリッド向けのコンセプト。二輪駆車の従輪(前輪駆動なら後輪側)へ装着し、車軸にモーター兼発電機を内蔵するもの。既存のサスペンションに使えるよう外径部はディスクローター内に収まるサイズ。渋滞時ではアイドリングストップのまま前進でき減速時は発電させることでエネルギー回生することも可能で、片輪ごとに制御すればトルクベクタリングや姿勢安定制御にも活用できる。

 

カルソニックカンセイ●Calsonic Kansei Corporation

板金タービンハウジング

通常のタービンハウジングは高温の排気に耐えるよう耐熱鋳鋼製だが、熱容量が大きいため排気の熱がタービンハウジングに逃げてガス温度が下がり、排ガス浄化性能が悪くなったり、ターボの効率が落ちる。そこで、薄くて軽い板金製のタービンハウジングを製作。耐熱温度は850℃で、ガソリン用の1050℃よりは低くディーゼル限定だが、ガソリン用も研究中。世界初の技術でハネウェル製ターボに採用。このターボはマツダCX-8に搭載される。

 

ヨコハマタイヤ●The Yokohama Rubber Co., Ltd.

反射材付きタイヤ

安全性を高めるために反射材付きにしたコンセプトタイヤ。タイヤのサイドウォールとトレッド面のグルーブに黒い反射材を塗布し、昼間の違和感をなくしている。夜間の被視認性を大幅に高めるが、ドライバーだけでなく前方監視カメラに対しても効果大。タイヤは地面に接しているので反射した光が路面の同じ位置に照射されるので、距離のズレがなく追従側の車両が前走車との距離を正確に判定できるようになる。特に夜の雨では有効。

 

オムロン●OMRON Corporation

ドライバーモニター

業務用のドライバー安全運転管理サービス。本体をドライバー側に向けてダッシュボード上に設置し、ドライバーの動きなど運転状況を検知。GPSで車両のスピードや挙動などの走行状態を検知して、安全な運転ができているかをモニターする。カメラは2つ装着し、車両の内外の状況を録画する。ドライバーが眠気や疲労で安全に運転できないときや、危険な運転をしている時の通知や、通信機能で運行管理者へ分析レポートを送る機能もある。

 

日立オートモードシステムズ●Hitachi Automotive Systems,Ltd.

多機能圧力センサー

エンジンが吸入した空気の量を測定するために必要なのが、エアフローセンサーや圧力センサーで、従来は吸入空気量や圧力、温度(別体のセンサーを使うこともあり)を測っていた。多機能型圧力センサーではさらに湿度も測定可能。燃費や環境への規制強化が引き上げられるなかで、点火時期やEGR(排ガス再循環)の制御を緻密化して最適な燃焼を行うためには湿度の影響も加味する必要がある。圧力、温度、湿度を一つのユニットで測定している。

 

トヨタ紡織●TOYOTA BOSHOKU CORPORATION

レクサスLS用28Way ニューマチックシート

前後シートに座って体感できる実物とフロントシートのカットモデルを展示。ニューマチックシステムを搭載しており、エア圧でショルダー、サイドサポート、ヒップなどの各部位を調整機能するほか、リフレッシュ(マッサージ)機能ではシートバッグやシートクッション内のエアブラダー(空気袋)を膨張させることで、乗員の背中から大腿部までを押圧してくれる。表皮の美しいキルティングやステッチの細かさ(従来の5mmから3.5mm)も要注目!

 

豊田合成●Toyoda Gosei Co., Ltd.

レクサスLS用 新構造ガラスラン

ドアのガラス枠のセンターピラー側は、コの字断面のレールの中でガラスを上下する仕組みとなっていたが、外側には段差が出来ていた。これは空気抵抗や風切り音の発生になるほか、デザインの洗練度も落ちてしまう。そこで段差をなくすために、ガラスランの構造を変え、ガラス枠とガラスを並べたような配置とした。構成部材が増えているので、現状では高級車に限られるが、これぞフラッシュサーフェイスというべき構造になる。

 

SMRオートモーティブオペレーションズジャパン●SMR Automotive Operations Japan K.K

ミラーレスサイドビューモニター

テスラモデルS(同社の社用兼実験車)のドアミラーをカメラに置き換えて、ダッシュボードの左右に配置されたディスプレイでサイド後方を映すミラーレス車。カメラ自体は固定式だが広範囲を映しており、従来の鏡面角度調整は画像処理で行っている。メリットは、ミラーよりもワイドな視認性を持ち、雨天や夜間の視認性が高い。外寸もコンパクトでデザイン性や空気抵抗低減にも貢献。

 

ボッシュ●Bosch Corporation

フェールオペレーショナル対応電動パワステ

自動車部品大手のボッシュの電動パワステ。フェールオペレーショナルという、異常時でも最低限の性能を確保して走行を続けられるようにするシステム。将来の自動運転車では、部品の信頼性も高くする必要があるため、通信系が二重になっているのはもちろん、モーターも2系統化されている。これによってモーターの操舵力は故障時でも50%以上を確保できるようになっている。

 

ミツバ MITSUBA Corporation

ダイレクト・ドライブワイパーシステム

様々なモーターの製造を手がけるミツバが展示しているダイレクトドライブ型ワイパーのコンセプト。通常のワイパーは、1つのモーターからリンクを経由して2本のワイパーブレードを往復させるが、ダイレクドライブはモーターが直接ワイパーブレードを動かす。左右独立制御が可能なので、汚れた部分だけを拭ける。リンクがなくなるのでフロントフロントガラス下部に必要だった横通しの空間を減らし、車体デザインの自由度も増す。

 

カーメイト●Car Mate Japan

クルットシェリール

プレミアムチャイルドシート、KUTUTTO CHERIR(クルットシェリール)は、日本初のリモートサンシェードを持ち、リモコンでシェードの開閉操作ができる。これによって、直射日光が射したときなども運転席から安全に操作できる。乗せ降ろしに便利なシートのターン機能、首を支えるピローや風よけのフットマフ等の快適装備も充実し、まさにファーストクラス!コンセプトモデルでも、電動着脱機構モデルを出品。

 

NSK●NSK Ltd.

フレックスコーナーモジュールコンセプト

電気自動車や自動運転車が普及する未来を見据えて開発した世界初のメカ。マルチリンクサスペンションを伸縮自在なバリオリンクで構成し、ホイールを生き物のように自在に動かす。操舵はもちろん、トレッド幅、キャンバーやトーなどの変化も可能。同社が誇るボールねじ技術とモーターを組み合わせているが、モーターは200V仕様として小型にしている。コンセプトモデルではサスペンション全体だが、既存の車種に1本組み込むことも可能。

 

小糸製作所●KOITO MANUFACTURING CO., LTD.

ブレードスキャン式次世代ADB

ADB(アダプティブドライビングビーム)を搭載する車種が増えているが、これは独自の手法による次世代型。現在のLEDアレイ型では、ハイビーム時に照射しないエリア(先行車や対向車など)を作るためにLEDを消灯させるが、この方式では反射鏡(ブレード)をモーターで回転させながら4〜5個のLEDを点滅させて照射エリアを制御する。光は横方向に流れるが(スキャン)、残像効果で視認性は変わらない。LEDを少なくできコストや熱対策でメリットがある。

 

ダンロップ●SUMITOMO RUBBER INDUSTRIES, LTD.

スマートタイヤコンセプト

タイヤは、摩耗やコンパウンドの劣化で徐々に性能が低下するが、運転がドライバーの判断ではなく自動運転化で機械任せになると、長期間同じ性能をキープすることが重要になる。現状では、ウェット性能が2万kmで10%低下するそうなので、これを抑えるのが今後の課題。すでに、スタッドレスタイヤではWINTER MAXX02で4年経過でも性能が持続できるようになっているので、さらに進化させた技術をサマータイヤに搭載していく予定。

 

NSK●NSK Ltd.

ポール式ワンウェイクラッチ

プリウスPHVに採用された、エンジンの逆転防止メカ。プリウスPHVでは、ジェネレーターが駆動モーターにもなるデュアルモータードライブが採用され、加速力が強化されている。このジェネレーターをモーターとした使うときには、モーターの反力でエンジンが逆回転しようとするが、それをワンウェイクラッチで防止する。クラッチはツメを利用するものだが遠心力で広がり、エンジンの400rpm以上ではカチカチ音がでなくなる。

 

八千代工業●Yachiyo Industry Co., Ltd.

燃料タンクの過去現在未来

歴代および未来の燃料タンクを展示。初代アコード(1977-1981)用の燃料タンクは鋼板プレス製。インサイト(1999-2006)では、日本初の4種6層樹脂タンクを量産。樹脂で難しいのは、ガソリン蒸気の透過対策でEVOHというバリア層を挟んでいる。2017年からの北米向けオデッセイでは、さらに環境対策を進めた部品内蔵型樹脂タンクを開発。将来向けは、PHEV用で、エンジン非作動期間にタンク内圧の上昇で膨張するのを防ぐ外付けフレームを装備。また、水素自動車向けのカーボン製も開発している。

 


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