レクサスはトヨタの高級車ブランドで、日本国内では05年に開業した。北米の発足が89年だから、16年間にわたるノウハウを持って国内投入されたわけだ。
そのレクサスのフラッグシップに相当するモデルが06年に投入されたLSで、07年にはハイブリッドモデルのLS600hが加わった。LS460はV型8気筒の4600ccエンジンを搭載するが、LS600hはV型8気筒の5000ccに進化型のハイブリッドシステムを組み合わせる。エンジンの駆動力にモーターの力が加わり、6000cc級の動力性能を発揮することからLS600hと名付けられた。
動力性能は、確かに6000cc並みだ。ベースとなるエンジン自体がV8とあって十分にパワフル。そこに高出力のモーターを加えることで、高精度のスーパーチャージャーを付加したような印象を受ける。
アクセルを深く踏み込むと、モーターはエンジンと違って素早く駆動力を立ち上げ、鋭い瞬発力を味わえる。しかも驚くほどに静かで、無段変速だから加速も滑らか。ハイブリッドといえば、環境性能を高めるメカニズムとして高性能の対極に位置するイメージだが、LS600hでは優れた動力性能との両立を図った。
一方、ハンドリングは、LS460を300kg近く上まわる車両重量だけに、ボディの重さを意識させる。LS460は高速道路における直進安定性や乗り心地の重厚感といった点で欧州の高級セダンに見劣りするが、大排気量のV8エンジンを搭載する割にハンドリングは軽快。曲がりくねった日本の峠道に持ち込んでも動きの鈍さをあまり感じない。そこに欧州の強豪に対するLSの強みがある。
ところがLS600hは、いかにもボディが重い。LSの特徴とされる軽快感が削がれ、見方を変えれば欧州の高級セダンと同じ土俵に上がってしまった。ハンドリングと乗り心地の両面で、欧州勢に差を付けられている。タイヤとサスペンションの選択も要注意。LS460であれば乗り心地の快適な18インチがベストだが、LS600hではこのサイズだと役不足。車両重量とのバランスから、19インチのバージョンSを選びたい。
軽快感がスポイルされた代わりにLS600hには2500〜3000ccクラス並みの燃費性能が備わるが、クルマの指向性は、欧州勢が相手というよりエコロジーと快適性、走行性能にも優れた生粋の日本車だ。レクサスではなく、トヨタブランドとしてのプライドを持たせたい。