日産 スカイライン
NISSAN SKYLINE

DRIVING is BELIEVING

 「家にはスカイラインがありました。わたしが自分のお金で最初に買ったクルマもスカイラインでした。R32(8代目 1989年〜)と呼ばれたモデルです」
 今や完全に新車紹介プレゼンテーションの顔になった星野朝子副社長が熱心に語る。それだけ今度のスカイラインは日産にとって重要なモデルなのだ。ブランド名もインフィニティからNISSANに戻した。
 ぼくも学生時代にスカイライン(3代目)に乗っていた。残念ながら自分の金ではなくて親父に買ってもらったモノだったけど。当時、サーキットではスカイラインとサバンナが大接戦を演じていた。FISCOの記者席でその激戦を見て何度胸を熱くしたことか。
 星野副社長はそんなの自分の目では見ていないだろうなとチラッと思った。ボクの青春へのしょうもない憧憬と積み重ねてしまった年齢の傲慢さから湧き出した想いである。

手放し運転可能。でもちゃんと前を見てること
 新型スカイラインのエンジンは2種類。3.5ℓV6エンジン(225 kW/306ps)&モーター(50kW/68ps)を積むハイブリッドと、3ℓV6ターボ(224kW/306ps)を搭載するV6ターボだ。グレード名には基本的にGTが付く。405psの3ℓV6を積む「400R」というスポーティモデルも新たに追加された。
 発表会でのトークセッションのゲストはフェンシングで有名な太田雄貴氏だった。彼が事前に試乗した時のビデオとともに、壇上で「プロパイロット(ProPILOT)2.0」に対する感想が語られた。これが意外と面白かった。
 太田氏「いやー、改めてビデオで見ると、なんか、ぼく、ワーッ、ワーッて叫んでるばっかりですね。クルマが自動で車線変更して、追い越して、また戻る。手だけでなく足もフリーになる。実際、驚きました。最初の1、2分は正直言って怖かったくらいです」
 初めて運転支援車に乗った人の正直な感想だろう。初代のプロパイロットを装着したセレナをドライブした時はボクもあまり信用できず、九州の高速道路をかなりおそるおそる走った。
 星野氏「わたし、運転には少し自信のある方だったんですが、プロパイロット2.0を搭載したクルマに乗って、自分の運転が下手だってのを教えられました。セレナでもプロパロット装着率がいまだに上がってきているんですよ」
 太田氏「道の上に線路があるような感じです。しかも、“車線変更しますか”とか“追い越ししますか”とクルマの方から聞いてくる。心の準備ができますよね。車線変更は簡単です。ハンドル右下のブルーのスイッチを押すだけ。こちらが反応しなければそれまでの走行状態を続けます」
 新搭載のインテリジェント・ダイナミック・サスペンションは減衰力を緻密にコントロールし路面の凹凸にほとんど影響されないらしい。ダイレクト・アダプティブ・ステアリングは操舵初めのレスポンスを向上させ、ライントレース性を高め、同時に低速から中速での操舵の過敏さを低減したという。いくつものセンサー、レーダー、カメラのほかに高精度の3D地図データ(ゼンリン)などにより、前後に1m左右に5cmの精度でクルマの位置関係を制御する。

ダマされたと思って乗ってみて下さい!
 プロパイロット2.0の運転支援技術の詳細はすでに紹介している(5月)が、改めて解説しておこう。これまでのプロパイロットとどう違うのか。プロパイロットは、インテリジェント・クルーズ・コントロールによる追従走行支援技術とハンドル支援による車線中央維持支援機能を備えていた。 プロパイロット2.0には新機能として■同一車線内ハンズオフ機能と■ルート走行中の車線変更と分岐の支援機能が加わった。両者ともにプロパイロット同様、高速道路であることが大前提だ。これらの機能はブレーキやステアリングを操作すれば解除される。
 同一車線内ハンズオフ機能はBMWにもあるがあちらは60km/h以下で作動する。試乗した経験からいうと、BMWに限らず欧州のレーンキープ機能は少し強い。ちょっと強引だ。クルマがハンドル操作をしているのが分かりやすいようにという見解もあるが、これからはこの辺りのセッティングの微妙な強弱も選択の大きな要素になるだろう。
 ハンズオフできるのは、高速道路の本線を走っているときにドライバーが常に前に注意を払い、システムから求められればすぐにハンドルを操作できる状況にあることが必要だ。この辺りは車内の赤外線カメラがドライバーを見張っている。
 複数車線での追い越し等にはまずカーナビゲーションにルートを入れなければならない。高速道路上に乗って、走行中に前のクルマに追いつきそうになったり、設定した目的地に向かうために分岐点で車線変更が必要なったりすると、タイミングを見計らってクルマの方から「車線変更しますか」と提案してくれる。OKの場合はステアリングホイールを握り、ハンドル右下のスイッチを押せばいい。クルマの360度センサーが周囲の安全性を見極めて自動でレーンを変更してくれる。
元の車線への復帰も自動だ。ただし、対面通行、トンネル内、カーブ、料金所・合流・車線数減少の地点やその手前ではハンズオフできない。その区間に入ると事前にドライバーに知らせるのでハンドル操作をする必要がある。
 さらに、システムの警報に反応せずにいると車両を緊急停止させ専用のオペレーターに自動接続する「プロパイロット緊急停止時SOSコール」も搭載されている。
 「ダマされたと思っていちど試乗してみてください」と太田氏。
 「試乗車はできるだけ多く用意しました。ぜひディーラーで試してください」と星野氏。
 価格はハイブリッドが547万4520円(GT/2WD)〜632万7720円(GTタイプSP/4WD)、V6ターボが427万4640円〜481万8960円、400Rは552万3120円。発売は9月からだ。

報告:神谷龍彦
写真:佐久間健

フロントには日産ブランドの象徴でもあるVモーショングリルを採用。新スポーティモデルの顔だ。

新色のカーマインドレッド。実際には写真よりはるかに深く美しい発色だった。

リアの丸型4灯ランプはプリンス時代から数えて4代目(ケン&メリー)で採用。11代目で一時消滅したがマイナーチェンジでまずクーペで復活。現行スカイラインは13代目にあたる。全長4810mm全幅1820mm。

インテリアはプレミアムセダンらしい落ち着きがある。でも、新しさという面では突出していない。

3.5ℓV6とモーターを組み合わせたハイブリッド。プロパイロット2.0はハイブリッド車のみ。

手前がフェンシングで活躍した太田雄貴氏。奥が星野副社長。太田氏の素直な感想が面白かった。


最終更新日:2019/07/25