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前方にコーナーが見えてきた。そろそろステアリングを切ってくれなければと思うが、クルマは真っすぐ進んでいる。一瞬、手に力が入ってしまった──日産セレナに搭載された「プロパイロット」に乗った時、最初に感じた違和感である。
通常、コーナーが見えてくると、ステアリングを右コーナーなら右へ、左コーナーなら左へ、少し早めに切り込んでしまう感覚がある。そのため、頭の中の考えと、クルマの動作が一致しない。「どうして」と思ってしまう。しかし、プロパイロットという機構は、白線を認識して走行車線の中央を走るような仕組みになっている。コーナーだろうが、正確にそれをトレースするため、今までの常識は通用しない。でも、しばらくすると慣れてしまい、その感じを受け入れていた。
このシステムは、高速道路もしくは自動車専用道路での使用が前提で、車速が30キロから100キロの範囲で設定できると説明されている。機能としては一般道路でも白線を認識できれば使えることが試して分かったが、とりあえず高速道路へはいってみる。
まず、前を走るクルマをキャッチして、ステアリングの右側にある「プロパイロットスイッチ」を押す。同時に前面のモニターにスタンバイ状態の画面が表示される。続いて「セットスイッチ」を入れ、しばらくして画面のモニターがブルーに変わると作動がはじまる。
ステアリングが微妙な振動をはじめる。機械的なカクカクとした動きだ。たえず走行車線の中央を走るため、左右の白線を感知して微調整しているためか。自車は前を走るクルマとの車間距離を把握して、減速したり、スピードを上げたりする。
割り込みがあったりするとシステムは一旦停止するが、セットスイッチかレジュームボタンを押すと追従を開始する。割合スムーズに動いてくれる。コーナーでもだんだん違和感がなくなる。でも、かなりきついカーブでは、手で動かさないと曲がり切れないことがあった。やや不安を感じた。
ところで、自動運転だからステアリングから手を放しても大丈夫と思いがちだが、約5秒で警告表示と音がなり、さらに10秒ぐらいするとシステムは解除されてしまう。でも、渋滞時や、長距離ドライブでは役立つ機能だと感じた。
困ったこともあった。自分が運転しているときはあまり意識しないが、自動で運転されていると思うと、手の置き場所にとまどってしまう。ただ軽くそえていればいいのだが、試乗後、腕の疲れを感じたのは自分だけだろうか。しかし、将来の自動運転に向かっての第一歩が踏み出されたことは確かである。楽しみがましたといえる。
報告:小川麒文
撮影:佐久間健