BMW
540i xDrive ツーリング M スポーツ ツーリング 540i

やっぱり楽しい、BMWと直6のドライバーズ志向 

セダンと同じサイズ。最低地上高はセダンよりやや低いのに全高は20㎜高い。ルーフレールのせい?

リアビューはなかなかまとまりがある。テールランプのデザインもセダンを踏襲している。

M Sportはグラスエリア周りをブラックアウト。それ以外はクロム使用。クロムの方がいいな。


セレナのように上部だけ開けることも可能。リアシートを倒すスイッチはここからも操作できる。

たまに不調なこともあった先代のテールゲート開閉機能は精度を増した。慣れると便利だ。

セダン530e(ハイブリッド)のエンジン。低速からの立ち上がりが圧倒的。ブルーがイメージ色。


※画像クリックで拡大表示します。

 こういうクラスのクルマは売る方もけっこう苦労する。BMWのミッドシリーズ「5 ツーリング」の価格は650万円(523iツーリング)から1069万円(540i xDriveツーリングMスポーツ)。決して安くはない。となれば良くて当たり前、悪ければ必要以上に叩かれる。輸入車に多少甘いカスタマーがいるとしてもだ。
 2月のセダンの試乗会では523d(ディーゼル)を選んだ。アイドリング時の音振はいくらかあるが、今やエンジン・オートストップ機構が常識だから問題ない。そんなことより、予想通り、いや予想以上に、火山の噴煙のように低速からもりもり湧き上がるトルクの太さに驚愕した。ディーゼルの良さだ。ただ、乗り心地は路面によっては少し硬さが目立った。
 さてツーリング。BMWは4WDのことをAWD やxDriveと呼んだり、ワゴンをツーリングと呼んだり、時に呼び方にこだわる。今回の試乗は540i xDrive Mスポーツにした。エンジンは3ℓ直列6気筒ツインターボ。最高出力は250kW(340ps)。0-100km/h加速は5.1秒でこなす。燃料消費は11.9km/ℓ、パワーを考えれば悪くない。
 このところBMWは4気筒エンジンの充実に余念がない。それに異を唱える気はないが、やはり6気筒はいい。“絹のような”と形容された本来の滑らかさにターボが迫力をプレゼントした。しかも450Nmの大トルクを1380回転から5200回転まで維持するのだから加速に不満はない。レスポンスもいい。もっともこれらのエンジン特性はセダンと共通だ。
 共通と言えば、ドライバビリティもそう。キレがある。例えばハンドリング。BMWもベンツも操舵に違和感はない。ただ印象が微妙に違う。あえて言えばベンツがスパーッと切れるのに対してBMWはスパッ。エンジンレスポンスもそうだ。好みの問題の範囲ではあるが。ところが、メルセデスもAMGに目を移すと一挙に鋭さを増す。率直に言ってAMGは別次元だ。

荷室からリアシートを倒すこともできる。
 xDriveはトルクを前後に可変配分するインテリジェント4WD。路面の凹凸に対するボディの揺れは一切なかった(試乗は都内のみだったが)。ボディは一発でピタッと収まる。
 サスペンションがよく動いている。セダンの一部と異なりツーリングのリアサスペンションは、ワゴンらしくすべてセルフレベリング機能付きエアサスペンションだ。M スポーツは専用サスペンションを採用しているのに乗り心地は思ったより穏やかだった。走行モードの選択によってはワインディングではおそらく別の逞しい顔を見せるだろう。
 ツーリングの全高は全モデル1500㎜。セダンより20㎜高い。最低地上高はツーリングの方がむしろ低いくらいだから、これはルーフレールの有無に起因するのかもしれない。ラゲッジルーム容量は570ℓから1700ℓと先代より約30ℓ増えた。
 これにはラゲッジルームのスイッチで40:20:40に電動で分割可倒する後席も貢献している。しかもリアゲートは上部(ガラス部)だけもオープンできる。ついでに言えば、足をボディの下にやってテールゲートを開閉する機能の精度も向上した。
 部分自動運転につながる運転支援システムはセダンと変わらない。ただセダン同様、現地仕様には用意されているアクティブ・レーンチェンジ・アシストがないのは惜しい。ライバルのメルセデスのEクラスにはあるのに。価格を考えてか、需要の問題か……。
 国産車には少ない高級ワゴン。ライバルは同じドイツ車にならざるをえない。日本車にこのクラスのモデルがないのが残念だ。
 ところで、短時間だが、セダン530e(ツーリングにはない)とミニクーパーSEというハイブリッドにも試乗できた。システムトータル出力はそれぞれ185kW(252ps)、165kW(224ps)。530eは低速トルクが太くて同じ185psを発生する530iよりもパワフルに感じた。ミニは数値的にはゴーカートフィーリングに十分だが、クルマ自体がワンクラス・アップしたため「新たなる回帰」ではなく「進化」と捉えた方がいいだろう。
報告:神谷龍彦
写真:佐久間健

最終更新:2017/07/02