「ルノー キャプチャーのハイブリッド2モデルを乗り比べ」

フルハイブリッドのEテック。フロントまわりのデザインは一新され、なかなか精悍な顔つきになった。

リアまわりではテールランプがクリアレンズ化され、新デザインのバンパーがより現代的な印象を感じさせる。

1.6Lの直4エンジンに2モーターとマルチモードATを組み合わせたフルハイブリッドのEテックは、輸入車SUV No.1の燃費を誇る。


10.4インチの縦型タッチスクリーンが目をひくインテリア。トリコロールのステッチやブルーのアクセントがオシャレ。

マイルドハイブリッドもフロントビューはEテックと同じ。適度なサイズに高いアイポイントで運転しやすい。

1.3Lの直4ターボエンジンに補助モーターを組み合わせたマイルドハイブリッド。駆動方式はEテックと同じFFとなる。


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 ルノーのコンパクトSUV「キャプチャー(CAPTUR)」がビッグマイナーチェンジされた。従来型の日本仕様はフルハイブリッドのEテック(E-TECH)と1.3Lターボの2モデルだったが、マイナーチェンジではEテックと1.3Lターボ+補助モーターのBSG(ベルト スターター ジェネレーター)によるマイルドハイブリッド(以下、MHV)の2モデルとなった。

 今回、この2台のハイブリッド車を別の機会ではあるがショートトリップで試乗できたので、マイナーチェンジの内容や走りの印象などを報告しておきたい。

フルハイブリッドのEテックにマイルドハイブリッドも追加

 ルノーのBセグメントSUV、キャプチャーは初代が2013年に発表(日本仕様は2014年に発売)され、現行型は2019年に発表(同じく2021年に発売)された2代目となる。欧州市場では三菱 ASXとしてOEM供給されているが、これは今のところ日本に導入される予定はない。

 初代は2014年に、現行型も2020年に欧州コンパクトSUV販売台数No.1を獲得するなど、これまでに世界で200万台以上を販売している。日本市場でも、ルノー車では一番人気を誇っている。

 この夏に日本にも導入されたキャプチャーは、ルノー・ジャポンが「新型」と謳うほどのビッグマイナーチェンジが施された。

 まず、フロントまわりは新たにルノーのデザイン責任者となったジル・ヴィダルのデザインテイストが反映された。多面的なグリル中央にルノーの新しいロゴ(ロサンジュ)を、それを囲むようにバンパー上部とグリルにブロック模様を配し、光が反射するとロサンジュから波模様が広がるような視覚効果がある。

 LEDヘッドランプは薄型となり、ブランドロゴをインスパイアした縦長のハーフダイヤモンド型デイタイムランニングランプ(DRL)も特徴的。キーを持ってクルマに近づくと、このDRLが点灯して「散歩に連れて行ってもらえる!」と喜んで主人を待っている愛犬のようで、なかなか可愛げがある。

 顔つきを一新したが、従来からのボディスタイルとのマッチングは悪くない。今後のルノー車は同じようなフロントマスクを採用すると思われるが、個性的ながらもアクの強さは抑えており、万人受けしやすいのではないだろうか。

「アルピーヌ」を意識させるスポーティでオシャレなインテリア

 日本仕様の新しいラインナップは、Eテックは兄貴分の「アルカナ」などに設定される「エスプリ アルピーヌ」グレードとなり、マイルドハイブリッドはこれとエントリーグレードの「テクノ」の2グレードとなる。今回、試乗したのはEテック/MHVともエスプリ アルピーヌ。したがって、内外装の仕様はほとんど同じ。外観の違いはEテックが右テールランプ下に小さな「E-TECH HYBRID」のエンブレムが付くくらいだ。

 運転席に乗り込むと、10.4インチと従来型より大きくなったダッシュボード中央のタッチスクリーンが目をひく。これはスマートフォンとワイヤレスでの接続が可能だ。

 エスプリ アルピーヌでは、アルピーヌのロゴ入りバイオスキン&ファブリックのコンビシート(運転席は電動)、TEPレザーのステアリングホイールやセンターコンソールなどにはトリコロールのステッチ、そしてトリコロールのオーナメントやサイドパイピングなど、「フランス」「アルピーヌ」「スポーティ」を感じさせるアクセントをふんだんに用いているところがオシャレでセンスもいい。

 リアシートは前後に16cmもスライドするし、ラゲッジルーム容量もEテックで440L、MHVは536Lと、欧州BセグメントSUVとしてはトップクラスの広さがあり、おとな4人での宿泊旅行などにも十分に対応してくれる。

 運転支援システムでは、エマージェンシーレーンキープアシストやドアオープニングアラートなども新設定。快適装備でもスマートフォンのワイヤレスチャージャーやステアリングホイール&前席ヒーターなど、このクラスとしては必要十分なレベルにある。

見た目は変わらないが、走りっぷりはけっこう違う

 Eテックのパワートレーンは従来型と基本的に変わらない。1.6Lエンジンに2つのモーター、電子制御ドッグクラッチマルチモードAT(エンジン側に4速、モーター側に2速)を組み合わせる。発進はモーターで、速度が上がっていくとエンジンも始動し、市街地走行レベルでは頻繁にエンジンとモーターを使い分け(あるいは併用して)走るのだが、変速やパワートレーンの切り換えによるショックはほとんどない。

 高速走行時はエンジンが主体となり、追い越し加速などではモーターがアシストする。いずれの状況でも、そのシームレスな加速はEVを彷彿とさせるほど。メーター内に表示されるインジケーターを見ていると、エネルギーフローは頻繁に変わっているのが分かるのだが、これを見ない限りはほとんど分からない。

 また、今回のビッグマイナーチェンジでタイヤサイズは45偏平の19インチにアップしたが、乗り心地は従来型と変わらず、不整路面などのいなし方もうまい。乗り味は後述するMHVよりしっかりした印象で、静粛性も高いようだ。

 1.3Lターボエンジンに補助モーターを組み合わせたMHVは、Eテックより車両重量が90kgも軽いため、ターボエンジンによる軽快な走りが楽しめる。発進や加速時にはモーターがアシストし、アイドリングストップやクルージング機能によって燃費向上も図っている。

 組み合わされるトランスミッションは7速DCTで、パドルシフトも備えているので、ワインディングロードなどではマニュアルシフトでターボエンジンの走りを楽しむことも可能だ。

 今回、試乗コースや天候など条件は違うのであくまで参考データだが、燃費はEテックが約202km走行して22.8km/L、MHVが約203km走行して15.8km/Lだった。どちらも、市街地を2割、高速道路を8割ほど走っての車載平均燃費計の数値だ。

 車両価格の差は約46万円。装備はほとんど同じだから、この差はパワートレーンの違いだけ。燃費の良さと乗り心地ならEテックか、価格とファンtoドライブならMHVか。購入を検討しているなら、まずは乗り比べてみて、どちらが自分の好みか確かめてみると良いだろう。


■ ルノー キャプチャー エスプリ アルピーヌ フルハイブリッド Eテック<マイルドハイブリッド>

●全長×全幅×全高:4240×1795×1590mm
●ホイールベース:2640mm
●車両重量:1420kg<1330>
●エンジン:直4 DOHC+2モーター<同ターボ+モーター>
●総排気量:1597cc<1333>
●最高出力:69kW(94ps)/5600rpm<116(158)/5500>
●最大トルク:148Nm(15.1kgm)/3600rpm<270(27.5)/1800>
●モーター最高出力:メイン36kW(49ps)、サブ15kW(20ps)<3.6(5)>
●モーター最大トルク:メイン205Nm(20.9kgm)、サブ50Nm(5.1kgm)<19.2(2.0)>
●トランスミッション:4速AT(エンジン)+2速AT(モーター)<7速DCT>
●駆動方式:横置きFF
●燃料・タンク容量:プレミアム・48L
●WLTCモード燃費:23.3km/L<17.4>
●タイヤサイズ:225/45R19
●車両価格(税込):454万9000円<409万円>

(報告/写真:篠原 政明)

最終更新:2025/09/17