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エクストレイルといえば、クリーンディーゼル(ポスト新長期規制に適合したディーゼルの称号)の魁として2009年にディーゼル仕様を発売したが、残念ながら国内での販売が現在はなくなり、それに代わる形でハイブリッド仕様が登場した。ハイブリッドの形式はフーガやスカイラインのハイブリッドと同様、エンジンとトランスミッションの間にモーターを挟んだオーソドックスな形式である。ただ、エクストレイルは4WDもあるがFFが基本であり、異なる部分は多い。まずFRではトランスミッションがATであるが、エクストレイルはベルト式CVTである。日産のFFハイブリッド車は国内では初めてだが、北米ではすでにパスワインダーのHVが市販されており、経験は積んでいる。
ハイブリッドシステムはジャトコとの共同開発によるもので、モーターの前後にクラッチを設けた1モーター2クラッチの方式であり、ハイブリッドの基本形である。1モーター1クラッチはホンダのIMAの例があるくらいで、2クラッチは特別なことではなく普通である。だがこれでも制御によりいろいろな作動が可能だ。まずEV走行、モーターがエンジンをアシストするハイブリッド走行。基本エンジンだけの走行などができる。また、減速時の回生はもちろん、停車中にモーターを発電機として使いバッテリーに充電もできる。
試乗は都内であったが、EV走行を試してみるべく裏道でごくゆっくりスタートしてみた。事前の説明ではかなりの割合でEV走行が可能とのことであったが、アイドリングストップ状態からごくゆっくりアクセルを踏んでもエンジンが直ぐに掛かってしまい、なかなかEV走行ができない。後に他の試乗者に聞いてみたら、決してそのようなことはなくEV走行ができたとのことだった。たまたま車両に個体差があったのか?よく分からないまま終わってしまった。
モーターは30kWで138kWのエンジンをアシストする。それほど大きなパワーではないがモーターの特性としてトルクは160Nmと大きく、エンジンの207Nmを強くアシストする。モーターのトルクは0回転から最大トルクを発揮するので、低速回転が苦手なエンジンをよくカバーするのがハイブリッドの特徴だ。したがって発進加速はなかなかよい。ディーゼルのような荒々しい力強さではなく、静かで滑らかな気持ちよい加速感である。
ステアリングに違和感はなかったが、ブレーキフィールは軟らかすぎると感じた。軽く踏んでも効くわけだが、強く踏むとペダルは大きく沈み込んでいく。SUVに分類される車両であるのだから、もっとカチッとした踏み応えでよいのではと感じた。不満ついでに言っておくとナビ画面の位置が低すぎる。安全上からなるべく視線を落とさずに見ることができるようにもっと高い位置にすべきだと思った。
注目すべきニューテクノロジーも搭載
今回の試乗条件では試すことができなかったが、このエクストレイルは世界初をうたう技術「アクティブライドコントロール」と「アクティブエンジンブレーキ」を備えている。前者は駆動力とブレーキの制御で路面状況による姿勢変化を押さえるというもの。事前の路面変化をセンシングするわけではなく事後の対応により制御する。小さな姿勢変化はエンジン駆動力で抑制、大きな揺れはエンジンとブレーキで抑制するという。瞬時の制御が可能なモーター特性を生かしたハイブリッド車のものかと思ったら、通常のガソリン車にも備わっているということで、あくまでもエンジンとブレーキによるものらしい。後者のほうはアクセル開度の変化や加減速の変化からワインディングや下り坂を感知し、自動的にエンジンブレーキを強めに効かせてくれるというもの。また、コーナリング時に4輪のブレーキを個別に制御し思い通りのラインをトレースやすくした「コーナリングスタビリティアシスト」と称する機能もある。いずれもドライビングの負担を減らすものだ。
このほか、アクティブセイフティとして歩行者をも検知して衝突回避支援や走行車線逸脱への警告などの機能を持つ「エマージェンシーブレーキパッケージ」も用意されている。さらにいわゆる車庫入れと駐車等を支援する「アラウンドビューモニター」や「インテリジェントパーキングアシスト」といったオプションも用意されている。4WDもあるので雪道にも対応しておりアウトドア派には手ごろな選択肢の一つだ。
PHOTO:怒谷 彰久