「昨年のBMWの販売台数は5万0571台で前年比プラス9.4％、MINIブランドは2万44548台でプラス16.4％、総販売台数は7万5119台。両車を足せばBMWのシェアは21.8％になります」。ニュー５シリーズの発表会の冒頭でペーター・クロンシュナーブル社長は同社の好調ぶりをこう語った。
確かに2016年の輸入車市場はおおむね好調だった。その代表的メーカーのひとつがBMWである。メーカー別ではトップだが、ブランド別ではメルセデスが6万7千台以上を売ってトップを守った。VWは燃費問題の影響もあって3位に転落（−13.8％）、好調を続けていたアウディも販売台数を落とした（−3.1％）。目立つのは1万4914台売って前年比プラス8.2％を達成したボルボだ。国産メーカーを除けば1万台以上売れたのはここまで。フランス車も健闘したが、絶対台数はまだ少ない。アメリカ車勢は概して不調だった。
BMW 5シリーズがデビューしたのは1972年のこと。最も長い歴史を持つセダンでもある。この時の全幅は1690mm。サイズ的にはしっかり日本の5ナンバー枠に収まっていたが、エンジンなどのせいもあって当初から高級セダンという位置づけだった。何よりも輸入車自体が高級車だったのだ。
今回の5シリーズは数えて7代目に当たる。寸法（4945×1870×1480mm）は先代と大して変わらない。上の7シリーズ、下の3シリーズに挟まれているせいもあるのだろうが、いたずらに大きくしないのはいいことだ。
エンジンはすべてツインパワー・ターボで、523i（直4・135 kW）、523d（直4ディーゼル 140 kW）、530i（直4・185 kW）、530e（PHEV・135kW＋7.7kW）、540i＆540i xDrive(直6・250 kW)の5タイプ。価格は599万円(523i)〜1017万円（540i xDrive Mスポーツ）。トランスミッションは全車8速ATである。
キャッチコピーは「ビジネス・アスリート」。普通のセダンとはちょっと違うぞ！と言いたいらしい。実際、5シリーズには、まあBMWという会社自体のイメージのおかげもあるが、どことなくスポーティなイメージが漂う。ただし、ひところと違ってドイツのアウトバーンなどではアウディが顔を利かすケースが増えた。その分、BMWはいい意味で大人っぽくなったとも言える。
エクステリアで最も大きく変わったのはフロントマスクだろうか。やや横長になったヘッドライトと例のキドニーグリルがつながったように見えるデザイン。ボンネットも途中からではなくフロント下部から開くようになった。もともと良かったCd値（空気抵抗係数）は0.25から0.22へ。Cd値がすべてではないが、ニュー５シリーズよりいいのはVWのXL１だけだ。軽量化にかける意気込みも半端ではなく、アルミニウムやマグネシウム合金の採用を拡大して先代比マイナス80kgを達成した。
注目したいのは「部分自動運転」だ（自動運転技術などと表現するよりこのほうがわかりやすい）。メルセデスEクラスのような、ウインカー操作による車線変更も装備されるという情報もあったが（現地仕様車にはある）、今回の日本導入車では見送られた。じゃあ、どれが新しい部分自動運転かというと──
- ステアリング＆レーンコントロール・アシスト
- アクティブ・サイド・コリジョン・プロテクション
- クロス・トラフィック・ウオーニング
- 後方追突警告
発売は、530eが今年の第三四半期、523iが第四四半期、それ以外は2月11日からの予定。余談だが、まもなくMINIの新世代ハイブリッドモデルが発売されることもアナウンスされた。
報告：神谷龍彦
撮影：佐久間健
クロンシュナーブルBMW社長（JAIA会長でもある）と。フロント部の変更ぶりがお分かりいただける思う。
サイドのラインを強調するためにドアノブをその線上に配置したという。デザインのこだわりも半端ではない。
サイズ的にはほんのわずか伸びた程度。クーペっぽいルーフラインは最近のセダンの流行でもある。
どうデザインしてもBMWらしく見えるのはさすが。フロントウインドーのヘッドアップディスプレイには、スピードだけでなく、NAVI情報、チェック・コントロール、前車接近警報なども表示される。
エンジンは5タイプ。523にはディーゼル(JC08モード 21.5km/ℓ)もある。540シリーズのみ直6。
会場のBMW GROUP Tokyo Bayには、Mスポーツを中心に歴代の5シリーズが並べられていた。手前は初代の520（73年製）。このときの全幅は1690mmだった。
