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120kgの軽量化を達成したニュー・プラットフォーム(HERTECT)もいい、全モデルとも基本的に乗り心地は悪くない、運転席に5度ほど傾けられた内装も好感が持てる、円筒の奥に納まったスピードメーターとタコメーターも見やすい。しかし──。
4代目スイフトの特徴の一つは、先代では特別仕様車だった「RS」がカタログモデルになったことだ。シリーズ全体のモデル展開は、1.2ℓ直4(91ps)、マイルドハイブリッドの1.2ℓ直4+モーター(3.1kgm)が基本である。RSにもこれらのエンジンが用意されている。
RSにはさらに1ℓターボ(102ps)3気筒もある。グレード名はRStという。バレーノの1ℓターボと基本的に同じエンジンだがパワーは9ps少ない。その理由はバレーノがハイオク仕様であるのに対してスイフトはレギュラー仕様であること。
トランスミッションはRStのみ6速ATになる。ほかは5速MTかCVTだ。RStはシリーズ最強バージョンではあるが、RS自体は単純にスポーティグレードではないのだ。
乗り心地は相当良くなった。RSは若干固いが、特に不満というほどではない。RS以外はかなり柔らかいが、一般道や街中ではこれで問題はない。
この差は足回りのセッティングした場所による。RSは先代同様ドイツをはじめとするヨーロッパで、それ以外のグレードは日本でチューニングされた。ダンパーやパワーステアリングのセッティングが異なる。足回りは単純に硬軟の問題ではない。パワーとのバランスもさることながら、使われ方に大いに影響される。街中では柔らかいほうがいい。
1ℓターボのノイズはバレーノよりも少ない。ただ、急加速時のターボ音を気にする人もあるかもしれない。ターボだからパワーよりもトルクが重要。スイフトの1ℓターボの最大トルクは15.3kgm、これを1700〜4500回転でフラットに発生する。これは先代スイフトの1.6ℓ自然吸気に勝る。ただし高回転の出力は実感としても劣る。
RStの6速ATはCVTのようなフルスロットル時のタイムラグがなくていいのだが、シフトレバーを勢いよく上から下に引くと、Dを通り越して一番手前のM(マニュアル)ポジションに入るケースがあった。他のグレードのMTは各ギアへの入りはスムーズだが、そのあとのグニャグニャ感が少し気になった。
1.2ℓは標準的な性能。ここでもボディの軽さが活きる。この軽量化(840〜970kg)はまさにスズキらしく、各部の見直しを図った結果だ。超抗張力鋼板を増やすといったような手法ではここまでできない。
バレーノとどこが違うのか? メーカーは「バレーノはファミリー向き、スイフトはよりパーソナル」と説明する。基本的的にのんびりドライブがしたければバレーノ。ハンドリングも素直だし乗り心地もいい。派手さはないが、けっこうおすすめのインド生産車だ。
じゃあスイフトがパーソナルかというとちょっと疑問符が付く。パーソナル=スポーティと解釈すれば、物足りない。販売台数は少ないかもしれないが、スイフト・スポーツのようなイメージ・リーダー・モデルが必要だと思う。6速MTでもっとパワーもある──。実際、年内には発売されるという噂もある。世界で楽々500万台以上売ったモデルなのだから、期待値は高い。というよりそれだけ期待させるクルマなのだ。
価格は134万3520(XG 2WD)〜184万5720円ハイブリッドRS 4WD)
報告:神谷龍彦
撮影:佐久間健