ルノー メガーヌ R.S.トロフィー
279psから一挙に300psに。ターボベアリングはセラミック

 ちょっと凄い! R.S. (ルノースポール)に比べて一挙に21psのパワーアップだ。ルノー メガーヌ R.S.トロフィー。スポーティモデルのメガーヌ R.S.よりもさらにスポーティなバージョンとしてデビューした。
 R.S.がワインディングロードを快走するモデルだとすれば、トロフィーはサーキット走行も目指したホットなモデル。ところがこのトロフィー、これまでの経験からすると、意外と公道でも使える。極上とは言えないが乗り心地も悪くない。これも凄い。
 エンジンは1.8リッター直噴ターボ。R.S.の最高出力は279psだったが、これを300psに向上させた。最大トルクももちろん増えた。6速MT車はプラス10Nm、6速AT車(6EDC)は30Nmアップして、それぞれ400Nm、420Nm。おそらく低速での扱いやすさも向上しているだろう。
 ターボチャージャーのボール素材はF1でも使われているセラミックに変えた。スチールベアリングよりも軽く、硬く、滑らか。スチールボールに比べて摩擦が3分の1減った。この結果、ターボのレスポンスは飛躍的に向上したという。
 エンジンノートに対する配慮も抜かりない。アクティブバルブ付きエキゾーストが採用された。マフラー内の2つの排気ルートの一つ一つに機械式バルブが取り付けられ、バルブが閉じた状態だと中周波数が最適化され日常使用に適したサウンドに、バルブが開いた状態だと豪快なエンジンサウンドが楽しめる。このエンジンサウンドを楽しむためもあって、リアのセンターに逆台形のテールパイプを見せる。

優れた安定性を生む4輪操舵、接地性の高い4HCCダンパー

 メガーヌR.S.はもともとかなりスポーティなモデルで、ルノーが「4コントロール」と呼ぶ4輪操舵を備えている。後輪の操舵角は2.7度で、60km/h(レースモードでは100km/h)以下では逆位相に、それ以上では同位相に切れる。つまり、安定したコーナリングと小回りができ、なおかつ高速での操安性にも優れるということ。
 もう一つの特徴は「4HCC」だ。HCCはハイドロリック・コンプレッション・コントロールの略。これはラリーからのフィードバックだとルノーは言う。ダンパーの底部にセカンダリー・ダンパーを配してメインダンパーのストロークを制限する。あらゆる路面への対応が速く、突き上げ感がほとんどない。
 これらの装備に加え、トロフィーはシャシーカップレベルまでダンパーの減衰力を高め、フロントアンチロールバーの剛性もアップさせている。また前輪にはよりアグレッシブにアクセル操作に対応する「トルセンデフ」も装備する。 室内に目をやれば、レカロとルノーが共同開発したフロント・バケットシートが目に付く。ステアリングホイールにはナパレザーとアルカンタラが使われている。MT車のサイドブレーキは手動だ。
 R.S.自体がスポーツに特化した特殊なモデルというせいもあってか、日本はR.S.の3番目の市場だという。トップはフランス、その次がドイツ、3位が日本で、それにスイス、オーストラリアと続く。とは言え日本での知名度はそれほど高くはない。しかし、一度乗ってみると日本車とは違う微妙な味付けが新鮮に映ると思う。税込み価格はEDC仕様が499万円、MTが489万円。発売は10月31日から。

報告:神谷龍彦
写真:佐久間健

トロフィーRがシビックタイプRの持っていたニュルブルクリンク量産FF最速タイムをこの4月に更新。

写真ではちょっと見にくいが、センターの逆台形がエキゾーストテールパイプ。音を選べる。

R.S.と言えばイメージ的にはこの色か。ドアミラーの奥はF1のために来日したヒュルケンベルグ選手。

ターボのボールベアリング素材をセラミックするなどの改良で300psを得た。R

S.史上もっともターボのボールベアリング素材をセラミックするなどの改良で300psを得た。R

S.史上もっともパワフル。

ルノーとレカロが共同開発した本格的バケットシート。サーキットでは頼もしい味方になってくれる。


最終更新日:2019/10/11