三菱 eKワゴン/eKクロス パート1
MITSUBISHI eK wagon & eK X PART 1

日産との差別化成功。大幅な進化とともに登場

ルノーの800ccベースの新設計のエンジンの出来は上々。静かでスムーズでトルクフルだ。

改良型CVT。スピードとノイズはほぼシンクロするが、急激なアクセルオンには多少タイムラグも。

インパネの質感は軽自動車レベルを超えた。ただ、タッチパネルにはオジさんはまごつくこともある。


後席のニールームは70仗びた。シートの角を丸くして乗降性を向上。2WD、4WDともに床はフラット。

クロスのエンジンはマイルドハイブリッド方式。ターボの出力は“お約束通り”の64ps。

サイドデカール、マッドガード、エッジモール、LEDフォグなどを装備したフルオプションX。


※画像クリックで拡大表示します。

 軽自動車に自動ブレーキが付いていることに、ヨーロッパの人が驚いているとの話を聞いたことがある。三菱のeKシリーズと日産のデイズシリーズはさらにそれを上回る運転支援機能を持って新登場した。日本の軽自動車の進化はとどまるところを知らないがごとくだ。軽自動車の販売ではホンダのNシリーズがずっと席巻し続けているが、ハイトワゴンに有力な対抗馬が出現したといえる。
 このクルマは日産と三菱のアライアンスから誕生したわけだが、一カ所で開発、一カ所で生産、同一の発売日という両社の間をマネジメントしたのがNMKV。前回は基本的には三菱が開発も生産もしたが、今回はほとんどを日産が開発、生産を三菱が担当する形となった。したがって投入された技術も基本的には日産によるものだが、三菱の特徴はSUVテイストのeKクロスにあり、これを売りにしている。また、カラーバリエーションの豊富さなどでもデイズとの差別化を図っている。

一新されたパワートレーンでパフォーマンスアップ
 まずエンジンが一新されている。日産は軽のエンジンを持っていないので、ルノーのいちばん小さなエンジン、800ccのBR08をベースに、ボアを縮めて660ccとしている。もちろんそれだけでなく、愛知機械工業の技術者も加わって各部をリファイン、BR06としてリニューアルした。
 従来の三菱のエンジンのボア×ストロークはスクエアだったが、最近の効率重視の傾向どおりロングストローク62.7mm×71.2mmになっている。最大トルクもNAエンジンで従来の56Nmから60Nmへ、ターボエンジンで98Nmから100Nmへとアップしている。数字で見るとわずかだが、広い範囲でトルクアップしており、実質的な効果は数字以上にとても大きい。
 トランスミッションは通常のベルト式CVTだが、これも一新された。従来は登録車のCVTに副変速機を付けたものを使用していたが、今回は軽自動車用としてジヤトコが「Jatco CVT-S」として軽用に専用開発した。そのため副変速機もなく全体に軽量、コンパクトにできた。
 変速比幅も6.0として副変速機も不要とし、8%の低フリクション化も図られている。実はこのコンパクトなCVTがホイールベースの延長を可能にするとともに、室内空間を前後方向に大きく広げることに貢献したのだ。リヤのレッグスペースの広さは軽とは思えないほどの余裕である。
 このCVTの特徴に「可変速CVT」がある。軽自動車では初ということだが、いわゆるステップ変速をするものだ。CVTの特徴は加速時にエンジン回転が一定で車速が上がっていくのが普通だが、あえてATのようにエンジン回転が段階的に切り替わるような制御を入れているわけだ。
 実際にこれを試してみたが、4000rpm以上のかなり踏み込んだ状態で作動するが、2段もステップした段階で80km/h以上も出てしまい、普段の街乗りでは感じることはできない。逆に高速道路の合流時などでフルスロットルにすると高回転域で張り付いてステップしない。ステップさせるならもっと低スロットルで低い車速からもっと小刻みにステップしてほしいと感じた。ただ、このステップはフィーリング上の好みの問題であり、速さと効率の点ではステップしない方がよいのは事実だ。

充実した装備によってより楽で安全な運転ができる
 ハンドルの制御もeKの特徴で、これも軽初という。通常はハンドルを切ったあとの戻しはキャスターをはじめとしたホイールアライメントによる自然の戻りに委ねているが、戻し側にもアシストを入れているのだ。ギヤ比を小さめに設定して低速時の大きな舵角のときにも少ないハンドル回しで済み、戻しも制御を効かせてピタッとセンターにくるようにしている。
 三菱だけが採用した技術に「デジタルルームミラー」がある(オプション)。ルームミラーを鏡からデジタル画像に切り替えることができるものだ。雨、夜間、暗い駐車場、後席の荷物などで視界が遮られるときには有効なものだ。ただ、画像では運転中の遠方を見ている状態から、ミラーまでの近い距離に焦点を合わせなくてはならず、老眼の人や遠近両用のめがねの人には見にくい場合がある。コストを掛ければ技術的には解決できるが、軽のレベルで要求するのはまだ早いかもしれない。
 最初に述べたように、運転支援機能としては「MI-PILOT」を搭載している。これは日産の「プロパイロット」と全く同じもので、高速道路での追従運転をアクセル、ブレーキ、ステアリンに関して支援してくれる。追従していた前車が発進加速していくときの追従の仕方に遅れを感じるが、現時点ではいいレベルにあり、あらためて軽自動車への搭載には恐れ入ってしまう。
 今回試乗したのはNAのeKワゴン、NAでハイブリッド付き4WDのeKクロス、ターボ&ハイブリッド付きeKクロスの3車種。印象的だったのは最もベーシックなNAのeKワゴンで、軽快な走りでエンジンの性能向上が感じられた。「これならターボなしでも充分だね」といった感じだった。
 NAでハイブリッド付きeKクロスは4WD車で、重量が60埆鼎なっている。ハイブリッドが付いたとはいえそのアシスト量は2.0kW(2.7PS)であり、軽快さは削がれている。ただ、雪国やスキーなどに良く行く人にとっては4WDは非常に有効だ。
 なお、4WD車には「グリップコントロール」が装備されており、左右のトルク抜け(スリップ)に対してブレーキ制御で回避している。前後方向はリヤデフに装着されているビスカスカップリングが制御するので、滑りやすい場所でもスムーズに発進できるようになっている。ターボ車はびっくりするような加速感があるわけではないが、やはりパワーには余裕があり、乗車人数が多い場合には運転も楽だ。4WD車ならターボ付きがお奨めだ。
報告:飯塚昭三
写真:怒谷彰久

<飯塚 昭三> 最終更新:2019/04/20