ダイハツ タント (2)
DAIHATSU Tanto

フレンドシップ・シリーズに大注目

助手席シートは30度回転するが、原則としてシート&足共に車幅を越えることはない。乗降に必ずしもドアを全開にする必要もない。この位置のグリップは頼りになる。

後席のラクスマグリップは形状大きさともに扱いやすい。前後シートをカバーするオートステップも実用的だ。これらは大学教授、理学療法士、地域住民との協力から生まれた。

パワークレーン・バーはルーフ下に収まり、積載量にはほとんど影響しない。トヨタにも似たようなクレーンがあるがアチラは縦に柱が立つ。このクレーンはちょっと画期的だ。


クレーンの昇降能力は30kg。特殊な車椅子でない限りOK。車椅子の昇降はクレーンバーの内側にあるこのスイッチで行う。操作がラクであるだけでなく非積載時の空間も確保。

ロングスライドシートで前席後席間の移動が簡単になった。ドライバーが歩道側から降りたり乗り込んだりすることもできる。便利で安全。スイッチはインパネにもシート横にも。

オートパーキングを初体験した。最初はエンジニアが同乗説明してくれた。操作そのものは難しくないが、操作タイミングが少し微妙だった。行き過ぎとかあったりして……。


※画像クリックで拡大表示します。

 当然のごとく新型タントの走りは進化していた。自然吸気は日産のデイズなどに比べるとそれほどでもないが(ハイトとスーパーハイトという車重の違いもある)ターボは速い。しかも静かだ。それ以上に驚かされたのが新プラットフォーム「DNGA」による操縦安定性である。乗り心地もいい。コーナーでもほとんどロールしない。フラットライドの権化だ。そのあたりは緒方会員の試乗記を参考にしていただきたい。ここでは「フレンドシップ・シリーズ」について報告する。

これまでになかったゾーンに投入
 フレンドシップ・シリーズとは福祉車両のことを言う。ダイハツには車いす移動車の「スローパー」と昇降シート車の「ウェルカムシートリフト」がある。これらに今回「ウェルカムターンシート」という新商品が加わった。
 その機能を「シームレス」とダイハツは呼ぶ。継ぎ目のないといったような意味だ。では何がシームレスなのか? これまであった標準車と福祉車両の垣根をなくすのがテーマだ。主な構成要素は「助手席ターンシート」、「ラクスマグリップ」や「ミラクルオートステップ」である。
 高齢者や障害者の要支援・介護のレベルは7段階に分かれる。要支援が2つ、要介護が5つだ。新商品は要支援1&2、要介護1&2の人が主な対象になる。ほぼ自立でき手厚い介護が不要な人(要支援1)、歩いたり両足で立ち上がるときに何らかの助けが必要な人(要支援2)、トイレや食事はほぼできるがわずかに認知症がみられる人(要介護1)、トイレや食事に部分的な助けを必要とし、多少認知症の傾向のある人(要介護2)。
 要介護3以上は、人によって違いはあるが基本的にはスローパー車や乗降シート車の範囲になる。支援、介護レベルの判断は市区町村の介護認定審査委員会がするから、いくぶん差はあるが原則的にはこんな風に分類される。
 ここで重要なのは、これまでの標準車か福祉車両との間にシームレスというモデルを出してきたことだ。これだけシニア世代が増えてくると、今後間違いなくこの分野のモデルは増えてくる。福祉車両という呼称を嫌う人もいるが、フレンドシップ・シリーズの内容はこれらすべてを含む。

安全な回転式助手席、便利なオートステップ
 具体的に説明しよう。
 まず助手席ターンシート。回転する助手席シートは他メーカーにもあるが(ホンダN-WGNなど)、違うのは回転角とグリップ。N-WGNの回転角度は63度、グリップにはとくに工夫はない。一方タントのターンシートの回転角度は30度、しかも乗り降り時に前を見るとフロントピラーのちょうどいい位置に優しい形状のグリップがある。回転角も重要だがグリップの効用も大きい。年を取ると足元がおぼつかなくなりがちだからね。
 工夫はまだある。ドアを全開しなくても乗り降りできるし、シート座面が車外に出ないし、両足が出ないところでシートの回転が止まる。便利で安全だ。大きくて太いラクスマグリップという形状も手に優しい。
 グリップの工夫はこれだけじゃない。助手席シートバックのグリップもそうだ。着衣の袖口を引き込まないような形状で上下に移動も可能だから、助手席用と運転席用の高さを揃えることもできる。実際にやってみると想像以上にスムーズ。ただし、運転席用はディーラーオプションになる。
 もうひと、これはディーラーオプションだが、ミラクルオートステップがある。前後席をカバーするだけの長いサイドステップで、助手席ドアや左側スライドドアに連動して自動的に出入りする。荷重量は100kg。シニアだけでなく子供にも歓迎されそうだ。

日本の軽自動車はアイデアの宝箱だ
 さらに今回追加された装備に「パワークレーン」(ディーラーオプション、昇降シート車はメーカーオプション)。車椅子を電動で昇降させる。これもダイハツが初めてではない。トヨタ車にもある。ただ、ダイハツが新しいのは昇降用のバーを屋根裏に配備したことだ。「私が考えました」と大和(やまと)さんは誇らしげに語る。
 たとえばトヨタのバーは荷室に垂直に立つ。これだと積めるラゲッジ量が減る。対するタントは屋根から引き出せばいいからラゲッジスペースが影響を受けることはない。クレーン昇降能力は30kg。操作はスイッチで上下自由自在だ。
 パワークレーンを例に出すまでもなく、軽自動車はアイデアの宝箱だ。福祉車両とは直接関係ないが、ロングスライドシートもそうだ。運転席が540弌⊇手席が380个皀好薀ぅ匹垢襦この結果、車内での移動の自由度がぐっと増した。運転席から後席に移動して歩道側へ降りることもできるし、安全な歩道側から運転席に座ることもできる。ここでも広いミラクルオープンドアが活きる。
 今や常識ともなった後方誤発進抑制機能を軽自動車で最初につけたのもダイハツだった。福祉車両の面では他の軽自動車を一歩リードした。今後他のメーカーとの競争が始まるとしても、自分でも運転したいと思う、軽い障害を持つシニア向けの新・福祉車両の時代は間違いなくそこまで来ている。

報告:神谷龍彦
写真:佐久間健 怒谷彰久

<神谷 龍彦> 最終更新:2019/08/19