頂点の上にもうひとつ頂点が生まれた。
306ps、最高出力は従来モデルより一挙に75psもアップした。2リッター直4ツインターボ、最強のミニである。
3ドア、5ドア、コンバーチブル、クラブマン、クロスオーバー──好調!ミニ(昨年の日本での販売台数は2万3813台、5年連続2万台越え)のボディバリエーションは今や5種類もある。エンジンはガソリン、ディーゼル、PHEV。その頂点に君臨していたのがJCWだった。MINI JCW GPはさらにその上を行く。公式デビューは昨年11月のロサンジェルスショー。そのモデルが日本で初お披露目された。
なぜか0-100km/h加速も最高度も違う
ただし、このミニ JCW GPの存在は昨年11月のクラブマンのマイナーチェンジの時に公表されていた。話はあれども姿は見えず……少々モワっとしていたこの情報の実体をこの日、確かめることができた。
発表会場は日本科学未来館(最近何かと話題にのぼる湾岸署のすぐ近くだ)の地下駐車場。駐車場だから暗い。狭いプレス席の前を5台のミニが前後に並んで走る。先頭は3ドアのJCW GP。赤いチンスポイラーとカーボンファイバーと思われる前後のオーバーフェンダーが目立つ。ただしそれに続く4台はJCW GPではない。試乗用に用意された231psの現行JCWである。
そのあとでJCW GPのプレゼンテーションが始まった。まずエンジン。なぜこんなにパワーアップができたか?
クランクシャフト、ベアリング、ピストン、コネクティングロッド、オイル供給とクーリングの両システムなどを最適化してこの最高出力と450Nmの最大トルクを得たと言う。さらに8速ATにトルセンLSD(機械式リミテッドスリップデフ)も備える
3ドアJCW GPの0ー100m/h加速は5.2秒、最高速度は265km/hと説明された。ここでちょっと疑問が生じる。同じエンジンを積むクラブマンGP Inspired Editionの0−100km/h加速は4.9秒、最高速度は250km/hだと言う。0−100m/h加速はクラブマンの方が、最高速度は3ドアの方が速い。後で聞くと「エンジン自体は基本的に両車に差はない」(アイリーン・ニッケイン・マネージャー)そうだから、おそらくこの差はギア比や車重によるものだろう。
目一杯スポーティに見える演出、成功
この日、撮影用に用意されたのは3ドアのGP。フロントビューやカーボン製のホイールアーチもさることながら、正面からでも見えるリアのルーフスポイラーも目を引く。その独特な形状とサイドのGPのロゴ。BMWがこのモデルにかける意気込みがうかがえる。ニュルブルクリンクのテストでは8分を切った(7分56秒)。見かけに恥じない客観的パフォーマンスを達成している。このあたりがやや見掛け倒しのトヨタC-HRなどとは異なる。値段も違うけどね。
ボディカラーは専用のレーシング・グレー・メタリック。見る角度によってグレーからブルーバイオレットに変わる。今までになかった色だ。ホイールアーチカバーにはあえて繊維の編み込みが見えるようにして手作り感を強調する。
3ドアのリアシートは取り外されて2シーターに。一方、クラブマンは5名乗車のまま。とはいえ、過去にJCWに乗った印象はかなり固めだったからファミリーカーとしてはハードな面が残るかもしれない。
それにしても、BMWのミカエラ・キニガー・プロダクトマネッジメント本部長といい、ミニのアイリーン・ニッケインマーケティング・コミュニケーション・マネジャーといい、このインポーターは日本人以外のスタッフの使い方がうまい。分かることはその範囲で説明し、それ以外のことは専門スタッフを紹介する。
両モデルとも限定販売で、3ドアは世界で3000台のうち日本には240台、クラブマンの方は世界限定299台、日本には120台が導入される。消費税込み価格は3ドアが576万円、クラブマンが615万円。3ドアGPの予約注文は受付中。クラブマンGPの予約は3月2日から。納車はともに夏頃になるらしい。
報告:神谷 龍彦
撮影:怒谷 彰久
フロントの赤いスポイラーとグリルのサイドバー、大きなカーボン製ホイールアーチが目を引く。
オーバーフェンダーはカーボン製。それを強調するためもあって編み込みが見えるようにした。
なんといってもこのルーフスポイラーは目立つ。車高はJCW 比10mm、車重も30mm減らした。
ミニ史上最強の2リッターツインターボ。速さはもちろん、エキゾーストサウンドも威勢がいい。
スポーティさと実用性の両立がクラブマンの開発目的。ただしこのモデルは試乗用の現行車。
こちらも試乗用に用意された現行コンバーチブル。思ったよりも乗り心地がよかった。