2370万円! 価格を聞いて少しひいた。でも考えてみれば、レクサスLFAが3750万円のプライスタッグを付けながら予定の500台(日本は165台)を完売したことがあるし、そもそも1990年にデビューした初代NSXは800万円で(最終的には1300万円台のモデルも追加された)当時としては国産車で最高価格モデルだった。
LFAは過去の話だから、復活したNSXはまたも国産最高額車の座についた。ということは、同時にポルシェやフェラーリなどのスーパースポーツカーと競合することになる。ライバルは世界に事欠かない。
日本で市販されるのは100台、このほかアメリカで800台程度、ヨーロッパでは約200台を売る目論見らしい。受注受付は8月25からだが、実際の発売は来年の2月27日からになる。少し待たないと海路の日よりは届かない、のだ。
発表会では八郷社長のほか、開発責任者のテッド・クラウス氏と生産責任者のクレメント・ズソーサ氏がプレゼンテーションを行った。車体やシャシーの生産はアメリカのオハイオ工場で行われるが、パワートレーン関係は日本の栃木工場が担当しアメリカへ送る。トヨタもスポーツカーの開発に余念がないが、ピュアさの面ではホンダのほうが上のような気もする。
エンジンは新開発の3.5リッターV6ツインターボ(507馬力)、それにドライブ用モーター(48馬力)を後ろに、左右独立して駆動力も制御できる2つのモーター(各37馬力)を前に装備する。駆動方式は「SPORT HYBRID SH-AWD」である。
これは従来のAWD(4WD)に、前のツインモーターユニットと後ろのダイレクトドライブモーターを加えて、駆動力を前後・左右で総合的にコントロールするシステム。ハンドリングの向上だけでなく減速旋回時まで制御の幅を広げた。トランスミッションは9速DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)だ。これも日本製だ。
室内に目をやるとまず気付くのはステアリングホイールの形状。下側だけでなく上側も丸くない。それだけ限られたスペース内でのパッケージングに苦労したということだろう。
センターコンソールには走行シーンに応じて4つのモードを選べる「Integrated Dynamics System」のダイヤルが装備される。これにより、エンジン、モーター、トランスミッション、シャシーのレスポンスを総合制御する。スーパースポーツというと快適性はやや犠牲にされることが多いが、NSXは一般道での乗りやすさにも配慮されている。
先代NSXは販売台数の減少だけでなく、厳しさを増す排ガス規制などへの対応の問題もあって2006年に販売を中止したが、今回はそんな心配はなさそうだ。思いっきり世界と勝負してほしい。
報告:神谷龍彦
撮影:佐久間健
東京モーターショーなどでも見た外観。アルミ中心の複数素材によるスペースフレーム構造が新しい。
ヨーロッパのスーパースポーツと異なりエモ―ショナルさは少ないが、それだけに近代的な印象。
ハンドルの下側だけでなく上側からも丸い形状を排除した。パッケージングに苦労の跡がうかがえる。
3.5リッターのV6エンジンをリアに搭載。このほか前後に3つのモーターを備えるハイブリッド。
ボンネットの下は空いているかと思いきや、ブレーキや冷却系などで満杯の状態。荷物はリアトランクに。