日本でEV(電気自動車)が受け入れられるには・・・

松浦 賢

 昨年の秋、三菱自動車が7月より販売を始めたEV(電気自動車)のi-MiEVに試乗し、都内の一般道を走行した。この試乗で私が受けた印象について誤解を恐れず端的に表すと、運転している感覚がエンジンを搭載しているこれまでのクルマとまったく変わらなかった。当然、モーターの動力のみで走行するため、エンジンを搭載するクルマよりも静かであることは想定内である。それ以外が変わらないことは、ある意味で予想を裏切られた。試乗後にエンジニアに話を伺ったところ、これまでのクルマと運転感覚が変わらないことを目指して開発しているとのことであった。EVが受け入れられる要素として、運転性がこれまでのクルマと変わらないことを目標に定めて開発し、その成果が見事に表されたEVであると感心した。これとは対照的に、HV(ハイブリッド車)などでは、これまでのクルマと異なる運転感覚を覚えることがある。特に短時間の試乗では、加減速やブレーキ、操作系の軽さなどに違いを感じることが多く、新時代のクルマを運転している感覚を抱くことがある。実際にクルマを所有して毎日乗ると、慣れが生じて運転感覚の違いも薄れ、そのドライバーの標準的な運転感覚になっていくと思われる。

 さて、これからのクルマのエネルギー源を考えたとき、クルマの電動化は避けては通れないだろう。特に電源インフラが充実している日本では、EVを開発・販売するのは自然な流れのように思われる。EV普及の課題のひとつは、一般消費者の購入対象となり得るような魅力をEVに持たせることができるかという点ではないだろうか。しかし、現時点では、エンジンを搭載するこれまでのクルマと比較してネガティブな印象を受ける情報が先行している。販売価格が高い、航続距離が短い、充電に時間がかかるなど長い時間をかけて商品性を上げてきた現在のクルマと異なるところを探してもEVの魅力は見えない。EVがこれまでのクルマとは異なる新しいクルマであること、そして走行時にゼロエミッションであることやエネルギー利用効率が高いため省エネルギーに寄与できることなどの魅力的な点を一般消費者に知ってもらうことがEV普及のスタートラインだと思う。

 これから登場するEVは、クルマの新しい魅力を提示できるだろうか。魅力を提示できないEVは、一般消費者が所有するこれまでのクルマから代替されることがないように思われる。今後発売されるEVにクルマの新しい魅力があるか、楽しみにしたい。

エンジン車と変わらぬフィーリングの三菱i-MiEV


最終更新日:2010/2