2月15日、プリウスにPHV(プラグインハイブリッド)モデルが追加された。家庭用のコンセントからも充電できる。ハイブリッド車とEVモデルの中間に位置するクルマといってもいい。
「ハイブリッドの次はPHVです」。全世界のハイブリッド車販売1000万台を達成したばかりのトヨタは、プリウスPHVの発表会でこう宣言した。もっとも、次世代環境車の柱が何になるかはまだ分からない。ヨーロッパではEV(電気自動車)だろうという話もあるし、最終的にはFCV(燃料電池車)だろうという説もある。どのメーカーもいろいろ用意しなければならないのが現状だ。あくまでも現時点におけるトヨタの選択はPHVであるということだ。不確実性の時代なのである。
初代プリウスPHVのEV走行距離は26.4kmだったが、今回のPHVは68.2kmと大幅にアップした。ほかのクルマと同じで、この数値どおり走れるかどうかは分からないが。
パワーユニットは1.8ℓエンジン(72kW)とモーター(53kW)。急加速時などにはジェネレーター用モーターも利用するデュアルモーター式というのが特徴。電池を使い切れば自動でハイブリッドになる。その時の燃費は37.2km/ℓ。悪くない。
PHVだから、充電はもちろん家庭用の100Vでもできる(約14時間)し、200Vならもっと早い(2時間20分)。急速充電を選べば20分で80%できる。さらにオプションでルーフにソーラー充電パネルを装備することもできる。これは災害時やレジャーなどの外部電源として使うのに便利だが、フル充電してもこの電気で走れるのは2.9kmに過ぎない。
スタイルは賛否がわかれるところ。ぼくはあまり好きになれない。とくにリアハッチの中央で凹とへこんだガラスは軽量化のためとはいえそこまでやる必要があったのか少々疑問が残る。リアワイパーもつかないし……。フロントグリルも未来的という意味ではフツーのプリウスのほうがいいなあ。差別化したいという目論見は分かるんだけど。
インテリアで目立つのは中央の大型のタッチディスプレイ(11.6インチT-Connect SDナビゲーション)だ。地図はもちろん、エネルギーモニターなど多様な表示機能を持つ。クルマもだんだんゲーム機っぽくなってゆく。
先代のPHVと異なるのは4人乗りになったこと。EV走行の距離を伸ばすためもあってリアの床下のバッテリーを大きくしたから、スペース的にきつくなったらしい。でも、それは大した問題じゃない。前席はむしろゆったり感じが増した。
発表会のあと近くのクローズドコースで短時間試乗する機会があった。
走り出してまず感じたのは、音振性能がぐっと向上したこと。しっとり感と安心感が違う。全体的に上質だ。通常のプリウスとは別次元だ。発進加速は驚くほどじゃない。遅くはないが、どこまでも加速してゆくような印象はない。
ニューPHVは135km/hまでEV走行ができる。これはむしろ歓迎すべきことだ。ちょっと強く踏むと勝手にエンジンが始動するようなことは少ない。フル充電してあったからなおさらだ。ただ、今回のコースでは約90km/hを出すのが精いっぱい。ほどほどの速度でのコーナリングでのハンドリングは素直で好感が持てたが、タイヤは少しプアに感じた。
以下に同じようにちょい乗りしたRJC会員の印象を記そう。
「最大の弱点だった航続距離を2倍以上の68.2kmと延ばしたほか、数々の有効な改善を図って登場した2代目プリウスPHV。ただしそのために約150kgも重くなってしまい、EVモードでは得意なはずの発進加速でも、思ったほどの鋭い加速感はない。従来は駆動には使わなかったジェネレーター(発電機)を協調駆動させても、である。ステアリングは回頭性のよいスポーティな感覚ではなく、しっとりと落ちついた感じ。」(飯塚昭三)
「1年前に先行投入したプリウスが、軽快なフットワークで走れるのに対して、こちらはよりハイクオリティで重厚感のある、操舵フィーリングを与えてくれる印象だった。バッテリーの容量アップで120kg重い車重を力強く引っ張ってくれる。初代は国内で月販1000台に満たなかったが、この2代目は3倍以上の2500台と完全な量販を目指している。それだけの自信作をアピールしているともいえそうだ。」(遠藤徹)
報告:神谷龍彦
撮影:佐久間健
初期加速は期待したほどではなかったが、ハンドリングは素直。日本で半分以上売りたいという。
空力的にも有効だという中央が凹んだガラス。バッグドアには軽量化の意味もあってカーボン採用。
CMキャラクターはいまを時めく石原さとみと草刈正雄。TVなどは喜びます。
センターの大きな11.6インチ・ディスプレイが特徴。ナビは全面も上下分割も表示できる。
一部グレードは、メーカーオプションでルーフに搭載するソーラーパネルを選ぶこともできる。
1.8ℓ4気筒エンジンは従来通り。バッテリー容量とモーターシステムが大きく改良された。