アルファード&ヴェル

2.4Lモデルがお買い得の快適ミニバン!!



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 先代アルファードは、トヨペット店とネッツ店の両方で扱っていた。それが現行型では、トヨペット店がアルファード、ネッツ店がヴェルファイアと車名を区分している。別車種といってもエンジンなどのメカニズムは共通で、グレード構成や装備内容、価格まで等しい。異なるのはフロントマスクなど内外装の一部と、車名やグレード名程度だ。

 かつてのトヨタ車には、マークII/チェイサー/クレスタのような姉妹車がたくさんあった。それが近年は減少している。どうして今さらアルファード&ヴェルファイアなのか。

 先代アルファードは、トヨペット店とネッツ店がほぼ半数ずつ売っていた。ファミリー向けのミニバンという性格からすればトヨペット店向けだが、ネッツ店は旧ビスタ店を吸収したから店舗数が多い。トヨペット店の1000店舗に対し、1600店舗のネットワークを誇る。その結果、両ディーラーの販売台数が均衡した。

 しかもネッツ店は若年層向けのディーラーだから、ユーザーの平均年齢も若い。先代型のデータを見ると、ネッツ店で売られたアルファードの約47%を30代以下の男性が購入している。トヨペット店は41%だ。

 若年層のクルマ離れが課題になる昨今、「30代以下に好調に売れる高価格車」は貴重な存在。国内専売モデルでもあるから、ここは徹底的に攻めるしかない。そこでトヨペット店はファミリー指向のアルファード、ネッツ店は若年指向を強めたヴェルファイアとしてデザインの区分を明確化し、さらなる拡販に乗り出した。ミドルサイズミニバンのヴォクシー&ノアが、同様の姉妹車戦略で成功したことも多分に影響していると思う。

 この戦略は見事に奏効し、発売後1か月の受注台数はアルファードが約1万6000台、ヴェルファイアが約2万台に達した。コンパクトカーやミドルサイズ以下のミニバンなど、収益性の低いクルマばかり売れる昨今、アルファード&ヴェルファイアが販売会社にもたらすメリットは大きい。もちろんユーザーも同じことだ。メリットの多いクルマだからこそ好調に売れる。

 ボディのサイズや基本スタイルは先代型に近い。正確にいえば変えようがない。ボディをさらに大型化すれば取りまわし性が悪化するし、カッコ良い方向に発展させれば車内が狭まって共通のプラットフォームを使うエスティマとの違いが曖昧になる。何より先代型が高い支持を得たから、2代目も踏襲することになった。
 もっとも、プラットフォームを現行エスティマと同じタイプに刷新したから、床が55mm下がって全高も45mm低くできた。ちなみにエスティマの場合は、先代型と現行型で床の位置を比べると20mmしか下がっていないが、アルファード&ヴェルファイアは55mm。こうなった理由は、かつてのグランビアが売れず、先代型は外観を立派に見せることに執着したからだ。つまり先代型はわざと床を高めてルーフも持ち上げる無理をしたが、ヒットしたことで現行型はその必要性が薄れ、床を大幅に引き下げた。

 これは好ましい発展だ。重量級のミニバンでルーフを高めれば、ハンドリングが極端に腰高になる。従って低く下げた現行アルファード&ヴェルファイアは、かなりバランスが向上した。ボディ剛性をエスティマより強化したこともあり、危険回避の操作を行っても不安定な挙動には陥りにくい。サスペンションがソフトな設定だから揺り返しは相応に拡大するが、挙動変化の仕方を穏やかに抑え、後輪の動きも落ち着かせた。タイヤのグリップ力は失われにくい。

 走行安定性と乗り心地のバランスで注意すべきは、タイヤの選択だ。エンジンは直列4気筒の2400ccとV型6気筒の3500ccを設定し、前者については16/17インチが良い。スポーティグレードが装着する18インチだと操舵に対する反応が少々過敏になり、乗り心地も粗くなってしまう。

 一方、3500ccモデルは選択が難しい。V6エンジンの搭載でフロント側の荷重が60kgほど上まわり、17インチでは走行状態によっては前輪のグリップ不足を感じるからだ。この場合は18インチが良い。グリップ力が向上し、重量の増加によって乗り心地の粗さは緩和される。  車両重量に見合うエンジンは、少々高回転指向になるものの3500cc。発進加速も十分で、4700回転を超えると車速の伸びが活発になる。

 もっとも、売れ筋の2400ccも悪くない。ATが先代型の4速タイプに対して無段変速式のCVTに変わり、滑らかな加速とエンジンパワーの有効活用を可能にしたからだ。車両本体価格は左側の電動スライドドア、16インチのアルミホイールなどを備えた240X/2.4Xが300万円。ファミリーユーザーの購入を考えれば、このグレードが妥当だろう。メーカーオプションのカーナビは安いタイプでも52.5万円だから、上級グレードを買うと400〜500万円コースになってしまう。

 車内は先代型と同様に広い。注意したいのはセパレートタイプの2列目シートだ。オットマンを収めるために座面の前端が硬く、しかも着座姿勢を安定すべく前側を持ち上げた。小柄な乗員が座ると大腿部を押された感覚になりやすい。

 また、3列目は格納時の荷室面積を広げるために、左右に跳ね上げる方式を採用。2列目とは逆に座面が水平に近く、ボリューム感もいまひとつ。頭上や足元空の間が広いので快適に座れるが、体のサポート性はベストとはいえない。

 アルファード&ヴェルファイアの性格を踏まえると、3列目シートは、エリシオンのように座面だけを持ち上げて前側スライドさせるタイプが良い。格納時の荷室は奥行寸法が少し不足するが、跳ね上げない分、シート本体をしっかり造り込めるからだ。このクルマでは、多人数乗車時の快適性を追求すべきだろう。

 それでも国産ミニバンの中で見れば、かなり快適な部類。頻繁に多人数で乗車し、長距離ドライブに出かける機会の多いユーザーにはピッタリだ。

 その反面、視線の位置が高めでボディも大柄だから、ボディ側面の死角は大きめだ。街中での運転には気を使う。セカンドカーが必要だろう。

(写真提供:カーアンドレジャーニュース)

最終更新:2010/04/24