クルマ好きの育成が急務?

小早川 隆治

 世界市場における昨今の日本車の活躍は目を見張るものがあるが、一方で日本の若者のクルマ離れや、国内市場の低迷にはなかなか歯止めがかからない。このままいくと遠からず日本の自動車産業の将来を担う、クルマへの情熱豊かな人材の確保すら難しくなることが懸念される。

 こうした状況に対応すべく、今年の東京モーターショーでは環境、安全などに加えて「わくわく・どきどきするクルマとの出会い」が目標とされた。たしかに280馬力の呪縛からも解放され、一部の展示車両はかなりの話題性を提供してはくれたが、総じて「わくわく・どきどき」が十分感じられるショーとは言い難く、入場者数も期待を下回った。

 今回のモーターショーに限らず、日本のメーカーから次々に導入される新型車に接するにつけ、「日本メーカー全体のクルマづくりへの熱い思いが徐々に低下しているのでは」と感じるのは私だけだろうか?

 開発期間の短縮、デジタル技術の進化、コスト圧力の増大、工数の逼迫、市場調査への過剰依存などに起因してか、感性よりも理性、効率を重視した左脳的なクルマづくりが主流になってきているように思えてならない。若者のクルマ離れに対する即効薬こそないが、現在自動車業界に身をおく人たちがもっともっとクルマが好きになれるマネージメントの意識改革、業務環境や人材育成面での革新などが急務ではないだろうか。クルマをこよなく愛する人たちがつくる「わくわく・どきどき」に満ちたクルマの実現は、日本の自動車産業の抱える最大の課題の一つだと思う。


最終更新日:2010/04/16