スズキ初の量産BEV「eビターラ」を試す

袖ヶ浦フォレストレースウェイを走行するeビターラの4WDモデル。わずかにロールしつつ、どっしりとした接地性を見せてコーナーをクリアしてくれた。特徴的なフロントフェースを持ち、一眼でeビターラだとわかる。

サイドから見たeビターラ。長いホイールベースに厚みのあるボンネットとフェンダー、立ち気味のフロントウインドーを持つキャビンを組み合わせたボディ形状がよくわかる。

リア後方から見たeビターラ。ブラックルーフにモスグリーンの2トーンボディは、コンパクトながら力強いSUVイメージを醸し出している。


eビターラのパワートレイン。駆動用モーターは49kWhの2WDが最高出力106kW(144PS)/最大トルク193Nm、61kWhの2WDが128kW(174PS)/193Nm、同4WD用はフロント128KW/リア48kW(65PS)の2モーター「オールグリップ-e」システムを搭載していて、システム合計で135kW(183PS)/307Nmを発生する。

ブラックとブラウンの2トーンを基調としたインテリア。上下がフラットな異形ステアリングや、その奥に広がるメーターとインフォテインメントを1枚ガラスで繋いだ横長の「インテグレーテッドディスプレイ」を新たに採用した。

eビターラに対するスズキの本気度を証明するアクセサリーの一部。写真上は鈴木式織機で織った前掛け(左)や、同じ織物を使用した充電コード入れ。下はコードが地面に触れないような配慮がなされた自宅設置用の充電器。


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 スズキが2024年11月に欧州で、25年1月にインドでお披露目したのが同社初の量産BEVとなる「eビターラ」だ。ワールドプレミアした場所が自動車デザインの聖地であるイタリア・ミラノということは、“見た目”に相当な自信があったからだろう(もちろん性能も)。グローバルモデルとしてインドで生産される本モデルのプロトタイプ試乗会が千葉県・袖ヶ浦フォレストレースウェイで開催されたので、その仕上がり具合を確認してきた。

一目でeビターラだとわかるエクステリア

 ミラノの人たちの視線にも耐えられるデザインを纏ったそのエクステリアは、BEVによくある空気抵抗の少なそうな滑らかなラインではなく、ゴツゴツとした形のSUVらしいもの。エクステリアのコンセプトである「ハイテク&アドベンチャー」は聞き慣れた名前の組み合わせだが、長いホイールベースに厚みのあるボンネットとフェンダー、立ち気味のフロントウインドーを持つキャビンを組み合わせたボディは、3つに発光する特徴的な3ポイントマトリックスヘッドライトの顔つきとともに、結構アグレッシブなデザインで仕上げている。サブキーワードである「メタルビースト(鉄の野獣)」という言葉がぴったりだ。筆者がちょっと前に試乗したアルファロメオ製コンパクトSUVの「ジュニア」(こちらも原点はミラノにある)に勝るとも劣らない出来と言ってよく、一目でeビターラとわかるオリジナリティのあるものだ。
 インテリアも上質に仕上下ている。ブラックとブラウンの2トーンを基調とし、上下がフラットな異形ステアリングと、その奥に広がるメーターとインフォテインメントを1枚ガラスで繋いだ横長の「インテグレーテッドディスプレイ」が新しい。トレンドのフローティングタイプのセンターコンソールには、右がドライブ、左がバックの回転式シフトダイヤルが備わり、2WDはその右に「ドライブモード」、左に「ワンペダル」と「SNOW」、4WDは右に「ドライブモード」と「TRAIL」、左に「ワンペダル」と「ヒルディセント」のボタンが配されている。
 リアの空間(前後も上下も)はかなりのゆとりが感じられる。一方のラゲッジは一見狭めだが、スライド式(トラベルは160mm)で4:2:4の分割可倒リアシートによって675mmから835mmの間で奥行きが調整できるので、不満はない。その床下は、充電ケーブルなどの収納スペースとしている。

2WDと4WDの2つのEVパワートレーン

 eビターラのボディサイズは、全長4275mm、全幅1800mm、全高1640mm、ホイールベース2700mm。同じインド生産のフロンクスよりちょっとだけ大きな体躯で、2023年に公開された「eVX」コンセプトをベースにしたスズキ初のBEVモデルということになる。鈴木俊宏社長が「インドでのBEVの生産、販売、輸出で1位を目指す」と株主総会で宣言した中での最初のモデルであリ、今年中に日本だけでなく、欧州、インド、さらにその他の国と地域で順次販売するという。グローバルモデルとしてのプロダクトコンセプトは「Emotional Versatile Cruiser」で、「感性をゆさぶる多用途クルーザー」とでも訳せようか。

 プラットフォームはBEV専用に新開発した「ハーテクト-e」で、フロアに敷いたリン酸鉄リチウムイオンバッテリーは、あのBYDの子会社が製造するもの。ただしBYD車の“専売特許”ともいえるブレードタイプではないのは、コストを重視するスズキらしい選択だ。バッテリー容量はグレードに応じた49kWhと61kWhの2種類。駆動用モーターは49kWhの2WDが最高出力106kW(144PS)/最大トルク193Nm、61kWhの2WD用が128kW(174PS)/193Nmを発生。同4WD用はフロント128KW/リア48kW(65PS)の2モーター「オールグリップ-e」システムを搭載していて、システム合計で135kW(183PS)/307Nmをアウトプットする。
 車重、航続距離、0-100km/h加速を上記のそれぞれの順番で記すと、1700kg/400km以上/9.6秒、1790kg/500km以上/8.7秒、1890kg/450km以上/7.4秒で、最高速度はいずれも150km/h。200V 6KW(10→100%)/急速充電の90kW(10→80%)の充電性能を見ると。41kWhモデルで約8.5時間/約45分、61kWhモデルで約10.5時間/約45分。ヒートポンプシステムを採用した空調、ステアリング&シートヒーターの直接暖房、寒冷地での走行前にバッテリーを温めるバッテリーウォーマー、走行中のバッテリー昇温機能など、今時のBEVらしい機能を欠かさず搭載している点は評価できる。

サーキットを走ってみると?

 サーキットでの動力性能は、BEVらしい活発さを発揮しつつも、特別にとんがったところがない、とても扱いやすいクルマだな、というのが第一印象。ステアリング特性も足回りも加減速も、どれも手の中にある範囲に収められていて、気持ちよくコースを駆け抜けることができた。ワンペダルは停車まで行うタイプではなく、減速Gがそれほど強くないので滑らかにブレーキングしてくれる。一方で、3段階に調整できる回生量はいちいち停車してからでないと変更できない、という設定はちょっと気になった。
 4WDモデルは、前後にeアクスルを搭載した「オールグリップ-e」システムを搭載していて、状況によって前後トルク配分を70:30〜50:50の間で調整する設定だ。内側のブレーキを軽くつまむベクタリング効果と、2WDよりも強力なモーター出力も加味され、コーナリング中の安定感と、その先の直線への加速性能がさらにアップしているのがわかる。コンパクトなボディながらスピードを上げるにつれてどっしりとした走りをみせるそのイメージはVWゴルフ(筆者もいまだにゴルフ?に乗っている)を想起させ、これなら腕の立つ欧州のドライバーがステアリングを握っても、十分満足させることができそうだ。
さらに、スズキの四駆モデルはイタリアなどと親和性があって、現行のビターラ(エスクード)やイグニス、ジムニーなどは、混雑する街中を活発に駆け抜けたり、狭い道路や駐車スペースの少ない場面でも気にせず乗り込んでいけたりという点で、彼の地では重宝されているという。
 eビターラに対するスズキの本気度が測れるという点では、コンソール内にコンパクトに取り付けられたETCや車載カメラ機器などの車本体の装備品だけでなく、専用の各種アウトドア用品とともに展示されていた、コードが地面に触れないような配慮がなされた自宅設置用の充電器や、はたまた鈴木式織機で織った前掛けや充電コード入れなど、さまざまなアクセサリーを丁寧な仕上げで用意しているところから明白だ。クルマの出来は骨太で、とってもいい。しかし、インフラの整備面などの理由でBEVの普及スピードが鈍る今の日本では、爆発的に売れるとは思えないのも現状。そのあたりは当然製造するスズキだって、先刻承知のはずだ。価格面も含めて、興味を持って見守りたい。(了)
報告:石原 彰

最終更新:2025/09/01

 

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