ホンダ ヴェゼル

上質な走りと優れた実用性を備えた完成度の高い新世代SUV

SUVに最適化されたe:HEVと締め上げたボディで、走りは爽快そのもの。

力強さを感じさせるSUVらしいスタイルになった。大柄に見えるがボディサイズは全長4330×全幅1790×全高1590mmとコンパクト。

インパネは直線状でシンプルな配置。視界が広く車幅も掴みやすい。


大きなパノラマルーフ。PLaYのみの専用装備だ。

後席の広さはクラストップレベル。座り心地も良く、快適に過ごすことができる。

荷室も広く大きな荷物も積みやすい。SUVとしての実用性も文句がない。


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 現在、市場ではコンパクトSUVが大人気だが、その火付け役となったのがホンダ「ヴェゼル」。2013年に登場した初代モデルは瞬く間に大ヒットとなり、14年から16年まで3年連続、さらに19年にも国内SUV新車販売台数でトップを奪取するなど、ホンダを代表するベストセラーカーの一つだ。そのヴェゼルが21年4月に初のフルモデルチェンジ。2代目となる新型ヴェゼルも初代同様、発売と同時に多くの受注を集めている。大きくデザインを変えた2代目だが、まずは大成功といえそうだ。

静かで力強い快適な走り

 新型ヴェゼルが搭載するパワートレーンは、1.5Lガソリンと2モーター式ハイブリッド「e:HEV」の2種類。グレード構成はガソリンが1、e:HEVが3グレードとなっており、e:HEVが主力。先代モデルもハイブリッド比率が55%と高かったが、新型ではさらにハイブリッド比率を高め、ホンダ全体での電動化比率向上にも貢献していくことを狙っているという。そこで今回は主役であるハイブリッドの「e:HEV PLaY」を試乗してみた。

 搭載しているe:HEVのシステムは、基本的にはフィットに搭載しているものがベース。1.5Lのアトキンソンエンジンにモーターを組み合わせたものだが、エンジンの出力やバッテリー容量のアップ、電気式CVTのローレシオ化などによりSUVに最適化しているのだが、実際に走らせてみると本当にベースが同じかと思うほど、フィットとの違いを感じる。発進から加速時までパワーの出方がマイルドで良くいえば穏やかなフィットに対し、ヴェゼルではアクセル操作に対してリニアにパワーが引き出され、加速も非常に力強い。積極的に走りを楽しみたくなる気持ち良さだ。もちろん、e:HEVは高速での巡行時以外はモーターで走行するため、静粛性も高い。

 また、3つのドライブモード(ノーマル/ECON/スポーツ)を持ち、状況に応じた加速感を選べる他、アクセルペダルを戻した時の回生(発電による減速)の強弱も4段階から選択できる。回生を最強にすると、アクセルペダルだけで加減速を制御するワンペダルドライブも可能にするなど、選択肢が実に幅広い。これもe:HEVならではの特徴の一つだ。

 ボディは軽量化すると同時に各部の剛性が高められ、これにしなやかな足回りを組み合わせている。結果として、乗り心地、操縦性ともに大きく向上。特にステアリングの正確さが増し、切れ味の良さが心地よい。高速時やワインディングでもクルマの姿勢が安定しており、また若干荒れた路面でもショックを巧みに吸収し収まりが良く、コンパクトSUVとは思えないほど上質な乗り味だ。

広大かつ使い勝手に優れた室内スペース

 室内空間の広さは先代同様。前席、後席ともゆとりがあり、快適に過ごすことができる。インパネ周りも水平基調で整然とレイアウトされ、また運転席からボディの左右端も確認できるので車幅の感覚も掴みやすい。また試乗した「PLaY」には大きなパノラマルーフが装備されており、明るく開放的な気分が味わえる。ただ、このパノラマルーフはPLaYのみの専用装備となっており、その他のグレードでは装着できないのが残念。一方でPLaYは4WDが設定されていないので、グレード選択の際は自分の中で何を優先させるか、よく考えておく必要がある。

 居住スペースの広さだけでなく、荷室スペースも広い。容量だけでなく、左右の張り出しが少ないので荷物を積載しやすいのもうれしいところ。また後席は背もたれを前に倒すダイブダウンと、座面を上にはね上げるチップアップの両方が可能なので、荷物に合わせてアレンジしやすい。アウトドアレジャーなどでも大いに活用できる。グレード別の装備にはなるが、テールゲートをハンズフリーで開けることもでき、使い勝手の面で不満を感じることはないだろう。

 この他、コネクテッドサービス「ホンダコネクト」も機能が充実。ナビの自動地図更新サービスやスマートフォンがクルマのキーになる「デジタルキー」、車内Wi-Fiも搭載され、利便性や快適性を向上させている。

 コンパクトクラスでありながらクラスを超えた上質な走りと、最新のコネクティッドサービスがもたらす従来にないクルマの楽しみ方を備えつつ、それでいて最上級グレードでも車両本体価格が約330万円という手頃さは大いに魅力だ。

報告:鞍智誉章
写真:カーアンドレジャーニュース

最終更新:2021/10/03