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新型ワゴンRはFA、FX、FZの3グレード、スティグレーもL、X、Tの3グレードがある。今回試乗したのはNA(自然吸気)のなかでは最上級のHYBRID FZと、ターボ仕様のスティングレーHYBRID Tである。
アルトから始まった新プラットフォーム「ハーテクト」を採用したワゴンRは剛性を上げながら最大で20kgの軽量化がなされているが、FZについては旧型と変わっていない790kgで、スティングレーTが20kg軽い800kgとなっている。
新型スイフトが新プラットフォームにして120kgも軽量化されたのに比べると、もっと軽くなってもいいように感じるが、先代のモデルで50kgもの軽量化をしているので、今回はそう大幅な軽量化とはならなかったようだ。それでも充実装備のFZ(2WD)が800kgを切るのだから軽ワゴンとしてはトップクラスの軽さといえる。リチウムイオン電池ほか各種新装備部品など重くなっている分があるので、それらの分をシャシー・ボディーその他で吸収しているわけだ。
ワゴンRは元々軽ワゴントップクラスの燃費性能を持っていたが、今回わずかながらさらに向上させ33.4km/Lとしている。これはSエネチャージを強化したマイルドハイブリッドによるところが大きいのだろう。ISGとリチウムイオン電池の強化によりモーター走行も初めて可能とした。といってもクリープ走行だけだが、車庫入れなど前進や後退を低速で行なうときには便利だ。アイドリングストップ時にうっかり足が緩んでもすぐにエンジンが再始動することがない。
逆に通常の発進ではアクセルを踏んだ途端にエンジンが再始動するので、モーターでの発進ということには事実上ならない。強化されたとはいえ12Vのベルト駆動ISGによるシステムではそれは望むべくもない。いずれにしろ、実際にはこのマイルドハイブリッドは知らないうちに燃費に好影響を与えている、といったものと解釈すべきと思う。ただ、ベルトによるエンジン再始動は実に滑らで気持ちがよい。
エンジンはR06A型、トランスミッションもすべて副変速機付きCVTで、基本的に従来と変わっていない。ターボ車のスティングレーは十分な加速感が味わえるが、NAのFZは目いっぱい踏み込んだ時にはやや物足りなさを感じる。ファイナルレシオを従来の4.7から4.1に下げた(燃費に振った)こともありそうだ。もちろん街中を普通に走っている分には問題ないが、高速道路への進入では早めに加速体制に入る気遣いがいる。ブレーキは踏み応えもこの種の車両としてはよいし、ISGの回生が介入するわけだが、それは全く感じさせず違和感がない。
もう限度と思われていた室内空間は、室内長、室内幅がさらに広がった。これも新プラットフォームによるものだという。なお、室内ではインストルメントパネルが全く変わっり、センターメーターとされた。スピード、タコともこのメーター類はたいへん見やすい。正面位置よりやや離れているので目の焦点調整も楽でよい。ただ、そのためにナビがそれより下の位置に配置されたのが残念。スピードや時刻、チャンネル等の確認は一瞬で済むが、ナビ画面は数秒間見続ける可能性が高い。安全性からもできるだけ視線を落とさないで見られるよう高い位置に配置してほしい。今回セーフティパッケージとしてヘッドアップディスプレイが設定されているが、これはまさに視線を落とさずに目視できることの重要性を具現化したものだ。
この種の車両の収納に対する工夫は感心するばかりであるが、新型で秀逸なのは濡れた傘の滴が車外に排出されるアンブレラホルダー。軽では初という。リアドアの付け根にあるので、ドライバーがフロントドア側から差し込むこともできる。安全面では自動ブレーキや誤発進抑制をはじめとした安全機能をセーフティパッケージとして用意している。価格はワゴンRの107万8920円〜147万960円、スティングレーの129万3840円〜177万9840円。
報告:飯塚昭三
撮影:佐久間健