日本の道路

片山 光夫(糀屋 大輔)

 自動車の走りを決める決定的な要素は道路である。幾ら高価な車でも良い道路がなければ一文の価値もない。日本には世界の高級車が溢れているが、それに見合った道路を走っているのだろうか?

 私が物心ついた頃の道路は、大半が泥か砂利道で、幼稚園へ通う道を砂利を跳ね飛ばして進駐軍の車が走り去って行った。

 日本は世界に名だたる山国であり、街道を切り開くのは大きな困難を伴う仕事であったに違いない。その後自転車で日本の旧い峠道を旅するようになり、我々の先祖が開拓した古道のありがたさと美しさを味わうことが出来た。

 現在これら旧い道の多くは見捨てられ、分断され、新道を走るドライバーは、古道に込められた昔の人の思いを知ることも無い。日本を自動車で旅するとき、一抹の虚しさを感じるのは、これが理由だろう。

 今更古道を自動車道として復活することは不可能であり、そうすることにより古道の風情も失われてしまう。しかし新道の横に、ひっそりと旧い道を寸断することなく保存してほしい。そしていつか自動車ではなく、徒歩か自転車で、これらの旧道を再訪できるようにして欲しい。

 自動車交通が主流となった時代にこのようなことを望むのは時代錯誤と思われるかもしれない。しかし自動車の走らない、美しい日本の街道風景を保存するのも、将来への遺産として大切なことだと考える。


最終更新日:2010/04/16