自動車の製造技術が伯仲している昨今、夫々の車格が似ている車同士では一体どこが違うのだろうと考えることがしばしばである。話は変わるが、時計の世界の事について一寸述べてみようと思う。
日本製の時計は、かなり上品質なものになってきて、今や世界レベルに達している。しかし欧州で作られているものには、未だに追いついていない。我が国では侍がチョンマゲで街を闊歩していた時代に、西洋では懐中時計を持った紳士が街を歩いていたのである。その何年かのギャップは、未だに埋まっていない。部品の製造技術に差が出ている事に、時計業界では気がついている。最も問題になっているのは、スチールの焼き入れである。ドイツ車のバネと、日本車のバネの違いもそこにあるのかもしれない。
時計業界で気がついた事は、地球の磁場の差についてである。地球は真球でなく、歪(いびつ)である。北半球と南半球では、わずかであるが磁力に差が出ているのだ。これは時計業界では、機械時計世界コンクール参加で苦い経験をしている。第一回目には散々な目に遭っている。ポーラルートで運んだ機械時計が大きなダメージを受けたのであった。
まだまだこの話は続くが、話を車の話に戻そう。自動車評論家の一人の言葉を思い出す。「ドイツ車の中で後の座席に目を閉じて乗っても、それが何の車かすぐ解るのがある」ということである。何がそうさせているのかというと、足回りとしか考えようがない。それじゃ足回りの何が違うのかになると、バネに行き当たる。また時計業界の話になるが、大型時計にボンボン鳴る鐘がついている。業界では鳴り棒と言っているが、これをドイツから鉄鉱石を持ってきて、石灰も一緒に技術者を連れてきて日本で作っても、ドイツ製の時計と同じ音が出る物は作れないことが解っているのだ。機械時計の調整も、ヨーロッパとアジアでは、お互いに調整し直さなければ、正確な時を刻まないのである。
このことを、自動車のバネと合わせて考えてみては如何であろうか?ヨーロッパで焼き入れしたバネを持ち帰って、日本車に組み込んでみては如何でしょう。