マツダ CX-5
MAZDA CX-5

あえて『愚直の道』を疾走するCX−5への恋歌

どこへ出しても恥ずかしくないくらいの乗り心地を得た。ドライバーの姿勢変化も少ない。

新色のソウルレッドカラーは映り込みが気になるくらい。この価格帯でこの品質感は見事だ。

このマツダフェイスにもすっかり馴染んできた。顔を決めるのって実はけっこう困難な作業だ。


インパネも随分すっきりシンプルになった。クオリティ的にももはや不満は出ないだろう。

シート位置はSUVらしく高め。ホールドも悪くないが背中の部分がもう一つしっくりしない。

エンジンはガソリンが2種類、ディーゼルが1種類。街乗りも考えるとディーゼル一押しか。


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 2018年次RJCカーオブザイヤーにノミネートされながら、なぜか試乗の機会に恵まれなかったマツダCX−5。渋谷ヒカリエを会場に選んで2016年12月15日に発表会を催行したが、歳末のせいか、いつもほどの吸引力がなかったという。発売開始は年明けの2月とあって、メディア側からもなんとなくピントの合わせにくい存在になっていた。ただし国内販売の方はまことに順調、8ヶ月経過ですでに4万台を超えるという。ついでながら、ディーゼルエンジン搭載が70%だとか。
 さて、試乗基地に指定されたマツダR&Dセンター横浜。パーキングエリアは広場を中心にして外側に回廊がめぐらされていて、その1枠ごとに3種類6台のCX−5が待機していた。まるで出走前の競馬のゲート枠を連想させて、騎手たちのハートにも火が点く仕組みか。
 与えられた試乗時間は、60分が2回。まず2.5L、ガソリンエンジンを搭載した「25S Lパケージ」を選ぶ。CX−5の売りの一つであるボディカラーは、残念ながら新色の「ソウルレッドクリスタルメタリック」ではなく、「機械の持つ精緻な美しさの追求」をテーマにしたという「マシーングレープレミアムメタリック」だったが、それが妙に創り込んだ落ち着きをイメージさせる。悪くない。
 ここで一つ、企んでしまった。2.0L、ガソリンエンジン搭載のCX−5をピックアップしたRJCのご同輩に、試乗コースの折り返し地点である大黒パーキングエリアまでランデブーランして、そこで試乗車を取り替えないか、という虫のいい提案である。話は即座にまとまって、こちらはひとまず2.5L、マシーングレーのCX-5に乗り込み、やや腰高なシートポジションを気にしながら、ドアを引き寄せると「パン」と小気味良い閉まり音が返ってきた。キレがいい。あ、これは開発陣がレクチャーしてくれた「車室内の静粛性」もトコトン追求し、対策を練り上げた成果の一つだろう。
ここまで鍛えて300万円前後。三重丸を差し上げよう
 試乗コースは、一般道で横浜・みなとみらい地区を目指し、臨港パークにある旧マリノス練習場の外周を反時計回りに1周したあと、みなとみらいランプから首都高速神奈川1号横羽線を南下、本牧の手前で首都高湾岸線に乗り換えると東京湾に浮かぶ大黒パーキングに降り立つのが前半。その際の大きな右回りループが曲者なのだ。大黒パーキングからは首都高速をとって返す感じで一気に子安ランプまで戻る。スタート地点のマツダR&Dは一般道で目の前にある。
 打ち合わせ通りに「ソウルレッドクリスタルメタリック」を晴れやかに纏った2.0LのCX−5が先導する。CX−3の時は、車台に上物のボデイが乗せられているような後ろ姿が妙に気にかかっていたが、今度のCX-5はリヤのバンパー部分を極力細めていて、なんともバランスのいいその後ろ姿は秋の陽を受けて、艶やかに輝いていた。アクセルをONした時の、前にもたれかかるような下品な動きも一切ない。
高速道路に入ってからの疾走姿勢。いささかも揺れのないドライバーの目線や首の位置。創り手たちがこだわってきたポイントの一つ一つが伝わって来るのはなぜだろう。まるで隣の助手席に開発者が座っていて、己れの想いこちらに話しかけてくるような至福の時間。……どんなに愚直と言われようと、マツダは「走る歓び」の進化を目指して、ドライバーの“走る歓び”はもとより、同乗者の“歓び”を共有できるよう、全員が愛着を持って取り組んできました、まっすぐに……。
 なんとも羨ましい「モノ創り」集団が精魂こめて送り出してくれたCX―5。このあと、2.2リットルのクリーンディーゼルエンジン、DOHC4気筒直噴ターボ車も試乗したが、なるほど300万円前後の価格でここまで鍛え上げたSUVなら、三重丸を差し上げよう。そう肚を決めたが、後悔はしないはずだ。
報告:正岡貞雄
写真:怒谷彰久

最終更新:2017/10/31