メーカーコンフィデンシャル
ボッシュ2017年次報告記者会見
Bosch annual press conference 2017
日本の事業を拡大。自動運転技術もさらに進化。

 「2016年の日本での売り上げはほぼ横ばいでした。2017年は3〜5%のアップを目指します。実際、17年の第一四半期は約12%増加しています」。ヴォルツ社長は、少しだけ残念そうに16年の実績を、一方で自信満々で17年の目標を語った。

 ではその内容とはいったい何なのか? 大雑把に言えば昨年の年次記者会見と大きく変わるところはない。電動化、自動化、ネットワーク化ソリューションである。新しいのは「Plantect(プランテクト)」だ。

 今や常識になったI o T(Internet of Things)を使って、もう少し詳しく言えば、各種センサーとAI(人工知能)を使ってトマトのハウス栽培管理を促進する。92%の病害予測を実現し、栽培収穫量を向上させる。このシステムのいいところは何と言っても初期費用がかからないことだ。 ただし月当たり、モニタリングに4980円、病害予測に3350円支払う必要がある。現時点ではトマトだけだが、今後イチゴやキュウリにも対応するという。Webアドレスはこちら。ボッシュの事業の中心となるのはクルマ関連だが、それ以外にも多くのジャンルに挑戦しているという一つの例だ。

 新しいモビリティの概念はゼロエミッション、ゼロストレス、ゼロアクシデント。これは世界的に共通の概念だ。ボッシュは、48Vのハイブリッドシステム(回生率が高くて燃費に貢献)を、日本の自動車メーカー向けに2019年に量産する予定だという。また、燃料電池に特化した組織[FCEVプロジェクト推進室]を日本国内に新設。日本メーカーへのソリューション提案を強化する。

 最近とみに話題の自動運転。その開発過程や開発企業はあまり表に現れないが、実はボッシュのようなサプライヤーが担っていることが多い。ボッシュでは2015年から日本での公道テストを実施し、2016年には新組織「システム開発部門」設立した。また、「オートモーティブ ステアリング事業部」をつくり、自動運転の大切な要素となるステアリングシステムの開発にも余念がない。

 自動運転担当の千葉氏は「2021年までにボッシュとしては高速道路でレベル3を完成させるつもりです」と言う。ちなみに、レベル3とは人間ではなくAIが運転するシステムのことで、緊急時にはAIがドライバーに対応を要請する。ただ、AI運転から人間のドライビングまでの移行は大丈夫か、あるいは保険対応をどうするかなどの外的問題も残る。

 ボッシュの技術はパーキングにも及ぶ。リアルタイムで駐車スペースを確保できるアクティブ パーキングロット マネジメント、自動で駐車スペースに向かい、呼び出すこともできる自動バレットパーキングなども開発している。これらのシステム自体は今やとくに珍しくはないが、そこは企業間のジェントルマンズ・アグリーメント(契約?)で公表しないことになっている。で、ボッシュの場合も自動車メーカー名は詳しくは分からない。ただ、メルセデスはボッシュとの連携を否定していない。

 先に述べた48Vの件もそうだが、ハイブリッドや自動運転のスタンダードをどうするかのせめぎあいもある。いまの時代、こうした進歩や変化から目を離せない。私たちに見えないところで着実に地殻変動が起きているのだ。

 

報告:神谷龍彦

写真:佐久間健

 

「世界経済も回復傾向にある。日本では3〜5%の売り上げ増を目指します」ウド・ヴォルツ社長。

ドイツのボッシュ人工知能センターのグローバル責任者・パウロ氏もAIについて熱く語った。

手前のダースベーダーの仮面みたいのがPlantectの温度湿度センサー。トマト栽培を変える?

クルマ、建築関連、産業機器などのボッシュ製品への対応をAIによって差別化する。

対象を色で分別し、歩行者の認識や行動を予測する。豊富な過去データ集積が貢献する。

ローデータで歩行者を検知、確率を計算して状況判断、その結果を保存し判断力を向上させる。

 

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