マツダ CX-5
ドライバーだけでなく同乗者にも笑顔を。
先代比マイナス20km/h。静粛性大幅向上

 2012年にデビューして以来、初めてのモデルチェンジ(マツダ的に言えば全面改良)である。このモデル、市場を世界に求めてきたマツダにとっての重要度はいや増すばかりだ。先代モデルは約150万台売れ、昨年は37万台の販売台数をあげた。現在ではグローバル販売のじつに4分の1を占める。日本での印象以上にマツダでは「スター」なのだ。
 先代は約7割がディーゼルモデルだった。マツダはこの二代目ではディーゼル対ガソリンの比率を55:45にしたいという。最近のマツダのディーゼルエンジンの仕上がり、とくに静粛性はすばらしい。ディーゼル専用モデルのCX-3ではピストン・ピンにナチュラル・サウンド・スムーザーを仕込んでノック音を低減させ、燃焼噴射タイミングを0.1ミリ秒単位で制御して共振のピークに周波数の谷を重ねてさらにノック音を低減させた。余談だが、CX-3、当初は好調だったものの今年の売れ行きはもうひとつパッとしない。ディーゼル車について回る価格の問題があるのかもしれない。
 CX-5のディーゼルエンジンもCX-3の技術を引き継ぐ。搭載エンジンはディーゼルが1種類とガソリンが2種類だ。ディーゼルは2.2ℓ(129kW=175ps)、ガソリンは2.0ℓ(114kW=155ps)、2.5ℓ(135kW=184ps/140kW=180ps)。このディーゼルもCX-3のエンジンと基本的には同じシステムを採用している。ディーゼルの420Nmという最大トルクは魅力がある。
 ただ、マツダの意向としてはエンジンよりもデザインに重きを置いているようだ。事実、最近のマツダ車はデザイン面でも大きな進歩を見せている。新CX-5はサイズ的には先代とほとんど変わらないが(全高は−15mm)、全体の印象はより洗練されたと言っていい。薄型ヘッドライトにしたり、Aピラーを35mm後退させたりと、随所に手を入れている。塗色にも深みのあるレッド・クリスタルなどを追加して存在感をよりアピールする。
 コンセプトは「同乗者も含めてすべてのユーザーを笑顔にするSUV」である。ここの「すべてのユーザー」というのがミソ。ドライバーが嬉々として飛ばしても必ずしも同乗者を喜ばせることにはならない。その再検討対象は、運動性能や乗り心地だけでなく静粛性にも及んだ。騒音は先代モデルに比べて約20km/h遅い速度レベルまで低減したという。パーツ形状の見直しによって振動そのものを抑えるとともにタイヤノイズの車内への侵入にも対応した。ドアの開閉音もずいぶん改善されていた。つまり、音源から耳まで慎重に捜査し、対策を打ったということだ。トランスミッションは全車6速AT。駆動方式はFFと4WDの両方がある。
 価格はディーゼルが277万5600円〜352万6200円、ガソリンが246万2400円〜321万3000円。発売は2月2日だが、全国でプロトタイプ先行展示イベントを開催している。来年後半にはアメリカへの輸出も始まる。
報告:神谷龍彦
撮影:佐久間健

最近のマツダらしさを継承しながらより低く構えたグリル周り。トレッドは10mm拡大された。

Aピラーは35mm後退。全体のイメージはスポーティさを増した。タイヤは17インチと19インチ。

パワーリフトゲートの角度はキーで自由に設定できる。細かい配慮だが、使い勝手は良さそうだ。

ラゲッジルームは先代よりも少しだけ広い。トノカバーはリアゲートに連動して開閉する。

インパネは水平基調。メーターも見やすい。でも、全体としては左右でやや違和感がある。

エンジンは2.2ℓディーゼルと2.0ℓ/2.5ℓガソリン。経験的にはディーゼルの方が……。


最終更新日:2016/12/18